「相続人と連絡がとれない」ときに読むページ・司法書士が教える解決方法

著者情報

司法書士法人東京横浜事務所
代表/司法書士 田中 暢夫


年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。相続案件を中心に、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。

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司法書士法人東京横浜事務所
代表/司法書士 田中 暢夫


年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。相続案件を中心に、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。

「亡くなった家族の相続手続きを進めたいのに、連絡が取れない相続人がいて困っている…」

当事務所には、このようなお悩みを抱えてご相談にいらっしゃる方が沢山いらっしゃいます。

相続人のうち一人でも連絡が取れない方がいると、故人の口座からお金を引き出すことも、不動産の名義変更をして売却することも難しくなってしまいます。

本記事では、「相続人と連絡が取れない」ケースを3つのパターンに分けて、対処法や相続手続きの進め方を詳しく解説します。

司法書士田中暢夫

一般的な知識の解説にとどまらず、現役の司法書士である筆者の経験に基づく具体的なノウハウを解説しているので参考にされてください。

実際の事例も交えて多種多様なケースの解決方法を解説しているので、本記事を読めば、自分のケースでどのような方法を取るべきかがわかります。

目次

相続人と連絡が取れないと相続手続きは進められない

人が亡くなり相続が開始すると、故人の財産をどのように分け合うかを決める「遺産分割協議」を相続人全員で行う必要があります。

連絡が取れない相続人がいるからといって、その相続人を除いて遺産分割協議を行うことはできません。

また、一括りに「連絡が取れない」と言っても実際は色々なケースがあり、必要に応じて対処法を検討しなければなりません。

「相続人と連絡が取れない」ケースは3つのパターンに分かれる

「相続人と連絡が取れない」ケースは、相続の事情により下記の3つのパターンに分類することができます。

  • 相続人の現在の住所(連絡先)が分からない
  • 相続人に連絡をしたが返事がない・協力してくれない
  • 相続人と連絡が全く取れず行方不明
司法書士田中暢夫

まずは自分がどのパターンに当てはまるか確認してみましょう。

どのパターンかによって、対処法と相続手続きの進め方が大きく変わります。

以下、それぞれについて解説します。

【パターン①】相続人の現在の住所(連絡先)が分からない

相続人と面識がない、長い間疎遠等の事情があり、現在の住所(連絡先)が分からないというパターンです。

この場合は、戸籍を調査して現在の連絡先を確認した上で、手紙を送るなどして連絡を試みることになります。

詳しくは「3.相続人の現在の住所(連絡先)が分からない場合の対処法」で解説します。

【パターン②】相続人に連絡をしたが返事がない・協力してくれない

連絡先は把握しており、何度か連絡をしたものの無視されているようなパターンです。

この場合は、下記の方法で話し合いを試みるか、裁判所の関与の元で遺産分割をすることになります。

  • 相続手続きを放置するデメリットを伝える
  • 専門家に依頼して改めて連絡を試みる
  • 遺産分割調停・審判を申立てる

詳しくは「4.相続人に連絡をしたが返事がない・協力してくれない場合の対処法」で解説します。

【パターン③】相続人と連絡が全く取れず行方不明

相続人の所在調査をしてもまったく行方が分からず、どうしても連絡が取れないパターンです。

この場合は、下記のどちらかの家庭裁判への申立てを経て、遺産分割協議を行うことになります。

  • 不在者財産管理人選任の申立て
  • 失踪宣告の申立て

詳しくは「5.相続人と連絡が全く取れず行方不明の場合の対処法」で解説します。

相続人の現在の住所(連絡先)が分からない場合の対処法

パターン①「相続人の現在の住所(連絡先)が分からない場合」は、亡くなった人の戸籍を辿り、対象の相続人の戸籍の附票を取得することで現在の住所を確認します。

現在の住所がわかったら手紙を送って連絡を試みることになります。

連絡先が分からない相続人の住所の調べ方

連絡先が分からない相続人の住所の調べ方は、以下のとおりです。

STEP
亡くなった人の戸籍を収集する

まず、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍をすべて集めます。

戸籍を取得する中で、連絡が取れない相続人の記載が出てきたら、その方が除籍(その戸籍からいなくなること)になっているか確認します。

除籍になっているかについては下記の部分で確認できます。

  • 最近の戸籍・・・名前の横に「除籍」と記載されている。
  • 古い戸籍・・・名前の所に×が付いている。

除籍になっていなければ、その方が記載されている戸籍が現在の本籍地なので、STEP3に飛んで連絡が取れない相続人の戸籍の附票を請求します。

STEP
相続人の戸籍を古い方から順番に取得し、現在の本籍地を確認する

STEP1で対象の相続人が除籍になっていて、理由が「婚姻」「転籍」「縁組」などの場合は、新しい本籍地に戸籍を請求します。

新しい本籍はその人に関する記載事項の一番最後あたりに記載されています。

新しく取得した戸籍を確認し、転籍等によりさらに新しい戸籍が存在する場合は、最新の戸籍(現在の本籍地)に辿り着くまで戸籍請求を繰り返します。

司法書士田中暢夫

除籍の理由が「死亡」の場合は、その方の子供が相続人になる可能性があるので、その方の出生から死亡までの戸籍を取得して子供がいるかどうかを調べます。

STEP
戸籍の附票で住所を確認する

現在の本籍地がわかったら、その本籍地の市区町村役場に戸籍の附票を請求します。

戸籍の附票には住所の変遷が記載されており、一番新しい住所が住民登録上の現住所という事になります。

戸籍の附票の見本

戸籍の附票の見本
戸籍の附票の見本

連絡先が分からない相続人の住所の調べ方についてくわしくはこちらをご覧ください。

現在の住所がわかったら手紙を出す

戸籍の附票で現在の住所が分かったら、手紙を送って連絡を試みます。

最初の手紙で返信がない場合は、連絡が欲しい旨を強調して再度手紙を出します。

また、手紙は届いているものの返信がない場合(郵便物が返送されてこない場合)は、転送届を出している可能性もあります。

郵便局の郵便追跡サービスで、配達状況が「転送」になっている場合は、何らかの事情で住民登録上の現住所とは別の場所に住んでいる可能性が高いでしょう。

どの郵便局から配達されたかを確認すれば、現在の居場所のヒントがつかめるかもしれません。

参考

 郵便追跡サービス|日本郵政

司法書士田中暢夫

郵便追跡サービスを利用すれば、到着したか否か、転送されたか否かのほかに、どの郵便局から配達されたかなども確認できるので、普通郵便ではなく書留郵便などの追跡可能な郵送方法で送りましょう。

