自筆証書遺言書の保管制度とは?利用方法や注意点を解説!
2020年から遺言書保管制度が開始!
自筆証書遺言書の保管制度は、2020年(令和2年)7月10日から始まった制度です。
自筆の遺言書の抱えていた、遺言書の保管場所や形式不備の問題を解消できる仕組みとして注目されています。
ただしまだ始まったばかりの制度なので、利用にあたっては注意すべき点がいくつかあります。
自筆証書遺言を保管してもらうメリットは?
ここでは自筆証書遺言書保管制度の仕組みと、利用方法、利用するメリットとデメリット等について解説します。
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自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言は遺言の形式の一つで、遺言する人(遺言者)本人が自分で書いて作成する遺言書です。
遺言書の内容や日付、氏名は自書する必要があり、本人以外の人が代筆することは認められていません。
ただし2019年の法改正により、遺言書に添付する財産目録については自書でなくてもOKになりました。
また、作成した遺言書を修正したり、後から変更する場合の方法も法律で厳格に定められています。
そのため自筆証書遺言を作成する場合には、遺言者本人が遺言に関する正しい知識を持っていることがポイントになります。
2019年の「自筆証書遺言の方式緩和」による自筆証書遺言の変更点
2019年1月13日の法律改正により、自筆証書遺言の作成方法が一部変更(緩和)されました。
従来、自筆証書遺言を作成する場合は、相続財産の一つ一つまですべて自書する必要がありました。そのため、不動産などの財産が多い場合、全てを自書するのは困難でした。
しかし自筆証書遺言の方式の緩和によって、遺言書の本文に添付する財産目録(財産の一覧)については、全文を自書しなくてもいいことになりました。
財産目録だけはパソコンで作成してもいいですし、遺言者以外の人が目録を作成しても問題ありません。
また財産目録として土地の登記事項証明書や、預金通帳のコピーなどを使用することもできます。
ただし、自筆証書遺言に財産目録を添付する際は、目録1枚ごとに遺言者の署名押印が必要です。
また、自書でない記載が両面にある場合には、両面ともに署名押印をしなければなりません。
財産目録の作成方法についてくわしくはこちら
なお、自書でなくても大丈夫なのはあくまで「財産目録」についてのみであり、「誰にどの財産をどのような割合で遺すか」という財産の分け方の部分については、必ず自署しなくてはなりません。
例えば、「遺言者は、妻○○に、別紙財産目録(1)記載の財産のすべてを相続させる。」という遺言の場合、上記の文章全てを自書する必要がある(自署しなくてはいいのは添付する別紙の方だけ)ということです。
財産目録の署名押印方法
遺言の一部をパソコン等で作成できるようになったことに伴い、今後はより自分で遺言を作成する方が増えることと思いますが、自筆の遺言にはデメリットもあります。くわしくは次項で解説します。
自筆証書遺言の作成方法についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。
遺言書を自筆証書遺言で作成するメリット・デメリット
遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類あり、自筆証書遺言はその中で最も手軽に作成できる遺言書です。
自筆証書遺言のメリット・デメリットとしては下記のようなことが挙げられます。
■メリット
- 紙とペンさえあれば作成できるので、手軽に作成できる。
- 作成のコストがかからない。
- 気が変わった時に何度でも気軽に修正できる。
- 自分一人で作成できるので、内容を完全に秘密にできる。
■デメリット
- 法律の要件を満たさないと、遺言書として無効になってしまう。
- 修正や変更の方法も法定されており、方法を間違うと修正・変更が無効になってしまう。
- 内容が長くなる場合、全部を自分で書くのは大変。
- 自分一人で作成した場合、内容の間違いに気づかず、相続手続きに使えない恐れがある。
- 専門家のアドバイスを受けずに作成した場合、遺言の内容がトラブルの原因になることもある。
- 家族に遺言書の存在と保管場所を知らせておかないと、遺言書がないものとして処理されてしまう可能性がある。
- 保管方法に気を付けないと、紛失や改ざんのリスクがある。
上記のように、自筆証書遺言には手軽に作成できるというメリットがある反面、遺言書の内容や保管方法には十分に気を配る必要がありました。
しかし自筆証書遺言の保管制度の創設により、遺言書を法務局に預けられるようになったため、遺言書の保管に関するリスクは抑えられるようになりました。
2020年に施行された「自筆証書遺言書の保管制度」の内容
自筆証書遺言書の保管制度は、高齢化の進展などの社会経済情勢の変化や、相続財産の争いを防ぐ観点から、2020年7月10日に施行された遺言書保管法に基づいた制度です。
遺言書保管制度には、大きく5つのポイントがあります。
1. 遺言者本人による遺言書の保管の申請
2. 法務局による遺言書の保管及び情報管理
3. 遺言者本人による遺言書の閲覧、保管の申請の撤回
4. 遺言者死亡後の相続人等への通知、相続人等による閲覧等
5. 遺言書の検認手続きが不要
保管制度の概要
- 通知する相続人等は指定しないことも可能
- 相続人の誰かが「閲覧請求」や「遺言内容の証明書交付」をした場合、他の相続人にも通知が届くので公平性も担保されている。
遺言者本人による遺言書の保管の申請
