【遺留分放棄のすべて】遺留分放棄は難しい?というのは誤解です
遺留分の放棄は難しい?
献身的に介護をしてくれた方、事業の後継者、障がいのある子供など、特定の方に多くの遺産をのこしたい場合、遺言書を遺すことで希望は叶えられます。
さらに死後に揉め事が一切起きないようにしたいという場合は、生前に他の相続人に「遺留分の放棄」をしてもらうという方法があります。
遺留分を放棄させることは出来る?
ところが、遺留分放棄について調べても、実際に遺留分放棄が認められた、認められなかったという話や、認められるためのコツなどはほとんど見かけません。
むしろ「遺留分の放棄は簡単には認められない」という情報を見かけることが多く、「遺留分放棄は難しい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際のところ、「遺留分放棄は難しい≒なかなか認められない」ということはなく、むしろ要件さえ満たしていれば認められるものです。
本記事では、相続実務に精通した専門家が、実際の経験をもとに、遺留分放棄について、手続きの方法、許可の基準、許可されるためのポイントなどを詳しく解説します。
これを読めば、自分のケースで遺留分放棄が可能かどうかがわかり、許可の可能性の高い申立てを行うことができます。
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遺留分放棄とは
遺留分とは、相続人に最低限保証されている権利(取り分)のことです。
遺言を作成することで、特定の方に多くの財産を遺すことができますが、他の方の貰える財産が遺留分を下回る場合、財産を多く貰った方に対して不足額を請求することができます。(「遺留分侵害額請求」と言います。)
自分の死後に相続人同士が争うことを避けたい場合、絶対に遺留分を請求させたくない場合、生前に「遺留分の放棄」をしてもらうことで、希望を実現できます。
生前の遺留分放棄は、単に放棄をするという意思表示だけでは足りず、家庭裁判所に申立てをして「遺留分放棄の許可」を得る必要があります。
本当は放棄したくないのに無理やり放棄させられるという事態を避けるため、面倒な手続きが必要になっているのです。
遺留分放棄が許可されるためには、いくつかの基準をクリアする必要があり、放棄の意思が真意であるかの確認も行われます。
以下では、遺留分放棄の許可申立て手続きについて、許可されるための条件や、許可されやすい申立てのポイントについてくわしく解説します。
なお、今回解説するのは“生前に“遺留分の放棄をする場合の話です。死後に遺留分放棄をする場合は、受遺者(相続人)に対して放棄する旨の意思表示をするか、相続開始を知ってから1年以内に遺留分の請求をしなければ大丈夫です。
また、相続人が亡くなった方の兄弟姉妹(甥姪)にあたる場合、遺留分はありません。この場合は遺留分放棄の手続きは必要なく、単に遺言を書いておけば大丈夫です。
遺留分や遺留分の請求についてくわしくはこちらの記事をご参照下さい。
遺留分放棄は簡単には認められない?
遺留分の放棄について本やインターネットで調べると、手続きの概要についての解説はたくさん出てきますが、実際に遺留分放棄が認められた、認められなかったという話はほとんど見かけません。
むしろ「遺留分の放棄は簡単には認められない」という情報を見かけることが多く、自分たちのケースでは無理だろうと諦める方も多いのではないでしょうか。
確かに、生前に遺留分を放棄するためには、一般の方に馴染みがない家庭裁判所での手続きが必要なため、少々ハードルが高く感じられるのは当然でしょう。
しかし、インターネット等での「遺留分の放棄は簡単には認められない」という情報は、「裁判所での手続きが面倒(資料集めや書類の作成、裁判所への出頭が大変)」であるという事実や、放棄の前提となる「見返りとしての贈与が難しいケースがある」という実情を、「申立てをしても裁判所は簡単には許可してくれない」と誤解し、誤ったイメージで伝えている可能性があります。
実際のところ、遺留分放棄の許可は申立てをしても許可されることがほとんどないというものではなく、むしろ要件さえ満たしていれば認められるものです。
このことは次に示すデータでも明らかです。
申立てされた場合、認められることがほとんど
下表は、平成28年度から令和2年度までの5年間の、遺留分放棄許可申立ての新規受付事件の件数(新受)と、終了事件の件数(既済)をまとめたものです。
新規事件の数と、「認容」の数(遺留分放棄が許可された数という事)を比べると、いずれの年も90%以上の高い割合となっており、申立てのほとんどが許可されていることがわかります。
【遺留分の放棄の許可件数】
司法統計より抜粋
※終了事件(既済)の件数には、前年度以前に申立てされたものも含まれるため、新規受付事件の件数とは一致しません。
もっとも、遺留分放棄の許可申立ては、司法書士や弁護士などの専門家が関与することが多く、そもそも許可される見込みがないケースでは、専門家の判断によって申立て自体をしないことが多いので、申立て件数に対する許可件数の割合が多くなっているものと思われます。