手紙の内容については、「8-2.最初の連絡が重要(相続人への手紙の文例あり)」を参考にしてください。

■手紙が返送されてきた場合の対応

送付した手紙が「あて所に尋ねあたりません」というスタンプを押されて戻ってきた場合は、そこには住んでおらず、転送届も出していないと考えられます。

どうしても行方がわからない場合は、裁判所に申立てを行うことになりますが、その際に返送された手紙(封筒のコピー)は、資料として提出が必要となるので、必ず保管しておきましょう。

また、郵便物は「あて所に尋ねあたりません」ではなく、「保管期間経過」や「受取拒絶」で返送される場合もあります。

この場合は、送付先住所に住んでいて受け取ることができたにも関わらず受け取らなかったという事になります。

「保管期間経過」は気付いていない・忘れていただけの可能性もありますが、「受取拒絶」は連絡を取りたくないという意思表示と考えられるので、「4.相続人に連絡をしたが返事がない・協力してくれない場合の対処法」により解決を目指すことになります。

相続人に連絡をしたが返事がない・協力してくれない場合の対処法

パターン②「相続人に連絡をしたが返事がない・協力してくれない場合」は、下記の方法で話し合いを試みるか、裁判所の関与の元で遺産分割をすることになります。

以下、それぞれについて解説します。

相続手続きを放置するデメリットを伝える

ただ連絡して協力をお願いしただけでは反応が無い場合は、「このまま相続手続きを放置してしまうとどのようなデメリットがあるか」を改めて伝えてみましょう。

例えば下記のようなデメリットがあります。

■預貯金の引出しができない

相続手続きをしなければ、預貯金口座から引き出しができず、本来もらえるはずのお金がもらえないというデメリットがあります。

故人名義の預貯金口座は、金融機関が故人の死亡を知った時点から凍結され、引き出せない状態になります。

凍結した口座を解約して預貯金を引き出すためには、遺産分割協議が成立しているか、少なくとも口座の解約(相続手続き)を行うことについて合意していることが必要です。

不動産の処分ができない

相続手続きをしなければ、不動産を売却することができず、本来受け取れるはずの売却代金がもらえないというデメリットがあります。

故人名義の不動産は、そのままでは売却することはできません。 売却するためには、遺産分割協議を行った上で、相続人への名義変更(相続登記)を行わなければなりません。

■相続税が高くなる

相続税の申告が必要な場合、10か月の期限内に申告・納付をしなければ、本例の税額に加え、延滞税や無申告加算税などのペナルティが加算されるというデメリットがあります。

また、期限内に申告をしないと、小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」などの税負担を大幅に軽減できる特例を適用することができないため、余計な税金を支払うことになるというデメリットもあります。

相続税申告の際は、一人あたりいくらの遺産を受け取るのかを確定させなければ、相続税額が算出できないため、遺産分割協議も10か月以内に終わらせる必要があります。

司法書士田中暢夫

この場合、「財産を一切もらえていないのに相続税を納付しないといけなくなる」というデメリットは強調して伝えた方がよいでしょう。
場合によっては、相続税の申告期限までに納税資金を準備できないこともあり得ます。

■裁判所で法的な手続きを取らなければいけなくなる

相続手続きをしないままでいると、最終的には裁判所に申立てを行い解決を図ることになりますが、遺産分割調停や審判の対応に手間がかかる上、解決までの期間が長引くというデメリットがあります。

遺産分割調停・審判の期日は1~2か月に一度のペースで開かれ、調停申し立てから最終的な審判が下るまでに1年から1年半程度かかります。

相続人間の主張が激しく対立している場合は、裁判所の判断に時間を要するため、2年以上かかるケースも珍しくありません。

専門家に依頼して改めて連絡を試みる

自分で連絡したときは反応がなかったが、司法書士や弁護士のような専門家からの連絡には反応があったというケースもあります。

事例②のように、他の相続人からの連絡には反応が無かったが、相続手続き協力のお願いという形で司法書士が連絡を取った結果、協力を取り付けることができたというケースはよくあります。

司法書士田中暢夫

当人同士では感情的な理由からやりとりが難しい場合でも、専門家が公平な立場で関与するなら任せても問題ないと考える方は意外にも多いです。

遺産分割調停・審判を申立てる

下記のような場合は、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをして解決を目指すことになります。

  • 行方不明という訳ではないのに全く反応がない場合
  • 連絡は取れたが手続きに協力してもらえない場合
  • 遺産の分け方を巡って争いになり当事者間での解決が難しい場合

遺産分割調停では、調停委員が当事者双方の言い分を聞いて、中立的な立場から解決策の提案をしてくれます。

ただし、あくまで話し合いなので、当事者が出席しない場合や合意に至らない場合調停は不成立となり、自動的に遺産分割審判の手続きに移行します。

遺産分割審判とは、当事者の主張や提出された資料をもとに、裁判官が遺産の分割方法を決める(審判する)手続きです。

調停と審判の大きな違いは、調停があくまで当事者同士の「話し合い」であるのに対し、審判は裁判所による「強制的な決定」であるという事です。

遺産分割調停では当事者の意向を汲んだ柔軟な解決も可能ですが、遺産分割審判では基本的に法定相続分での分割が指定されます。

相続人と連絡が全く取れず行方不明の場合の対処法

パターン③「相続人と連絡が全く取れず行方不明の場合」は、家庭裁判所で下記のどちらかの手続きを行うことになります。

以下、それぞれについて解説します。

行方不明の相続人がいる場合の手続きについてくわしくはこちらもご覧ください

不在者財産管理人選任の申立て

不在者財産管理人選任の申立てとは、家庭裁判所に申立てを行い、行方不明者(不在者)に代わってその財産を管理する者を選任してもらう制度です。

この制度を利用すると、不在者財産管理人と他の相続人との間で遺産分割協議をすることが可能になり、行方不明者がいることで滞っている様々な手続きを進めることができるようになります。