遺言書保管制度の施行によって、自筆証書遺言を作成した遺言者は、法務局で遺言書の保管を申請することが可能になりました。
遺言書を法務局に預けるかは遺言者の任意なので、作成した遺言書を自宅で保管しても問題ありません。
保管制度を利用する際は申請手続きが必要で、申請時には所定の手数料が発生します。
法務局による遺言書の保管及び情報管理
法務局は遺言書の原本については遺言者の死亡の日から50年、遺言書の内容を記録したデータについては遺言者の死亡の日から150年保管します。
法務局に遺言書を預けることにより紛失するリスクは無くなりますし、相続人等が遺言書の内容を改ざんすることもできなくなります。
遺言者本人による遺言書の閲覧、保管の申請の撤回
遺言者は、保管されている遺言書について、いつでもその閲覧を請求することができます。また、いつでも遺言書の保管を撤回することができます。
遺言者の生存中は、遺言者以外の方は遺言書の閲覧等を行うことはできません。
遺言者死亡後の相続人等への通知、相続人等による閲覧等
遺言者が亡くなった後、法務局が死亡の事実を確認した場合は、遺言者があらかじめ指定した相続人等の代表者に対して、遺言書が保管されている事実が通知されます。
遺言者が誰にも遺言書の存在を知らせていなかった場合でも、死後に通知がされることによって、相続人等が遺言書があることを知ることができます。
また、相続人等は遺言書の内容を確認するために、遺言書の閲覧や遺言内容に関する証明書の交付を請求することが可能です。
相続人等から遺言書の閲覧請求等があった場合、他の相続人等にも通知がされるため、利害関係人に対する公平性も担保されています。
遺言書の検認手続きが不要
自筆の遺言書に従って相続手続きを行う場合、本来であれば遺言者の死後に家庭裁判所で「遺言書の検認」という手続きが必要になります。
しかし、法務局に保管された遺言書は、この検認手続きが不要とされています。
検認手続きは、必ず申立人の裁判所への出頭が必要になるなど手間のかかる手続きなので、この点は制度を利用する大きなメリットです。
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自筆証書遺言書の保管制度を利用する際の流れ
自筆証書遺言保管制度を利用する際の流れは以下の通りです。
※クリックするとそれぞれの手順についての解説に移動します。
以下、それぞれの手順についてくわしく解説します。
遺言書を作成する
まずは自筆の遺言を作成します。
遺言書は指定された形式で作成する必要があります。
本来であれば自筆の遺言書には紙の種類や様式には指定はありませんが、保管制度を利用する場合は、所定の形式で作成する必要があります。
【自筆証書遺言作成時の注意点】
※赤字が保管制度特有の注意点となります。
- 署名、押印、作成年月日の記載が必要。
- 財産目録以外はすべて自書する。
- 推定相続人には「相続させる」、推定相続人以外には「遺贈する」と記載する。
- ボールペン等消えない筆記具を使用する。
- 用紙のサイズはA4サイズ限定。
- 用紙には上下左右に十分な余白を設ける。
- 用紙の片面のみに記載する。
- 遺言書が複数枚にわたる場合は、各ページにページ番号を記載する。
- 複数枚にわたる場合でも、ホチキス等で綴じない。
作成日付は実際に遺言書を記載します。和暦でも西暦でも大丈夫ですが、「3月吉日」などの特定できない日付を記載してはいけません。
押印する印鑑は認印でも大丈夫ですが、いわゆるシャチハタなどのスタンプ印は避けてください。
気を付けたいのは、用紙の余白です。保管制度を利用する場合、既定の余白が無い遺言書は受け付けてもらえません。
下記の法務省ホームページから規程の余白を満たす用紙をダウンロードできるので、特にこだわりが無ければこちらを利用することをおすすめします。
※拡大・縮小せずにA4サイズで印刷してください。
遺言書作成時の注意点について詳しくは下記の記載例を参考にしてください。
遺言書の様式の注意事項
遺言書の様式の注意事項(03 遺言書の様式等についての注意事項|法務省より引用)
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必要書類の準備をする
自筆証書遺言書の保管申請の際には、次の書類等が必要になります。
【遺言書の保管申請の際の必要書類等】
- 遺言書(封筒は不要)
- 保管申請書
- 本籍の記載のある住民票の写し等(発行から3か月以内のもの)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど有効期限内の顔写真付きのものいずれか1点)
- 手数料(1通につき3,900円)
保管申請書は法務局の窓口で貰うこともできますが、意外に記載事項が多いので、下記の法務省ホームページからダウンロードして、出来るだけ事前に記入しておきましょう。
申請書を印刷する際は以下の点にご注意ください。
- サイズはA4(拡大・縮小は不可)
- 両面印刷は不可。
- 印刷した申請書のコピーの使用は不可。
なお、申請書には、受遺者や遺言執行者、死亡の通知の対象者等を記載する箇所がありますが、ここに記載間違いがあった場合、死亡後の手続きに支障が出る可能性があるので、できれば対象の方の住民票等を取得して正確に記載しましょう。
申請書は遺言書とは違い、本人の自署でなくても問題ないので、自身が無い方はご家族や専門家に書いてもらいましょう。
また、遺言書や申請書の原本は返却されないため(撤回手続きをすれば遺言は返却されます)、提出前に内容をよく確認して、念のためコピーを取っておきましょう。
間違ってコピーの方を提出しないよう気を付けましょう。