裏を返せば、専門家が「このケースは許可されるだろう」と判断した上で申立てされたケースでは、そのほとんどが許可されているものと考えられます。
実際に当事務所がお手伝いをした事例でも、これまでに申立てをしたすべてのケースで遺留分放棄が許可されています。(申立てをすれば必ず許可されるというわけではありませんのでご注意ください。)
当事務所がお手伝いした遺留分放棄の事例についてはこちらをご覧ください。
申立てのハードルが高い理由は「本人の自由意志」と「放棄の見返り」にある
遺留分放棄の許可は、申立てをすれば認められることがほとんどと言っても、何でもかんでも認められるというわけではありません。
実際には許可のための要件(許可基準、次項で詳しく解説します。)があり、要件を一つでも満たさなければ、原則として許可されることはありません。
許可基準の中でも「本人の自由意志」と「放棄の見返り」を満たすためには、場合によっては本人を説得したり、多額の財産を贈与したりする必要があるので、あきらめる方も多いです。
結局のところ「遺留分の生前放棄は簡単には認められない」というのは、「許可のための要件を満たすハードルが高い」というのが正しく、一方で「要件さえ満たせば、遺留分放棄は原則として認められる」というのも事実です。
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遺留分放棄の許可基準は3つ
遺留分放棄に必要な3つの要件
遺留分放棄が認められるための要件(許可基準)は以下の3つです。
1.放棄が本人の自由な意思によるものであること(本人の自由意志)
2.放棄の理由に合理性と必要性があること(放棄理由の合理性・必要性)
3.放棄に見合うだけの見返りがあること(放棄の代償)
許可基準は3つ全てを満たす必要があり、一つでも満たしていない場合は、原則として遺留分放棄は認められません。
以下、それぞれについてくわしく解説します。
放棄が本人の自由な意思によるものであること
遺留分放棄の要件の中でも、大前提であり、最も重要なのが、「放棄が本人の自由な意思によるもの」であることです。
勘違いしやすいのですが、遺留分放棄の申立てを行うのは放棄する予定の相続人本人です。
財産をのこす側(被相続人)ではありません。
実際には、「特定の方に財産を多く遺したい」という希望を実現するため、財産を遺す側(ほとんどが親)から相談を受け、手続きを行うことが多いのですが、申立ての主体はあくまで相続人(ほとんどが子)であり、本人にその気がなければ手続きはできません。
本人が乗り気でない場合は、事情を説明し、放棄の見返りに金銭等を贈与することを約束するなどして説得する必要があります。また、対象の相続人がすでに十分な額の贈与を受けている場合でも放棄を強制することはできません。
無理やり放棄させようと、強引に手続きを進めても、手続きの中で必ず裁判所から本人の意思の確認が行われるので、そこで「放棄するつもりはない」と答えられてしまうと、それだけで放棄は認められません。
また、仮に強制的にさせたことがばれずに放棄が認められたとしても、後で取消しの対象となる可能性があります。
相続人に遺留分の放棄をしてもらいたいと考えている方は、あくまで放棄をする本人が行うものという事を頭に入れ、間違いなく放棄してもらえるように理解を得ておくことが重要です。
放棄の理由に合理性と必要性があること
遺留分放棄は、本人の意思さえあればどのような場合でも認められるというわけではなく、「放棄する理由に合理性と必要性があること」を求められます。
「合理性と必要性」については、画一的な基準はありませんが、少なくとも「そういう事情があるなら、放棄するのももっともだよね」と誰もが思うような理由であれば大丈夫です。
放棄が認められやすい“理由”として、具体的には以下のようなものが挙げられます。
■遺留分放棄が認められやすい理由の例
・被相続人が経営している事業に影響が生じないように、後継者である子供に、株式や不動産などの事業に関連する財産をすべて相続してもらいたい。
・先祖代々引き継いできた不動産を、分散させることなく未来の世代へ引き継いでもらいたい。
・自分はこれまでに十分な額の援助をしてもらっているので相続するつもりはない。
・相続人の中に前妻の子と後妻の子がいるので、将来遺産を巡るトラブルに巻き込まれないためにあらかじめ遺留分を放棄しておきたい。
・自分は遠方にいるため、親の面倒を看ることができないので、親と同居して献身的に介護をしてくれているきょうだいにすべての財産を相続してもらいたい。
一方、好き嫌いなど感情的な理由や、放棄と引き換えに結婚を認めてもらいたい等の理由では、放棄は認められません。
■遺留分放棄が認められない理由の例
・被相続人と仲が悪いので遺留分放棄をしたい。
・両親に結婚を認めてもらうための条件として遺留分放棄を求められた。
遺留分放棄の理由は、裁判所に対してポイントを抑えて説明することが大切なので、後ほど詳しく解説します。
放棄に見合うだけの見返りがあること