遺産分割協議を行うために選任する場合は、家庭裁判所指定の弁護士等の専門職が選任されることが多いです。

不在者財産管理人選任の申立てについてくわしくはこちら

失踪宣告の申立て

失踪宣告とは、行方不明者が下記のいずれかに当てはまる場合に、家庭裁判所の審判により法律上「死亡したものとみなす」制度です。

  • 7年以上生死不明の状態にある(普通失踪)
  • 戦争・震災などの危難に遭遇し、危難が去った後1年以上生死不明の状態にある(特別失踪)

失踪宣告の審判がされると、行方不明者は死亡したものと取り扱われるため、相続関係に変化が生じます。

その相続人全員が遺産分割協議をすることによって、残された遺族は財産を自由に処分することが可能となります。

失踪宣告の申立てについてくわしくはこちら

どちらの方法を選ぶかは慎重に

失踪宣告の申立ての要件を満たしている場合、当然に不在者財産管理人選任申立ての要件も満たすので、どちらかの手続きを選択することになります。

この場合、不在者財産管理人選任の申立てを行うか、失踪宣告の申立てを行うかは慎重に判断しましょう。

特に、行方不明者に配偶者や子供がいる場合、失踪宣告により死亡したとみなされた結果、代襲相続や二次相続が発生し、新たに相続人が出現することになるので注意が必要です。

新たな相続人との間で遺産をめぐりトラブルになることが懸念されるのであれば、あえて不在者財産管理人選任の申立てを選択するということもあり得ます。

司法書士田中暢夫

親族関係のほか、財産状況によっても適切な方法は変わってくるため、相続に精通した専門家にも相談の上、判断することをおすすめします。

連絡が取れない相続人がいる場合の相続手続きの進め方

連絡が取れない相続人がいる場合、相続手続きは通常より手間も時間もかかる為、手順よく進める必要があります。

この章では、パターン①「相続人の現在の住所(連絡先)が分からないため連絡が取れないケース」を想定して、相続手続きの進め方を解説します。

手続の大まかな流れは以下のとおりです。

以下、それぞれについてくわしく解説します。

STEP1 遺言書の有無を確認する

相続手続きを進める最初の段階で必ず遺言書の有無を確認しておきましょう。

有効な遺言書あれば、相続人全員の協力が無くても手続きを進められる可能性があり、積極的に連絡を取る必要がなくなるかもしれないからです。

遺言書は作成形式により調査・探索方法が異なります。

一般的には「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」のどちらかであることがほとんどで、「自筆証書遺言書保管制度」の利用有無を含めて下記の3つに分かれます。

■遺言書の種類と探索方法

遺言書の種類調査・探索先調査・探索する方法
自筆証書遺言・故人の自宅
・金融機関の貸金庫など
・故人宅の金庫や引き出し等を探す
・故人の取引先の金融機関に確認する
自筆証書遺言(遺言書保管制度利用)全国の法務局「遺言書情報証明書」又は「遺言書保管事実証明書」の交付請求を行う
公正証書遺言全国の公証役場遺言検索システムを利用する
司法書士田中暢夫

故人から遺言書があると伝えられていなくても、念のため公正証書遺言と自筆証書遺言の両方とも探しましょう。

遺言書の調査・探索方法についてくわしくはこちらをご覧ください

STEP2 戸籍を収集し、相続関係と相続人の現住所を確認する

3-1.連絡先が分からない相続人の住所の調べ方」の手順で、連絡先がわからない相続人の現在の住所を確認します。

また、遺言書がない場合、遺産分割協議に法定相続人全員が参加する必要があるため、亡くなった人や相続人の戸籍謄本を集めて、誰が相続人になるかを確認しておく必要があります。

司法書士田中暢夫

直系血族の戸籍については、「戸籍の広域交付制度」を利用すれば、最寄りの市区町村役場窓口で一括取得することができます。

戸籍の広域交付制度など、戸籍の集め方についてくわしくはこちらをご覧ください。

STEP3 相続財産を調査する

遺産分割協議の対象となる財産を確定するために、相続財産の調査を行います。

後々作成する財産目録に記載するために、財産の評価額がわかる資料をできるだけ取得しておきましょう。

主な財産の調査方法等は下記のとおりです。

相続財産の調査方法

財産の種類調査・探索先収集・取得する資料
不動産自宅、法務局、市区町村役場(東京23区は都税事務所)登記済権利証、登記事項全部証明書、固定資産税評価証明書、名寄帳等
預貯金自宅、各金融機関通帳、残高証明書、取引履歴等
株式、投資信託等の有価証券自宅、各金融機関、証券保管振替機構残高証明書、異動明細等
生命保険等の保険契約自宅、各保険会社、生命保険協会保険証書、契約内容の案内、相続評価額証明書等

なお、残高証明書等は必ず「相続開始日時点のもの」を取得してください。

司法書士田中暢夫

財産の詳細がわからない状態で話をしても、お互いに要領を得ず、不信感を抱かれる原因になるので、財産調査はできるだけ事前に行っておきましょう。

相続財産の調査方法についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

STEP4 相続関係説明図と相続財産目録を作成する

相続人及び相続財産の調査が完了したら、調査結果をもとに相続関係説明図と相続財産目録を作成しましょう。

司法書士田中暢夫

相続関係説明図や相続財産目録の作成は法律上の義務ではありませんが、きちんとした資料を提示して話し合う姿勢を見せることで、余計なトラブルを回避することができるので、作成することをおすすめします。
8-3.相続財産の内容は必ず開示する」も参考にしてください。