法務局に保管申請の予約をする
遺言書の保管を申請できる法務局は、次の3つの場所を管轄する法務局に限られます。
- 遺言者の住所地
- 遺言者の本籍地
- 遺言者が所有する不動産の所在地
上記に該当する法務局であればどこに申請しても問題ありません。
ただし、一度保管申請を行った後に再度保管申請する場合は、すでに遺言書を預けた法務局で手続きを行わなくてはなりません。
気を付けたいのは、遺言書の保管を受け付けているのは、全国にある法務局のうち本局(本庁)、支局及び一部の出張所に限られるという点です。
例えば東京都世田谷区在住(本籍、不動産所在地も世田谷区)の方が保管申請を行う場合、最寄りの東京法務局世田谷出張所ではなく、千代田区にある本局まで行かなければなりません。
管轄の法務局(遺言書保管所)については下記の法務省ホームページで確認できます。
■保管申請する際は要予約
法務局での保管申請手続きは予約制です。予約する方法は、下記の3種類用意されています。
【予約方法】
1.法務局手続案内予約サービスからオンラインで予約(24時間、365日利用可)
2.法務局への電話予約(平日8:30~17:15)※土日祝日・年末年始除く
3.法務局窓口での予約(平日8:30~17:15)※土日祝日・年末年始除く
予約の際は以下の点に気を付けてください。
【予約の際の注意点】
- 予約名は手続を行う本人の名前で行ってください。
- 当日の予約はできません。
- 予約できる期間は当日から30日先までです。
- 予約日の前々業務日の午前中まで予約することが可能です。
例)7/13(月)の予約は,7/9(木)12:00まで予約可能
なお予約がない場合でも当日の状況によっては対応してくれるかもしれませんが、予約者が優先されるため、長時間待たされた挙句当日に手続きできない可能性もあるので、必ず予約して行きましょう。
予約当日に法務局に行き、保管申請手続きを行う
予約当日になったら、必要書類を持参の上、法務局に行きます。
遺言書は封筒に入れず(封をせず)、複数枚ある場合でも、ホチキス留めはせずに持参してください。
なお、必要書類のうち遺言書や申請書は原本の返却はしてもらえませんが、住民票については、原本と一緒にコピーを提出して、原本還付を希望する旨を申し出れば返却してもらえます。
返却して欲しい場合はあらかじめコピーも準備しておきましょう。
申請の際は手数料3,900円が必要になりますが、これは収入印紙を専用の用紙に貼付して納付します。
収入印紙は法務局内の売り場で購入できるので、あらかじめ購入しておかなくても大丈夫です。
自筆証書遺言書の保管の申請は、必ず遺言者本人が窓口に出向いて行わなくてはなりません。
介助のための付添人が同伴することは認められますが、司法書士や弁護士等の法律専門職であっても代理で手続きをすることはできません。
窓口では、本人確認のために顔写真付き身分証明書の提示を求められます。
保険証など顔写真のないものや、社員証などの公的書類でないものは身分証として認められず、手続きはできないので注意しましょう。
法務局の窓口では、遺言書の形式的要件の確認(署名、押印、日付、自書)や用紙の形式(A4、余白)については確認してくれますが、遺言内容が法的に有効で問題のないものであるかの確認や、申請する方の遺言能力(意思能力)の確認は一切してくれません。
遺言によって確実に自分の意思を実現したいという方は、専門家に相談の上、作成すべきでしょう。
保管証を受け取って手続き完了
自筆証書遺言書の保管申請は登記手続きとは異なり、即日処理を原則としています。
そのため、申請が受理されるとその場で「保管証」を発行してもらえます。(一応、郵送での交付も可能なようです。)
保管証には、遺言者の氏名、出生の年月日、遺言書保管所(法務局)の名称、保管番号が記載されていますが、遺言の内容については一切記載されていません。
遺言書については、一度提出してしまうと原本は返却されず、写しの交付もされないので、後で内容を確認できるように提出する前にコピーを取っておきましょう。
保管証は、登記済権利証(登記識別情報)のように重要な書類というわけではありませんが、預けた遺言書の閲覧や撤回申請をする際、相続人が遺言書情報証明書の交付請求等をする際にあると便利です。
失くした場合は再発行できないので大切に保管してください。
ご家族の方に法務局に遺言書を預けていることを伝える際は保管証のコピーを渡すといいでしょう。
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顔写真付き身分証明書がない場合は事前にマイナンバーカードの申請を
上記のとおり、遺言書保管制度を利用する際は、本人確認のために、法務局窓口で顔写真付きの公的身分証明書の提示を求められます。
身分証として使えるのは以下のような公的書類です。
- 個人番号カード(マイナンバーカード)
- 運転免許証、
- 運転経歴証明書
- 旅券(パスポート)
- 乗員手帳
- 在留カード
- 特別永住者証明書
身分証明書はいずれも有効期限内のものを提示する必要があります。
パスポートには現住所の印字が無いので身分証明として微妙な気もするのですが、なりすまし防止の観点から、あくまで写真付きである事が重視されるようです。
健康保険証や年金手帳などの写真のない身分証明書は、保管制度を利用する際の身分証明書としては使えません。健康保険証+年金手帳の2点提出などの合わせ技でも駄目です。
また、申請書や遺言書へ実印を押印して印鑑証明書を提出しても駄目です。
運転免許証もパスポートもないという方は、事前にマイナンバーカードを取得してから手続きするしかありません。
