遺言書の形式(1)ー自筆証書遺言とはー
一部でも自筆でなければ無効となってしまいます
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、通常時の3種類の遺言形式のうちの一つです。
紙とペンと印鑑さえあれば作成できるため、最も手軽な方法と言えます。
ただし法律で定められた要件を満たしていない自筆証書遺言は、遺言そのものが無効となってしまうので注意が必要です。
ここでは自筆証書遺言が有効になるための要件と注意点について解説します。
せっかく書いた遺言書が無効となってしまわないよう、ご自身で遺言を作成される際には参考になさってください。
自筆証書遺言の要件
自筆証書遺言は最もシンプルな遺言方式で、紙とペンと印鑑さえあれば自分一人で作成できます。
有効な自筆証書遺言の要件としては
- 遺言書を書いた日付
- 遺言したい内容(遺言本文)
- 署名(氏名)
- 押印
これらのすべてが自書されていることです(印鑑も自分の手で押すということ)。
基本的に自分一人で作成するので費用はかかりませんし、他言しなければ遺言の内容はもちろん、遺言書をのこした事実さえも知られることはありません。
しかし上で挙げた要件を一つでも満たしていなければ、遺言全体が無効となる可能性があるので注意が必要です。
以下でよくある間違いや注意すべき点を挙げていきます。
1
日付
西暦でも元号でもかまいませんが、必ず日にちまで特定できるように書いてください。
たとえば、『平成29年7月吉日』という記載は、吉日が何日のことか特定できないのでダメですが、『平成29年7月末日』であれば特定できるのでOKです。
日付が特定できなければ遺言書全体が無効となってしまいます。
数字の記載がなくても、『遺言者の60歳の誕生日』のように日にちまで特定できる書き方であれば有効です。
日付の記載が重要なのは、遺言書が複数見つかった場合には後の日付の遺言書が優先されるため、という理由もあります。
2
遺言したい内容(遺言本文)
肝心な遺言の内容については、基本的には何を書いても自由ですが、言い回しがあいまいだったり、わかりづらかったりすると、その解釈をめぐり争いになりかねないので、できるだけシンプルに誤解のないような文章を心がけましょう。
この部分については、遺言として効力を発生しない事項を書いても、その事項が拘束力を持たないだけで、遺言全体が無効になることはありません。
3
署名(氏名)
遺言した人が特定できればいいので、必ずしも戸籍通りの氏名を書かなくてはいけないわけではなく、通称やペンネームでも構わないのですが、名称によっては他の人との混同の恐れがあるので、できれば戸籍通りの正しい氏名を記入しましょう。
また、法律上は要求されていませんが、他の人との混同を避け、書いた人を特定するという意味では、住所も書いておいた方がいいでしょう。
4
押印
認印でも拇印でも一応大丈夫ですが、後で有効性が争われることのないようできるだけ実印で押印しましょう。
5
すべてを自書すること
全てというのは文字通り日付や本文、署名に至るまでの全てです。
署名と日付のみ自書して、本文がワープロ作成の場合、全体として無効です。
財産目録をつける場合はそれもすべて自書してください。代筆は一部でもダメです。
身体的にどうしても自書が難しい方は公正証書遺言か秘密証書遺言を利用しましょう。
手軽ではあるが、書き方や保管方法には注意が必要
遺言の内容については何を書いても自由なのですが、遺言書に書くことによって有効になると法律で定められた事項(法定遺言事項)以外のことを書いても、法的効力・拘束力はありません。法律で定められた事項についても、書き方によっては意図していたものと異なる財産分配になってしまったり、余計な税金がかかったりしてしまう恐れがあるので、不安がある場合は専門家に相談した方が確実です。
また、自筆証書遺言自体は何度でも簡単に作成できますが、相続開始後に家庭裁判所で検認という手続きを取る必要があり、その点では手間がかかることになります。さらに保管中に改ざんされたり、紛失したりすることがないよう保管方法にも気を付けるべきでしょう。
遺言書の作成についてのご相談は当事務所で承ります。ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。
次回は3つの遺言書形式の一つである公正証書遺言について解説します。
こちらが続きになります。
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