■相続関係説明図の見本

相続関係説明図の見本
相続関係説明図の見本

相続関係説明図とは、亡くなった方の相続関係を家系図のような形でわかりやすく説明したものです。

法定相続情報一覧図とほぼ同一の内容なので、取得済みであればそちらで代用も可能です。

■相続財産目録の見本

相続財産目録の見本
相続財産目録の見本

相続財産目録は、相続財産の種類、数量、金額等を一覧表の形式でわかりやすくまとめたものです。

形式に決まりはありませんが、パソコン(エクセル等)で作成すると編集が容易です。

相続財産目録に記載する財産の所在や、種類、数量等については登記簿謄本や残高証明書を確認して正確に記載します。

司法書士田中暢夫

相続財産目録には、財産の内容や評価額等の根拠資料として、登記簿謄本や残高証明書等のコピーを添付しましょう。

相続財産目録のひな型や作成方法についてくわしくはこちらをご覧ください。

STEP5 連絡が取れない相続人に手紙を出す

現住所を把握し、相続関係説明図や相続財産目録の準備まで整ったら、手紙を送って連絡を試みます。

いきなり訊ねるのは失礼なので、相手の住所が近くの場合でも、まずは手紙を出します。

面識のない方や疎遠な方と連絡を取る場合、この最初の連絡がとても重要です。

手紙の内容は「8-2.最初の連絡が最も重要」を参考にしてください。手紙のサンプルも掲載しています。

手紙の出し方については「3-2.現在の住所がわかったら手紙を出すも参考にしてください。

最初の手紙で返信がない場合は、連絡が欲しい旨を強調して、再度手紙を出してみましょう。

2~3回手紙を出しても反応が無い場合、相手の住所まで行くことが可能であれば、直接出向いてポスト等に手紙を投函して反応を待ちましょう。

司法書士田中暢夫

手紙を出して反応がない時点で、相手はできれば関わりたくないと考えていると思われるので、直接訪ねて対話を試みるのは最後の手段だと考えて下さい。

■手紙に対する反応によりその後の対応は異なる

手紙に対して、手続きに協力する旨の返事があればSTEP6以降の手順で遺産分割協議や相続手続きを進めることができます。

手紙に反応がない場合や協力を拒否された場合は「4.相続人に連絡をしたが返事がない・協力してくれない場合の対処法」を参考にしてください。

手紙が届かず行方不明と思われる場合は「5.相続人と連絡が全く取れず行方不明の場合の対処法」を参考にしてください。

STEP6 相続人全員で遺産分割協議を行う

手続きに協力してもらえる場合は、「どの遺産を」「誰に」「どんな割合で」分けるかについて相続人全員での話し合い(遺産分割協議)を行います。

遺産の分け方は相続人全員の合意があれば自由に決めて構いませんが、基本的には法定相続分がベースになります。

遺産分割の方法と揉めないための注意点についてはこちらの記事をご覧ください。

STEP7 遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議がまとまったら、合意した内容を書面にまとめた「遺産分割協議書」を作成します。

遺産分割協議書の記載内容に不備があると、相続手続きに使えず、訂正の手間もかかるので、名前や住所等は戸籍等を、不動産や預貯金は登記簿謄本や残高証明書等を確認して正確に記載しましょう。

遺産分割協議書のひな型や記載方法についてくわしくはこちらの記事をご覧ください

STEP8 遺産分割協議書に署名押印をもらう

作成した遺産分割協議書に、相続人全員の署名押印を貰います。

遺産分割協議書への押印は必ず実印で行います。

実印であることの確認のために印鑑証明書も必要になるので、遺産分割協議書と一緒に提供してもらいます。

金融機関では、発行後6か月以内(3か月以内の場合もあり)の印鑑証明書を求められることがほとんどなので、新しく取得したものを提供してもらいましょう。

署名押印は必ずしも全員が集まって行う必要はなく、遠方の場合は郵送で順次協議書を回していく形でも大丈夫です。

司法書士田中暢夫

相続人が遠方に住んでいる場合や人数が多い場合は、各自がそれぞれ単独で署名押印した書面をまとめて提出する方法(証明書形式)をおすすめします。

遺産分割協議証明書のひな型や記載方法についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

STEP9 預貯金の解約や不動産の名義変更などの相続手続きを行う

遺産分割協議書と印鑑証明書が揃ったら、預貯金口座の解約や不動産の名義変更手続きを行っていきます。

印鑑証明書の期限切れによる再取得の手間が生じないよう、速やかに手続きを終わらせましょう。

司法書士田中暢夫

解約した預貯金について、代表者がまとめて払戻しを受け、後で分配する場合は、振込先の口座を忘れずに聞いておきましょう。

預貯金や不動産などの相続手続きについては下記の記事を参考にしてください。

STEP10 (必要な場合)相続税の申告を行う

相続税の基礎控除額

遺産総額が相続税の基礎控除額【3,000万円+(600万円×法定相続人数)】を超える場合は、相続税の申告・納付を行います。

申告・納付期限は故人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。

配偶者控除や小規模宅地等の特例等の税制上の優遇措置を受けるためには、遺産分割協議も10か月以内に終わらせる必要があるので注意しましょう。

相続人と連絡が取れず申告期限までに遺産分割協議ができない場合は、いったん法定相続分で相続したことにして期限内に申告・納付を行い、後日遺産分割協議が整ったら修正申告や更正の請求を行うことになります。

相続税の申告についてくわしくはこちらをご覧ください。

STEP11 手続き完了後、遺産分割協議書や計算書を各相続人に引き渡す

無事に預貯金や不動産等の相続手続きが完了したら、相続手続き関係書類のうち各相続人が保管しておくべきものについては、郵送等で引き渡しましょう。

少なくとも遺産分割協議書は各相続人が一部ずつ保管しておくようにしましょう。

解約した預貯金について、代表者がまとめて払戻しを受け、後で各相続人に分配する場合は、金融機関からの振込額や各相続人への分配額を記載した計算書を作成し、手続き完了の報告と共に送付しておきましょう。

司法書士田中暢夫

完了後の連絡や書類の開示がないことが原因でトラブルになることもあるので、余計な火種を抱えないように最後まできちんと対応しましょう。

【解決事例】ケース別・連絡が取れない相続人がいる場合の相続手続きの進め方

連絡が取れない相続人がいる場合の相続手続きは、相続をめぐる事情により注意すべき点や進め方が異なります。

実際の事例を見た方が全体像を把握しやすいので、ここでは当事務所が対応した3つの実例をご紹介します。

事例① 全く面識のない相続人に連絡を取らなければならないケース

全く面識のない相続人に連絡を取らなければならないケース
全く面識のない相続人に連絡を取らなければならないケース

【事例の概要】

お父様が亡くなられた方からのご相談。

相続人は母と自分のみと思っていたが、金融機関から、父には現在の妻(ご相談者様の母)とは別の女性との間に子供がいて、その方も相続人になると言われたとのこと。

もう一人の相続人と面識は一切なく、現在の生死・所在もまったくの不明とのことで、途方に暮れて相談にいらっしゃいました。

【法定相続割合】

法定相続人法定相続分に基づく相続割合
妻A1/2
子B(ご相談者様)1/4
子C(父の婚姻外の子)1/4

【問題点】

  • 相続人を確定するため、相続に関するすべての戸籍を取得する必要がある。
  • 面識のない相続人について、公的な手段で現住所を調べる必要がある。
  • 面識のない相続人と連絡を取り、遺産分割協議や相続手続きに協力して貰う必要がある。
  • 遺産分割協議を行うにあたり、相続財産の調査を行い、財産目録を作成する必要がある。
  • 協議成立後は、協議内容に従って不動産の名義変更や相続預金の解約及び各相続人への分配を行う必要がある。