マイナンバーカードを取得するためには、役所の窓口に行って受け取らなければならない上、申請してから交付まで1か月以上かかることもざらです。
保管制度の利用を検討している方で、顔写真付き身分証明書は何もないという方は、早めにマイナンバーカードの申請をしておきましょう。
ちなみに・・・
公正証書遺言作成の際は印鑑証明書+実印があれば、身分証明書の提示は求められないことがほとんどです。提示する場合も、必ずしも顔写真付きのものは求められません。
自筆証書遺言書保管制度を利用される方の中心層が高齢者であることを考えると、時間的猶予がないケースも想定されるため、今後は印鑑証明書+実印の場合は可とするなどの対応を検討してもらいたい所です。
遺言者自身が預けた遺言書を閲覧する際の手続き
遺言書保管制度を利用して法務局に預けた遺言書を、遺言者自身が閲覧請求する際の手続きの流れは以下のとおりです。
※クリックするとそれぞれの手順についての解説に移動します。
以下、それぞれの手順についてくわしく解説します。
■閲覧請求書を準備する
遺言書の閲覧請求書は法務局窓口で貰えるほか、下記の法務省ホームページからダウンロードすることも可能です。出来るだけ事前に記入しておきましょう。
■法務局に閲覧請求の予約を行う
遺言書の閲覧請求には、遺言書原本の閲覧と、モニターによる閲覧の2種類があります。
遺言書原本の閲覧は、遺言書の保管申請を行った法務局でのみ閲覧が可能です。
一方、モニターによる閲覧は、全国各地にある法務局で請求可能です。
モニターによる閲覧でも、遺言書の内容(遺言書保管ファイルに記録された事項)は確認できるので、保管した法務局が遠い場合は、最寄りの法務局でモニターによる閲覧請求をすればいいでしょう。
全国の法務局は下記の法務局ホームページで確認できます。
法務局での閲覧請求手続きは予約制です。予約する方法は、保管申請と同様、オンライン、電話、窓口の3種類です。
なお予約がない場合でも当日の状況によっては対応してくれるかもしれませんが、予約者が優先されるため、必ず予約して行きましょう。
■予約当日になったら、法務局に行き閲覧する
予約当日になったら、閲覧請求書、手数料及び身分証明書を持参の上、法務局に行きます。
閲覧の際は手数料として、原本の閲覧は1,700円、モニターによる閲覧は1,400円がそれぞれ必要になります。
保管申請の際と同様に収入印紙を専用の用紙に貼付して納付します。
遺言者の生前に遺言書の閲覧ができるのは、原本の閲覧、モニターによる閲覧とも遺言書本人のみです。
閲覧請求書に添付する書類はありませんが、閲覧請求をする際に窓口で本人確認されるので、保管申請の際と同様に運転免許証などの顔写真付きの身分証明書を準備してください。
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遺言者が預けた遺言書を返してもらう(撤回する)際の手続き
遺言書保管制度の利用を取りやめて、法務局に預けた遺言書を返してもらう(撤回する)際の手続きの流れは以下のとおりです。
※クリックするとそれぞれの手順についての解説に移動します。
以下、それぞれの手順についてくわしく解説します。
■撤回書を準備する
遺言書の閲覧請求書は法務局窓口で貰えるほか、下記の法務省ホームページからダウンロードすることも可能です。出来るだけ事前に記入しておきましょう。
遺言書の撤回は遺言書の保管申請を行った法務局でのみ可能です。
法務局での撤回手続きは予約制です。予約する方法は、保管申請と同様、オンライン、電話、窓口の3種類です。
なお予約がない場合でも当日の状況によっては対応してくれるかもしれませんが、予約者が優先されるため、必ず予約して行きましょう。
■予約当日に法務局に行き、撤回し、遺言書を返してもらう
予約当日になったら、撤回書及び身分証明書を持参の上、法務局に行きます。
撤回の際は、保管申請や閲覧請求のときのような手数料はかかりません。
遺言書の撤回ができるのは、遺言書本人のみです。
撤回書に添付する書類はありませんが、保管申請時以降に遺言者の氏名、住所等に変更が生じている場合は変更事項を証明する書類の提出が必要になります。
また、撤回する際に窓口で本人確認されるので、保管申請の際と同様に運転免許証などの顔写真付きの身分証明書を準備してください。
撤回が受理されたら、返却された遺言書の原本を受け取って手続き終了です。
なお、保管の撤回は、あくまで保管制度の利用を取りやめたに過ぎず、遺言の効力とは関係ありません。
保管の撤回をしても、自動的に遺言が無効になるわけではなく、遺言自体を撤回しない限り、遺言は有効のままです。
遺言書自体を撤回して無効にしたい場合は、返却された遺言書を完全に破棄するか、まったく新しい遺言書を作成しましょう。
遺言者の生前に氏名・住所等に変更があった際の手続き
自筆証書遺言の保管申請を行った以降に氏名・住所等に変更が生じた際は、法務局に変更内容を届け出る必要があります。
手続きの流れは以下のとおりです。
なお、変更の申出は、遺言者本人のほか、親権者や成年後見人等の法定代理人からも行うことができます。
※クリックするとそれぞれの手順についての解説に移動します。
3.(窓口で手続きする場合のみ)予約当日に法務局に行き、変更の届出を行う
以下、それぞれの手順についてくわしく解説します。
変更の届出が必要になるのは、保管申請書に記載した事項のうち下記の事項について変更があった場合です。
【変更の届出が必要な事項】
- 遺言者の氏名・住所・本籍等
- 受遺者の氏名・住所等(法人の場合、商号、本店、会社法人番号等)
- 遺言執行者の氏名・住所等(法人の場合、商号、本店、会社法人番号等)
- 死亡の通知の対象者の氏名・住所等(法人の場合、商号、本店、会社法人番号等)※死亡の通知を希望した場合のみ
変更の届出によって変更が可能なのは、保管申請書に記載した事項についてであり、遺言書の内容を変更することはできないので注意しましょう。
遺言書の内容を変更したい場合は、新しく遺言書を作成してください。
変更の届出の際には、次の書類が必要になります。
【変更の届出の際の必要書類】
- 変更届出書
- 変更が生じた事項を証する書面(住民票、戸籍謄本等)
- 請求人の本人確認書類のコピー
- (法定代理人が届出する場合)戸籍謄本(親権者)又は登記事項証明書(後見人等)(発行から3か月以内のもの)
なお、変更が生じたのが遺言書本人以外(受遺者や遺言執行者など)に関する事項の場合、上記のうち「変更が生じた事項を証する書面」の添付は不要です。
ただし、記載内容に誤りがあると、後の手続きに支障が出る可能性があるので、できるだけ公的書類等を取得して正確に記入しましょう。
遺言書の変更届出書は法務局窓口で貰えるほか、下記の法務省ホームページからダウンロードすることも可能です。
変更後の内容が記載された公的書類等を確認して、出来るだけ事前に記入しておきましょう。
変更の届出は全国どこの法務局でも可能です。また、郵送での届出も可能です。
法務局での変更届出手続きは予約制です。予約する方法は、保管申請と同様、オンライン、電話、窓口の3種類です。
変更の申出には、保管申請や閲覧請求のときのような手数料はかかりません。
変更届出は点なる事実の通知に過ぎず、郵送でも全く問題ないので、出来るだけ郵送で行うのがいいでしょう。
全国の法務局は下記の法務局ホームページで確認できます。
■(窓口で手続きする場合のみ)予約当日に法務局に行き、変更の届出を行う
窓口で手続きをする場合は、予約当日になったら、必要書類を持参の上、法務局に行きます。
変更の申出は、遺言者本人のほか、親権者や成年後見人等の法定代理人からも行うことができますが、窓口では、本人確認のために請求者の身分証明書の提示を求められるので忘れずに持参しましょう。
なお、変更の届出をしなかった場合でも特に罰則はありません。
しかし、住所等の変更届出を行わなければ、遺言者の死亡後に法務局から行われる死亡の通知が届かないなど、遺言者や相続人の不利益となる事態が考えられるので、死後の手続きを円滑に進めるためにも出来るだけ届出を行っておくべきです。
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遺言者の死亡後に行われる通知
遺言者保管制度を利用した遺言者が亡くなった後、一定の場合には法務局から相続人等に通知がされます。
通知には下記の2種類があります。
※クリックするとそれぞれの手順についての解説に移動します。
以下それぞれについて解説します。
■関係遺言書保管通知
こちらは、遺言者の死亡後、相続人等の関係者からの請求によって、法務局に保管されている遺言書に関して以下のいずれかがなされた場合に、法務局から請求者以外の相続人等に対して遺言書保管の事実が通知されるという制度です。
【通知の対象となる行為】
1. 遺言書の閲覧
2. 遺言書情報証明書の交付
相続人等に通知されるのは「遺言者の氏名」、「遺言者の出生の年月日」、「遺言書が保管されている遺言書保管所の名称」、「保管番号」のみであり、遺言書の内容までは通知されません。
通知を受けた方が内容を知りたい場合は、他の方から遺言書情報証明書を見せてもらうか、自分で閲覧請求や証明書の交付請求を行う必要があります。
この制度は、相続人等関係者の権利保護の趣旨もあるため、通知は受遺者、遺言執行者並びにすべての相続人に対して行われます。(閲覧請求等を行った方を除く)
遺言によって財産を一切貰わないとされている相続人に対しても通知されるため、場合によっては遺言執行や相続手続きを妨害されるリスクも念頭に入れるべきでしょう。
この通知は閲覧等があった場合には必ず行われますが、相続人等の関係者が誰も閲覧等をしなければ,仮に遺言者が死亡したとしても、実施されません。
そのため、遺言者が遺言書保管の事実を誰にも知らせずに亡くなった場合などは、遺言書が存在しないものとして相続手続きが進み、遺言者の意思が実現できない恐れがあります。
関係遺言書保管通知の見本
関係遺言書保管通知(10 通知|法務省より引用)
■死亡時の通知
上記のとおり、関係遺言書保管通知は、相続人等がアクションを起こさなければ、実施されません。
そこで関係遺言書保管通知を補うものとして創設されたのが「死亡時の通知」という制度です。(令和3年度より本格運用開始)
この制度は、遺言者が保管申請の際に希望した場合、遺言者の死後に、あらかじめ指定した対象者に対して法務局より遺言書保管の事実が通知がされるというものです。
通知を希望した場合、遺言者の氏名・生年月日・本籍等の情報が法務局から戸籍担当部局に提供されます。
その後、遺言者が亡くなり、戸籍担当部局が死亡の事実を把握した際に、法務局に死亡の事実に関する情報が提供されるという仕組みです。
死亡時の通知の対象者欄の見本
死亡時の通知の対象者欄(10 通知|法務省より引用)
この制度を利用するかは任意であり、希望する場合は保管申請書に通知の対象者を記載する必要があります。
対象者として指定できるのは、推定相続人、受遺者、遺言執行者のうち1名のみです。
この通知を利用することによって、遺言書保管の事実を確実に伝えることができるという画期的な制度ですが、利用にあたっては下記の点に注意が必要です。
●保管申請時には推定相続人等だった方が、相続開始時点では相続人ではなくなっている可能性があり(例えば、妻を対象者として指定したものの、保管申請後に離婚してしまったケースなど)、その場合、関係者以外に遺言保管の事実が通知されてしまう。