【どのように解決したか】

上記の状況及び問題点を受けて、当事務所で下記のとおりサポートを行い、解決しました。

  • 相続に関係するすべての戸籍を収集し、相続人を確定させました。
  • 面識のない相続人について、戸籍の附票を取得して現在の住所を確認しました。
  • 相続財産の調査を行い、詳細な財産目録を作成して相続人の皆様に開示しました。
  • 面識のない相続人の方に、相続をめぐる事情を説明するための手紙を送付し、手続きへの協力をお願いしました。
  • 手紙を読んだ相続人の方から、当事務所に返信があり、手続きに協力して貰える事になりました。
  • 遺産分割については法定相続ベースで分けることで話がまとまったため、遺産分割協議書等を作成し、署名捺印をいただく手配をしました。
  • 遺産分割協議成立後は、協議内容に従って相続登記や預金の解約及び分配を行いました。
司法書士田中暢夫

このケースのように全く面識がない場合、不信感を持たれないように、しっかりと財産調査を行い、開示することが重要です。

この事例の詳細についてはこちら

事例② 長い間音信不通の相続人と連絡が取れないケース

長い間音信不通の相続人と連絡が取れないケース
長い間音信不通の相続人と連絡が取れないケース

 【事例の概要】

伯母様が亡くなられた方からのご相談。

相続人はきょうだい二人と甥であるご相談者様の3人。

きょうだいのうちの一人とご相談者様は親しい間柄だが、もう一人のきょうだいについては20年以上連絡を取っていないとのこと。

親族から連絡先を聞き連絡を取ってみたが不通で、遠方に住んでいるらしいが正確な住所もわからないという事で、途方に暮れて相談にいらっしゃいました。

【法定相続割合】

法定相続人法定相続分に基づく相続割合
妹A1/3
弟B1/3
甥C(ご相談者様)1/3

【問題点】

  • 相続手続きのためには相続人全員の協力が必要なため、音信不通の相続人に連絡を取る必要がある。
  • 遺産分割協議の前提として、相続財産の調査を行い、財産目録を作成して開示する必要がある。
  • 協議がまとまった後の不動産の名義変更や、金融資産の解約・名義変更及び分配についても、公平に行う必要がある。
  • 不動産については、利用予定もないため売却して代金を分けるつもりだが、遠方に住んでいるため、売却活動を行うのが難しい。

【どのように解決したか】

上記の状況及び問題点を受けて、当事務所で下記のとおりサポートを行い、解決しました。

  • 音信不通の相続人の方に、手続きについての説明と協力をお願いする内容のお手紙を出しました。
  • 手紙を読んだ相続人から連絡があり、事情を説明した結果、無事協力していただけることになりました。
  • 遺産分割協議の前提として、不動産や金融機関の調査を行いました。
  • 調査結果をもとに相続財産目録を作成し、相続人の皆様に開示いたしました。
  • 分け方については、法定相続分をベースとすることでまとまったため、遺産分割協議書を作成し、署名捺印をいただく手配を行いました。
  • その後の相続登記や、預貯金の解約・分配まで当事務所で代行させていただきました。
  • 相続税申告について税理士をお繋ぎし、必要な資料の収集等についてもサポートしました。結果、無事期限内に申告を終えることができました。
  • 不動産の売却についても当事務所で手配を行い、相続人様の手を煩わせることのないよう、売却代金の公平な分配までサポートいたしました。
  • 特定の方に負担が偏ることなく、公平かつ迅速に手続きを終えることができたという事で、相続人の皆様に大変ご満足いただくことができました。
司法書士田中暢夫

このケースのように相続税の申告や不動産の売却が必要な場合は、相続人間の関係性に配慮しつつも、期限に間に合うようにスケジュールを管理し、迅速に対応する必要があります。

この事例の詳細についてはこちら

事例③ 面識のない相続人と行方不明の相続人がいるケース

面識のない相続人と行方不明の相続人がいるケース
面識のない相続人と行方不明の相続人がいるケース

【事例の概要】

お父様が亡くなられた方からのご相談。

相続人はお子様3人。

相続人の一人は前妻との子で、ご相談者様とは全く面識がないとのこと。

また、ご相談者様の兄は数年以上音信不通で連絡が取れないとのこと。

他の相続人と連絡を取るのが難しい状況で、どのように遺産分割や相続手続きを進めていいかわからず、困り果てて相談にいらっしゃいました。

【法定相続割合】

法定相続人法定相続分に基づく相続割合
子A(異母兄・前妻の子)1/3
子B(兄・音信不通)1/3
子C(ご相談者様)1/3

【問題点】

  • 遺産分割協議や預金解約等の相続手続きには、原則として相続人全員の同意が必要。
  • 面識のない相続人と連絡を取り、遺産分割協議をまとめなければならない。
  • 相続人の中に行方不明の方がいる場合、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらう必要がある。
  • 公平な遺産分割のため、財産調査をきちんと行い、相続財産目録を作成して開示する必要がある。
  • 後で不満が出ないように、財産の分配も含めて公平な第三者に任せたい。

【どのように解決したか】

上記の状況及び問題点を受けて、当事務所で下記のとおりサポートを行い、解決しました。

  • 相続関係及び不在者の足取りの調査のため、戸籍謄本等の収集を行いました。
  • 面識のない相続人について、戸籍の附票を取得して現在の住所を確認しました。
  • 相続財産の調査を行い、相続財産目録を作成して相続人の皆様に開示しました。
  • 面識のない相続人の方に、今回の事情を説明するための手紙を送付し、手続きへの協力をお願いしました。
  • 手紙を読んだ相続人の方から返信があり、手続きに協力して貰える事になりました。
  • お兄様が行方不明になった経緯を裁判所に説明するために、事情説明書を作成しました。
  • その他必要書類一式を整え、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てを行いました。
  • 不在者財産管理人として選任された弁護士と他の相続人にそれぞれ連絡を取り、遺産の分け方や分配方法につていの確認・調整を行いました。
  • 遺産の分け方について裁判所の許可が出た後に遺産分割協議書を作成し、各相続人に署名捺印をいただくための手配を行いました。
  • 預貯金の解約手続き及び分配を行い、迅速かつ公平に相続手続きを完了させました。
司法書士田中暢夫