●通知の対象者が死亡や解散(法人の場合)してしまった場合、通知が届かない可能性がある。
●通知の対象者の住所や氏名等に記載間違いがあった場合、通知が届かない可能性がある。
通知を希望するのであれば、確実に死後に関係者のもとに届くようにすべきです。
保管申請時には、死亡の通知の対象者の住所氏名を証明する公的書類(住民票など)は添付書類ではありませんが、できるだけそれらを確認して、正確に記載するようにしましょう。
また,保管の申請時以降、対象者の住所や身分関係等に変更があった場合は、忘れずに変更の届出を行いましょう。
死亡時の通知の見本
死亡時の通知(10 通知|法務省より引用)
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遺言者の死亡後の相続人等による手続き
これまで述べた通り、法務局に保管されている遺言者の内容は、遺言者の生存中は本人以外は誰も知ることができません。
しかし、遺言者の死亡後は遺言書の内容に沿って相続手続きを行い、遺言者の意思を実現する必要があります。
そこで、相続人等は相続開始後に、法務局に対して以下の請求を行うことができます。
1. 遺言書情報証明書の交付請求
2. 遺言書の閲覧の請求
3. 遺言書保管事実証明書の交付請求
4. 申請書等の閲覧の請求
上記のうち、4は遺言書の内容には関係ないのであまり行う事はないと思います。
また、2の閲覧請求は、相続開始前に遺言者本人によって行う閲覧請求と同様の手続きですが、こちらは戸籍等の必要書類が多い上、閲覧をするのみで遺言書の内容を記載した書面の交付を受けることはできないので、やはり利用機会は少ないでしょう。
実務上は、相続人等が「遺言書の保管に関する通知」などで遺言書保管の事実を知っている場合は1の「遺言書情報証明書の交付請求」を、そもそも遺言書があるかどうか確かめたいという場合は3の「遺言書保管事実証明書の交付請求」を行うことになるでしょう。
遺言書情報証明書の交付請求
遺言書情報証明書は、遺言書の内容等が記載された証明書です。
下記の法務省ホームページに見本が掲載されています。
遺言書情報証明書の交付を請求できるのは、相続人、受遺者、遺言執行者、及びこれらの方の親権者や成年後見人等の法定代理人です。手続きの流れは以下のとおりです。
※クリックするとそれぞれの手順についての解説に移動します。
3.(窓口で手続きする場合のみ)予約当日に法務局に行き、交付請求を行う
以下、それぞれの手順についてくわしく解説します。
Step1
必要書類を準備する
遺言書情報証明書の交付請求の際には、次の書類等が必要になります。
【遺言書情報証明書の交付請求の際の必要書類等】
- 交付請求書
- 遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本等
- 相続人全員の戸籍謄本等
- 相続人全員の住民票又は戸籍の附票(発行から3か月以内のもの)
- (受遺者、遺言執行者が請求する場合)請求人の住民票又は戸籍の附票
- (請求人が法人の場合)法人の代表者事項証明書(発行から3か月以内のもの)
- (法定代理人が請求する場合)戸籍謄本(親権者)又は登記事項証明書(後見人等)(発行から3か月以内のもの)
- 手数料(1通につき1,400円)
- (郵送請求の場合)返信用封筒(切手を貼付したもの)
必要書類のうち戸籍謄本等については、法務局発行の「法定相続情報一覧図の写し」を提出する場合は添付不要です。(一覧図に相続人の住所が記載されている場合は住民票等も不要)
また、法務局から「遺言書の保管に関する通知」を受け取った方が請求する場合、上記のうち、2、3、4の書類は不要です。
交付請求書は法務局窓口で貰えるほか、下記の法務省ホームページからダウンロードすることも可能です。
Step2
法務局に交付請求の予約を行う又は郵送で交付請求を行う
遺言書情報証明書の交付請求は全国どこの法務局でも可能です。また、郵送での請求も可能です。
法務局での交付請求手続きは予約制です。予約する方法は、オンライン、電話、窓口の3種類です。
交付請求の手数料は、証明書1通につき1,400円です。専用の用紙に手数料分の収入印紙を貼付して納付します。
窓口で請求する場合は、法務局で収入印紙を購入すればいいですが、郵送の場合は事前に郵便局等で購入して、忘れずに貼付しましょう。
また、郵送で請求する場合は、切手を貼付した返信用封筒も忘れずに同封しましょう。
窓口で請求する場合、顔写真付き身分証明書の提示を求められるなど、手間が多いので、急ぎの事情が無ければ、郵送で行うのがいいでしょう。
なお、必要書類として提出した戸籍謄本等については、原本と一緒にコピーを提出して、原本還付を希望する旨を申し出れば返却してもらえます。
返却して欲しい場合はあらかじめコピーも準備しておきましょう。
交付請求書の作成や請求に必要な戸籍謄本等の取得は司法書士等に依頼することもできます。
相続人が多いなど、ご自身での手続きが負担となる場合は、その後の相続手続きも含めて専門家への依頼を検討してください。
全国の法務局は下記の法務局ホームページで確認できます。
Step3
(窓口で手続きする場合のみ)予約当日に法務局に行き、交付請求を行う
窓口で手続きをする場合は、予約当日になったら、必要書類を持参の上、法務局に行きます。
窓口では、本人確認のために請求する方の身分証明書の提示を求められるので、忘れずに持参しましょう。
Step4
郵送又は窓口で証明書を受け取る
提出書類に不備が無ければ、窓口または郵送で遺言書情報証明書を受け取って申請人の手続きは完了となります。
証明書には、法務局で遺言書が保管されていたという情報のほか、遺言書の内容(遺言書原本の画像情報)が記載されているので、これをもって金融機関での預貯金等の解約・名義変更や、不動産の登記申請手続き等の相続手続きを行うことができます。
証明書は必要な分だけ発行してもらえるので、手続が必要な金融機関等が多い場合は複数枚取得しておくといでしょう。
Step5
法務局からその他の相続人等への通知が行われる
請求人が行う手続きではありませんが、先に述べた通り、相続人等に対して遺言書情報証明書が交付された場合、法務局から、その他の相続人等に対して、遺言書を保管している旨が通知されます。
通知は、遺言によって財産を貰わない方を含むすべての相続人に対して行われます。
相続人等に通知されるのは「遺言者の氏名」、「遺言者の出生の年月日」、「遺言書が保管されている遺言書保管所の名称」、「保管番号」のみであり、遺言書の内容までは通知されません。
通知を受けた方が内容を知りたい場合は、他の方から遺言書情報証明書を見せてもらうか、自分で閲覧請求や証明書の交付請求を行う必要があります。
遺言書保管事実証明書の交付請求
遺言書保管事実証明書は、名前どおり、遺言書が法務局に保管されている(又は保管されていない)という事実が記載された書面です。
法務省ホームページに見本があるので、参考までに掲載します。
遺言書保管事実証明書の見本
遺言書保管事実証明書の見本(遺言書が保管されている場合)(
遺言書保管事実証明書の見本(遺言書が保管されていない場合)(05 証明書について|法務省より引用)
より引用)
遺言書保管事実証明書の見本(遺言書が保管されていない場合)(05 証明書について|法務省より引用)
上記の見本を見てもわかるとおり、証明書には、遺言書がある場合でも遺言の内容については一切記載されません。内容を知りたい場合は、別途「遺言書情報証明書」を請求する必要があります。
「遺言書情報証明書」ではなく、あえてこの証明書を請求するケースとしては、遺言書があるかどうか(保管されているか)わからないので、とりあえず、法務局での保管の有無を確認したいというケースが想定されます。
遺言書保管事実証明書の交付請求は誰でも可能です。
また、戸籍謄本等の必要書類の収集に係る労力も「遺言書情報証明書」の請求と比べると少なく済みます。手続きのハードルが低いので、例え調査の結果遺言書がない事が判明しても、「せっかく手間をかけたのに…」にならずに済むでしょう。
亡くなった方が生前遺言を作成したと言っていたが、どこにも見当たらない場合は、公証役場での遺言の検索に加えて、こちらの証明書の請求を行えば判明するかもしれません。
遺言書保管事実証明書の交付請求は、遺言書情報証明書の交付請求とほぼ同様です。以下、異なる点のみ解説します。
■必要書類
遺言書保管事実証明書の交付請求の際には、次の書類等が必要になります。
【遺言書保管事実証明書の交付請求の際の必要書類等】
- 交付請求書
- 遺言者の死亡の事実を確認できる戸籍(除籍)謄本
- 請求人の住民票
- (相続人が請求する場合)遺言者の相続人であることが確認できる戸籍謄本
- (請求人が法人の場合)法人の代表者事項証明書(発行から3か月以内のもの)
- (法定代理人が請求する場合)戸籍謄本(親権者)又は登記事項証明書(後見人等)(発行から3か月以内のもの)
- 手数料(1通につき800円)
- (郵送請求の場合)返信用封筒(切手を貼付したもの)
交付請求書は法務局窓口のほか、下記の法務省ホームページから取得可能です。
■証明書の内容
遺言書が保管されている場合、証明書には、遺言書が保管されている法務局の名称や保管番号等が記載されます。
遺言書が保管されていることがわかったら、「遺言書情報証明書」の交付請求を行って、遺言書の内容を確認しましょう。
一方、遺言書が保管されていない場合は、保管されていない旨が記載された証明書が交付されます。
生前に故人が遺言書を遺したと言っていた場合は、公正証書遺言を作成していた可能性もあるので、念のため公証役場で遺言の検索を行っておきましょう。
■法務局からその他の相続人等への通知は行われない
「遺言書情報証明書」とは異なり、相続人等に対して「遺言書保管事実証明書」が交付されても、法務局からその他の相続人等に対して通知が行われることはありません。
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自筆証書遺言書保管制度を利用した場合のメリット
自筆証書遺言の保管制度を利用した場合のメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 自分一人で完結できるので、気楽に利用できる。
- 遺言の内容さえ決まっていればそれほど手間がかからない。
- 公正証書遺言と比べて作成のコストがかからない。
- 預ける際に遺言書の形式的要件はチェックしてくれるので、要件不備で無効になる心配がない。
- 法務局で長期間保管してくれるので、紛失や改ざんの恐れが無い。
- 亡くなった後に通知をしてくれるので、相続人等が遺言の存在を認識しやすい。
- 検認手続きが不要。
- 相続開始後に相続人等から遺言を確認することが容易。
一人で作成して持っていくだけなので、気軽かつコストがかからないという点、法務局で長期間保管してくれるので紛失等の心配がない、検認が不要なため、亡くなった後の手続き楽になるという点は大きなメリットと言えるでしょう。
自筆証書遺言書保管制度を利用した場合のデメリット
上記のとおり、自筆証書遺言書保管制度を利用するメリットは色々とありますが、逆にデメリットはあるのでしょうか?