行方不明の相続人がいる場合は、家庭裁判所での手続きが必要な関係上、手続き完了までに半年~1年以上かかるため、早めに専門家に相談することをおすすめします。

この事例の詳細についてはこちら

連絡が取れない相続人がいる場合の相続手続きの注意点

連絡が取れない相続人がいる場合の相続手続きは、相続人同士の関係性が微妙なため、トラブルにならないよう慎重に手続きを進める必要があります。

特に注意すべき点は下記の6つです。

以下、それぞれについてくわしく解説します。

遺言書の有無は必ず確認する

連絡が取れない相続人がいる場合は、相続手続きを進める最初の段階で必ず遺言書の有無を確認しておきましょう。

有効な遺言書がある場合はその内容に従って手続きを進められるため、相続人全員で遺産分割協議を行う必要はありません。

現住所調査や手紙の送付などの面倒な手続きが一切不要になる可能性があるので、早めに確認しておきましょう。

遺言書の種類や探し方については、「6-1.STEP1  遺言書の有無を確認する」を参考にしてください。

司法書士田中暢夫

なお、見つかった遺言書が自筆証書遺言であり、かつ遺言書保管制度を利用したものでなければ、相続手続きを進めるにあたり遺言書の検認手続きが必要になります。

遺言書の検認についてくわしくはこちら

最初の連絡が最も重要(相続人への手紙の文例あり)

連絡が取れない・取りづらい相続人がいるときの相続手続きで、最も重要なことは「連絡が取れなかった方に連絡を取り、手続きに協力してもらうこと」です。

特に連絡が取れない理由が「疎遠・面識がない・音信不通」等である場合、快く手続きに協力してもらうためには、最初の連絡がとても重要になります。

司法書士田中暢夫

これまでたくさんの方の相談を受けてきましたが「最初の連絡の際に失礼な印象を与えてしまうと、その後のやり取りが非常に難航することになる」というのは間違いない所です。

以下に連絡が取れない相続人に最初の連絡をする際の手紙の文例を掲載します。

実際にはもっと詳細に事情を記載することになりますが、ご自身で手紙を作成する際の参考にしてください。

■連絡が取れない相続人への手紙の文例

連絡が取れない相続人への手紙の文例
連絡が取れない相続人への手紙の文例

上記のように、あくまでお願いする立場であること、協力してもらえるとありがたい、という事を意識して書けば失礼な印象を与えることは無いでしょう。

間違ってもいきなり遺産分割協議書や相続手続書類を送りつけて、署名捺印を求めたりしてはいけません。

これをやってしまう大抵の場合、お互い弁護士を付けての交渉となり、解決までの期間が長引き、費用も高くつくことになります。

なお、上記の手紙では相続財産目録等を同封して財産の詳細についても知らせていますが、相続人との関係性によっては、いきなり財産を開示して分け方を提案するのではなく、故人の死亡を伝え、まずは連絡が欲しい旨を伝えるまでにとどめた方がいいケースもあります。

司法書士田中暢夫

失敗できない所なので、不安があるようでしたら、相手方とのやり取り含め、相続実務の経験が豊富な専門家に手続きを依頼した方がいいでしょう。

当事務所がサポートした下記の事例も参考にしてみてください。

相続財産の内容は必ず開示する

連絡の取れない相続人と遺産分割協議を行うにあたっては、財産の内容はもれなく開示することを心がけましょう。

「財産の詳細について知らせないまま、遺産分割協議書に判子を押してほしいと頼んだところ応じてもらえず、弁護士を付けて争ってきた」というのはよく聞く失敗例です。

財産の全容がわからなければ、遺産の分け方を決めることはできず、判子を押すこともできないというのが普通です。

財産の開示をなあなあで済ませてしまうと、「他に隠している財産があるのでは」という不信感を持たれてしまう恐れがあります。

また、隠すつもりは無くても、後で財産が見つかった場合、再度やり取りをして遺産分割協議を行うことになるため、相手方にも迷惑がかかります。

そのようなトラブルを避けるために、相続財産についてきちんと調査を行った上で、相続財産目録を作成し、きちんと相手方に開示しましょう。

司法書士田中暢夫

相続財産目録については「6-4.STEP4 相続関係説明図と相続財産目録を作成する」を参考に作成してください。

遺言書がない場合は法定相続分で分けることが原則

遺言書がない場合は、法定相続分どおり遺産を分けるのが原則です。

もちろん、相続人全員の合意があればどのような分け方をしてもいいので、話合いの結果、特定の方が多く相続することは問題ありません。

しかし、話がこじれて遺産分割調停や審判になってしまうと、よほどの事情がない限り、法定相続どおりの分け方になってしまうことがほとんどです。

中には事情を汲んで相続を辞退される方もいるので、多く相続させてほしいとお願いしてみるぐらいはいいかも知れません。

お願いする場合、「あくまでこちらの希望であり、応じてもらえると大変ありがたいが、受け入れられないなら法定相続できちんと分けるつもりである」という形で伝えればそれほど失礼にはならないでしょう。

とは言え、それでも気分を害される方もいるので、慎重に考えた上で提案してください。

司法書士田中暢夫

不在者財産管理人選任の申立て」が必要な場合も、遺産分割の内容は不在者(行方不明の相続人)の法定相続分を確保することを求められます。

当事務所がサポートした下記の事例も参考にしてみてください。

相手方の事情にも配慮する

 遺産の分け方を話し合う際は、相手方にも配慮することが大切です。

故人と親密だった、介護等で多大な貢献をしてきた等の事情がある場合、自分は多めに貰って当然という想いがあるかもしれません。

しかし、それはあくまでこちらの事情であり、相手がどう考えるかは別の話です。

上記のとおり、話がこじれてしまうと、時間や費用がかかった挙句、結局法定相続どおりの分け方になってしまった、という結果になる可能性が高いです。

したがって、自分の意見ばかり強硬に主張することは得策とは言えません。

連絡が取れない事情にもよりますが、疎遠・音信不通だった方は、被相続人や相続人に対して思うところがある、というケースも多いです。

人にはそれぞれ色々事情があるという事を頭に入れ、相手方の考えにもしっかりと耳を傾けましょう。

司法書士田中暢夫

お互いの落とし所を探す姿勢があれば、話し合いを無駄に長期化させることなく、禍根も残さずに済むでしょう。

当事務所がサポートした下記の事例も参考にしてみてください。

貸金庫がある場合は早めに中身を確認する

故人が金融機関に貸金庫を持っている場合、出来るだけ早く中身を確認しましょう。

貸金庫の中には、遺言書や預金通帳などの相続に関する重要な資料が入っている可能性があります。

特に遺言書が入っていた場合、今後の相続手続きに大きな影響があるため、できるだけ早く貸金庫の中身を確認すべきです。

故人が契約していた貸金庫を開けるためには、原則として相続人全員の同意が必要になるので、相続人と連絡が取れたら、遺産の分け方を決める前に、関係者立会いのもと貸金庫の中身を確認しましょう。