もちろん、遺言を作成しない場合や、自分一人で遺言を作成してそのまま自身で保管する場合と比べると、メリットはあれどほぼデメリットはないと言えます。
しかし、公正証書で遺言を作成する場合や、司法書士等の専門家に相談の上で作成する場合と比べると、大きなデメリット(というよりリスク)となりそうな点がいくつかあります。
具体的には下記のような点です。
- 用紙や余白の指定が厳格で、保管申請書の記入事項も多いため、思ったより手間がかかかる
- 必ず本人が法務局に出向かなければならない
- 遺言者や関係者の情報に変更があった場合の届出が面倒
- 遺言を書いたときの意思能力が担保されるわけではない
- 遺言の内容についてのチェックやアドバイスは全くしてもらえない
- 検認は不要だが、相続関係を証明する全ての戸籍及び住民票等を集めなければならないので、結局手間はかかる
以下、それぞれについて解説します。
用紙や余白の指定が厳格で、保管申請書の記入事項も多いため、思ったより手間がかかかる
これは、実際に制度の利用をサポートさせていただいて感じた点ですが、遺言書を保管制度を利用する場合、遺言を書く用紙の大きさや余白の大きさが厳格に定められているので、形式不備で書き直しになってしまう方がとても多いです。
また、遺言書本文は全文の自署が必要な上、一緒に提出する保管申請書の方も意外に記載事項が多いため、単純に書くのが大変です。
最近は字を書く機会も少ないので、いざ取り掛かってみると予想以上に大変だったという声も聞きます。
特に制度利用者の中心となるご高齢の方にとっては、結構な労力が必要な作業かと思います。
必ず本人が法務局に出向かなければならない
遺言書保管制度では、代理人による保管申請は認められていないため、必ず一度は本人が法務局まで行かなくてはなりません。
また、記載等の不備がありその場で訂正ができなかった場合は、もう一度出直しとなってしまいます。
お元気な方であれば問題ないでしょうが、健康上の理由等で外出するのが難しい方は制度の利用はあきらめるしかありません。
公正証書で遺言を作成する場合は、公証人に出張してもらうことも可能なので、コストは多少かかりますが、そちらを利用しましょう。
遺言者や関係者の情報に変更があった場合の届出が面倒
遺言書保管制度では、遺言者の氏名や住所、本籍などに変更があった場合や、受遺者や遺言執行者、死亡の通知の対象者の住所等に変更があった場合は、変更の届出をしなければならないとされています。
変更のたびに届け出るのは面倒ですし、そもそも受遺者等の住所に変更があっても把握していないケースも多いと思います。
届出をしなくても罰則はないのですが、法務局が把握している内容と実際の情報に違いがあると、相続開始後の死亡通知等が届かない可能性があります。
せっかく制度を利用しても、期待した効果が得られない可能性があるという点ではデメリット言えるかもしれません。
遺言を書いたときの意思能力が担保されるわけではない
法務局では、遺言書を提出する際に窓口に来た方が本人であるかの確認は行いますが、遺言を書いたのが本当に本人かの確認や、本人が書いたとして、本当に自分自身の意思で書いたかの確認までは行いません。
例えば、誰かが本人を言いくるめて、自分に都合のいい内容の遺言を書かせていたとしても、後でそれを証明するのはとても手間がかかります。
公正証書遺言の場合は公証人が本人の意思確認を行い、さらに利害関係のない証人二人の立ち合いが必須なので、相続人同士の関係が良く無い方などは、余計なトラブルを避けるためにも公正証書で作成した方がいいでしょう。
遺言の内容についてのチェックやアドバイスは全くしてもらえない
法務局では、遺言書の法的要件や用紙の大きさや余白が規定を満たしているかのチェックはしてくれますが、遺言書の具体的な内容についてはチェックもアドバイスも全くしてくれません。
当然のことですが、この遺言内容で将来相続人同士でトラブルが起きないか、あるいは相続手続きの際に支障が無いかなどの質問には一切答えてくれません。
ご家族に余計な負担をかけたくないという方は、相続に強い専門家のアドバイスやチェックを受けて遺言書を作成することを強くおすすめします。
検認は不要だが、相続関係を証明する全ての戸籍及び住民票等を集めなければならないので、結局手間はかかる
遺言書保管制度を利用した場合、検認手続きは不要なので、相続開始後に裁判所に戸籍を提出し、期日に裁判所まで出向く、という手間は無くなります。
しかし、相続開始後に、相続人や受遺者の方が遺言書の内容を確認したい場合、法務局に相続関係を証明する全ての戸籍謄本や、相続人全員の住民票などを提出しなくてはなりません。(くわしくは「遺言者の死亡後の相続人等による手続き」をご参照下さい。)
ちなみに、保管制度を利用しない自筆証書遺言で必要な検認手続きでは、相続関係を証明するすべての戸籍謄本の提出は必要になりますが、相続人全員の住民票等の提出までは求められません。
※申立書に相続人全員の住所を記載しますが、それを証明する書類の添付は求められないということです。
つまり、検認手続きと比較すると、裁判所への出頭が不要という点は楽になりますが、書類収集の手間は変わらないどころか、むしろ余計手間がかかるという事になります。
相続人が兄弟姉妹や甥姪になる場合は、必要な戸籍の数も膨大になるので、相続人の方にとってかなりの負担となります。
まだ始まったばかりの制度で、預けた後に亡くなった事例も少ないでしょうから、この点について言及されることは少ないのですが、検認が不要と言っても、相続関係によっては死後の手続きでかなり手間がかかるという点は、とても重要なポイントです。
公正証書遺言であればこのような手間は無いので、遺された方に負担をかけたくないという方は、公正証書での遺言作成や、遺言執行者として専門家を指定する、等の方法も検討してください。
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自筆証書遺言書保管制度についてのよくある質問
ここからは自筆証書遺言書保管制度についてのご相談の際によく受ける質問を、Q&A形式で解説します。
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自筆証書遺言書の保管制度に関するお悩み・ご相談は相続の専門家へ!
自筆証書遺言書の保管制度が創設されたことにより、今後はご自身で遺言を作成される方も増えるかと思います。
しかし、保管制度はまだまだ始まったばかりの制度であり、メリットもあるものの、注意すべき点もたくさんあります。
特に、遺言書の内容について一切確認してくれないというのは、今後の運用でも変わることはないと思うので、確実に自分の意思を実現したいのであれば、相続の専門家に相談した上で、保管制度を利用すべきです。
あるいは公正証書で遺言を作成することも検討すべきでしょう。
せっかく遺言を遺しても、内容に不備があったせいで、相続人が揉めてしまっては意味がありません。本当にご家族のことを思うのであれば、一度専門家に相談した上で、遺言書を作成することを強くおすすめします。
自筆証書遺言保管制度の利用を含む遺言作成についてのご相談は当事務所で承ります。ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。
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