とは言え、連絡が取れない相続人がいる場合、相続人全員の同意が揃わず、早い段階での確認が難しいケースもあります。

このような場合、公証人に立会ってもらい、貸金庫の中身を確認した公証人がそれを公正証書にすることで、全員の同意が無くても貸金庫を開けることが可能です。(「事実実験公正証書」と言います。)

司法書士田中暢夫

事実実験公正証書の作成によって貸金庫の中身を確認するためには、金融機関に事情を説明し理解を得る必要があるため、相続実務に精通した専門家に相談しましょう。

当事務所がサポートした連絡が取れない相続人がいる場合の貸金庫開扉の事例はこちら

事実実験公正証書についてくわしくはこちらをご覧ください

連絡の取れない相続人がいる場合の相続は専門家に相談を

ここまで解説したとおり、連絡が取れない・取りづらい方がいる場合の相続手続きは、普通の方にとってはとても大変です。

特に、ほとんど(あるいは全く)面識のない方と連絡を取らなくてはならない場合は、精神的に大きな負担となります。

下手に自分たちで動くより、最初から専門家に任せた方が上手くいくケースもあるので、自分たちでは手に負えないかも…と少しでも思うようであれば、相続に精通した専門家に手続きを依頼することも視野に入れましょう。

司法書士などの専門家であれば、連絡が取れない事情に応じた適切な対応を選択したうえで、所在調査から遺産分割協議、相続財産の分配まで一連の手続きを代行・サポートすることが可能です。

ただし、司法書士や弁護士であっても、そのすべてが相続実務に精通しているわけではありません。

特に連絡が取れない相続人がいるケースでは、同種の他の事例の経験の有無で対応力に大きな差が出るので、実務経験の豊富な専門家を選ぶことが重要です。

司法書士田中暢夫

連絡が取れない相続人がいるケースの経験が豊富な専門家は意外と少ないので、ホームページで実際の事例を公開している場合は参考にするといいでしょう。

相続で司法書士法人東京横浜事務所が選ばれる理由はこちら

連絡が取れない相続人がいる場合は生前に遺言書を!

これから発生する相続で、連絡が取れない相続人がいる場合は、生前に遺言書を作成しておきましょう。

遺言書があればその内容に従って相続手続きを進められるため、相続人全員で遺産分割協議をする必要はありません。

また、遺言で遺言執行者*を指定しておけば、他の相続人の協力を得ることなく、執行者が単独で相続手続きを行うことができます。

*遺言執行者…遺言の内容に従い相続手続きを行う権限を持つ者

相続人の中に連絡の取れない人がいる場合に、一番困るのは故人と最も親しい親族です。

残される方が困らないように、という理由であれば頼みやすいでしょうから、今のうちに遺言書を作成してもらいましょう。

ただし、せっかく遺言書を準備しても、財産の記載漏れや様式に不備があると相続手続きに使用できず、せっかくの対策が無駄になってしまいます。

そのような事態を防ぐためにも、遺言書を作成する際には相続に詳しい専門家に相談のうえ、不備の無い遺言書を作成しましょう。

失敗しない遺言書作成の秘訣についてくわしくはこちらをご覧ください

こんなときどうする?連絡が取れない事情ごとの解決方法Q&A

以下では、実際にあった事例やよくあるご相談内容をもとに、相続人と連絡が取れない場合の解決方法をQ&A形式で解説します。

疎遠な相続人がいるので、連絡せずに勝手に相続手続きを進めることは出来ますか?

遺言書がない限り、相続人に連絡せずに勝手に相続手続きを進めることは出来ません。

遺言書がない場合、相続手続きを進めるにあたっては原則として相続人全員の同意が必要です。

仮に手続きできたとしても、後で他の相続人から遺産分割調停や裁判を起こされ、より大きなトラブルに発展する恐れがあります。

亡父に大昔に認知した子供がいることが発覚しました。母と私に全財産を遺す旨の遺言はあります。認知した子供の連絡先も住所も知らないので、連絡しなくても大丈夫ですか?

必ずしも積極的に連絡する必要はありません。ただし、いずれ事実を知られる可能性は高いです。

有効な遺言書がある場合、他の相続人の協力が無くても相続手続きを進められるため、全く面識がなく連絡先も知らない相続人に連絡しなければならないという事はありません。

しかし、ほとんどの場合、公的機関からの通知や遺言執行者からの通知により、各相続人に死亡の事実や遺言書の存在が知られることになります。

また、仮に知られずに相続手続きができたとしても、何らかのきっかけで認知した子供が相続発生の事実を知る可能性は高いです。

子供が自分の親の戸籍を取得することは容易で、戸籍謄本を見れば死亡したことはすぐにわかってしまいます。

また、相続開始後であれば、相続人として公証役場で遺言の有無や内容を確認することはできてしまいます。

くわしくは下記の記事を参考にしてください。

 ≫亡くなったことを前妻の子に知られずに相続手続きはできるか

司法書士田中暢夫

事実を知った子供から、ある日突然遺留分を請求する旨の手紙が届くかもしれないということを考えると、むしろ早めに伝えてしまった方がいいかもしれません。

亡父の遺産相続で相続人である姉と連絡がとれず困っています。医療費や遺品整理費用などの支払いが必要なんですが、父の口座から勝手に引き出して支払うと後で問題になりますか?

できれば引き出さない方がいいですが、やむを得ない場合は領収書等を保管しておきましょう。

相続発生後、遺産分割協議が終わるまでは、故人名義の口座のお金は相続人全員の共有状態です。

ここで相続人のひとりが勝手に引き出してしまうと、私的な使い込みを疑われるなど、他の相続人とのトラブルの原因になりかねません。

ただ、そうは言っても死後の支払いで至急お金が必要なケースもあるので、いついかなる時も引き出してはいけないとまでは言えません。

もし、やむを得ず引き出す場合は、お金の用途と支出額が証明できるように領収書等を保管しておき、連絡が取れた後ですみやかに情報を共有しておきましょう。

くわしくは下記の記事を参考にしてください。

 ≫親が亡くなった直後にやってはいけないこと(必要以上に多額の現金を引き出す)

司法書士田中暢夫

故人に借金がありそうな場合、預金を引き出してしまうと相続放棄できない可能性があるので注意しましょう。

相続人と連絡がとれません。行方不明ではなく直前まで連絡がとれていました。どうしたらいいでしょうか?

専門家を介しての連絡か、遺産分割調停・審判の申立てを行いましょう。

つい最近まで連絡が取れていた相続人と連絡が取れなくなった場合、行方不明とは言えないので、不在者財産管理人や失踪宣告の制度は使えません。

何度か連絡をしても反応が無いようであれば、専門家に相談して連絡を試みるか、遺産分割調停・遺産分割審判により解決を試みましょう。

相続人の一人に連絡がとれません。住所はわかっているので何度か手紙を出しましたが、普通郵便は届くけど返事が来ず、書留は不在のため返送されます。この場合、不在者財産管理人を選任して遺産分割協議をすることができますか?

行方不明とは言えないので、専門家を介しての連絡か、遺産分割調停・審判の申立てを行いましょう。

書留郵便が「あて所に尋ねあたりません」ではなく、「保管期間経過」や「受取拒絶」で返送される場合、送付先住所に住んではいるが受け取らなかったという事になります。

行方不明とは言えないので、専門家に相談して連絡を試みるか、遺産分割調停・遺産分割審判により解決を試みましょう。

相続人の中に連絡が取れない兄弟がいます。面倒な手続きが嫌らしく、電話に出ない、居留守を使うなどで手続きが進まず、他の相続人に迷惑がかかっています。どうしたらいいでしょうか?

専門家を介しての連絡か、遺産分割調停・審判の申立てを行いましょう。

相続手続きが面倒という理由でなかなか連絡が取れないという方は一定数存在します。

司法書士などの専門家に依頼すれば、ほぼすべての手続きを代行できるので、面倒な対応が不要という事がわかれば協力してくれるかもしれません。

専門家からの連絡にも反応がない場合は、遺産分割調停・審判により解決を目指すことになります。

相続人の一人が海外在住で、住所は知っているのですが連絡がとれません。家族との確執がありわざと音信不通にしていると思われますがどうしたらいいでしょうか?

専門家を介しての連絡か、遺産分割調停・審判の申立てを行いましょう。

事例②のように、家族からの連絡は無視されていても、専門家からの連絡には反応がある場合もあるので、住所がわかっているのであれば弁護士や司法書士等から連絡してもらうことも選択肢の一つです。

専門家からの連絡にも反応がない場合は、遺産分割調停・審判により解決を目指すことになります。

■相続人が海外在住でも遺産分割調停は可能

相手方が海外在住であっても、遺産分割調停の申立ては可能です。

遺産分割調停の申立先は、基本的には「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」ですが、もし日本国内に住民登録がない場合は、最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをします。

また、管轄の裁判所が遠方で双方にメリットがない場合などは、相続人全員の合意や裁判所の判断により申立人の住所地でも申立てができます。

司法書士田中暢夫

現在、裁判所では電話・テレビ会議システムが運用されているため、海外在住であっても遺産分割調停・審判に参加することが可能です。

連絡が取れない叔父の現住所を調べるために戸籍を取ろうとしたところ、役所から「直系血族ではないため出せない」と言われました。どうすればいいですか?

役所に相続手続きのために必要であることを改めて説明し、必要に応じて他の戸籍等を提示するなどして交付してもらいましょう。

叔父が相続人である場合には、相続手続きに必要な範囲で戸籍や戸籍の附票を取得できるのが原則です。

ただ、窓口での請求の場合、担当者が慣れていないため「直系血族ではないため交付できない」と言われてしまうことがあります。

また、交付はできるものの「相続関係が分かる戸籍謄本等」や「被相続人との関係が分かる資料」の提示を求められる場合があります。

その場合は、相続手続きのために必要であることを改めて説明し、資料を提示するなどして交付してもらいましょう。

なお、戸籍の広域交付制度」では、直系血族以外の戸籍謄本は取得できないため、通常の窓口請求や郵送により請求を行いましょう。

司法書士田中暢夫

上手く説明できる自信がない方は、司法書士などの専門家に戸籍収集を依頼することも検討しましょう。

連絡が取れない兄弟の住所を調べようとしたところ、DV等支援措置により住民票閲覧制限がされており、家族なのに戸籍附票が取得できません。どうすればいいですか?

役所に事情を説明しても駄目なら、家庭裁判所で遺産分割調停の申立て制度を利用しましょう。

住民票等の閲覧制限とは、DV等の被害者の方の申立てにより、住民票等の交付を制限する措置のことです。

DV等支援措置による閲覧制限がある場合でも、相続手続きに必要であることを理由に住所情報の開示が認められる可能性があります。

市区町村によって運用は異なりますが、「相続手続きのために住所の確認が必要であること 」を説明し、正当な理由と認められれば開示してもらえる場合があります。

役所に事情を説明しても開示してもらえない場合は、遺産分割調停の申立てを行いましょう。

裁判所は職権で相手方の住所を調査できるため、DV等支援措置の対象となっている場合でも、他の情報で相手方を特定できれば、申立てが可能です。

司法書士田中暢夫

相続手続きのためであっても、DV等の加害者本人に対しては住所情報は開示されません。また、住所情報が開示された場合でも、外部に漏洩しないよう配慮が求められます。

まとめ

連絡が取れない相続人がいる場合、事情に応じた適切な方法を選択し、慎重に手続きを進めなければなりません。

選択を誤ると大きなトラブルにつながることもあるので、相続に精通した専門家に依頼するのも賢明な選択肢と言えるでしょう。

すでに相続が発生していて、相続人と連絡が取れずに手続きが滞っている方は、一度専門家へ相談されることをおすすめします。

また、「相続は発生していないけれど現在親族の中に連絡が取れない人がいる」という場合は、残される家族のためにも生前に遺言書を作成して対策しておきましょう。

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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