遺留分放棄が認められるためには、「放棄に見合うだけの“見返り”(代償)を、放棄する方が貰うこと」も求められます。
見返りは金銭に限らず、不動産や株式でも大丈夫ですが、原則として放棄する方の遺留分に相当する経済的価値のあるものでなければなりません。
これまで手厚く教育や世話をしてきたことや、思い出などは経済的価値に換算できないので見返りとは認められません。
遺留分を計算するにあたって基準となるのは申立て時点の被相続人の財産評価額です。
見返りは過去に贈与したものでもよく、すでに十分な額の贈与を受けている場合は、この要件を満たすために改めて贈与をする必要はありません。
遺留分計算の際には、相続人への一定の生前贈与(特別受益と言います。)は、遺留分を算定するための財産に含めますが、対象となるのは原則として過去10年分の贈与のみです。
しかし、遺留分放棄の代償としての贈与については、時期の制限はなく、どんなに昔のものでも大丈夫です。ただし、あまりに昔のものについては記憶違い等もあり得るので、当事者同士で認識の食い違いがないかしっかりと確認した方がいいでしょう。
過去に十分な額の贈与を受けていない場合は、遺留分放棄してもらうにあたり新たに贈与をする必要があります。
新たに贈与をする場合は、万が一遺留分放棄が認められなかった場合に備えて、贈与契約書を作成し、保管しておきましょう。贈与を受けた方は翌年の贈与税申告も忘れずに行いましょう。
遺留分放棄をすることを条件として贈与を行う場合は、申立ての前、少なくとも申立てと同時に贈与しておく方がいいでしょう。
申立て時点で、「将来贈与を行うという約束をしている」のみでは、確実に見返りを貰える保証がないという事で、却下される(不許可になる)可能性が高くなるためです。
なお、放棄の代償については絶対に必要というわけではなく、中には相当額の見返りがなくても放棄が許可された事例もあります。
しかし、それはあくまで個別の事情を考慮した上での例外的なケースであり、通常は見返りの有無は非常に重要な判断材料になります。
そもそも相応の見返りがないにもかかわらず、放棄に応じてくれる人は少ないでしょうから、「遺留分放棄をするにあたっては、遺留分相当額の見返りを与えることが必要」と考えるべきでしょう。
ちなみに・・・
遺留分放棄をしてもらいたい(ほとんどが親が子に)と考えている方から相談を受けた際には、この「放棄の代償」という要件がネックになることが多いです。
「財産を渡したくないから遺留分放棄をしてもらいたいのに、結局放棄のために財産を渡すなら意味がない」と考える方が多いのですが、確かに事業承継や家族関係が複雑等の事情が無ければ、「遺言を作成しておき、遺留分の請求をされたら支払えばいい」という考えの方がシンプルではあります。
(実際には遺留分の請求がされた場合、多くは弁護士が関与することになり、泥沼化することも多いのですが…)
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許可のポイントは放棄の理由の“合理性と必要性”
上記のとおり、遺留分放棄が認められるためには3つの許可基準を満たす必要があります。
ただ、このうち「本人の自由意志」と「放棄の代償」については、有るか無いかという話なので、判断に悩むことは少ないと思います。
実際の所、検討した結果「本人の自由意志」と「放棄の代償」の要件を満たすことが難しいケースも多く、その場合は申立て自体をあきらめることがほとんどです。
一方、2つの要件を満たしている場合、残る「放棄理由の合理性・必要性」さえ満たせばいいという事になりますが、一般の方にとっては 放棄の理由に合理性・必要性があることを裁判所に伝えるのが難しいかもしれません。
実際に我々専門家が遺留分の放棄のお手伝いをする場合も、関係者からヒアリングをし、「放棄理由の合理性・必要性」について裁判所に納得してもらえるようなストーリーを作るというのが、申立ての段階では最も重要な作業になります。
もちろん認めてもらうために噓の理由を述べることは許されないので、事実に沿った上で、情報の取捨選択を行い、「そういう事情があるなら、放棄するのももっともだよね」と思ってもらえるような説明をする、という事がポイントになります。
上申書(事情説明書)を提出して丁寧に説明する
放棄の理由については申立ての際に提出する申立書の中の「申立ての理由」欄に記載することになります。
申立ての理由 記入例(裁判所HPより引用)
裁判所HPの記載例ではシンプルにまとめた理由が記載されており、実際にこの程度の記載でも十分なケースもあります。
ただし、場合によっては本人が裁判所に呼び出され、詳しく事情を聞かれることもあります。
その際、人によっては緊張して上手く説明できないかもしれません。答弁や尋問ではないので必ずしも上手く答える必要はないのですが、そうは言っても不慣れな一般の方にとっては不安が残るでしょう。
そこで、当事務所では遺留分放棄の理由については、申立書とは別に「上申書(事情説明書)」を作成し、申立て時に提出しています。
上申書は必ず必要なわけではありませんが、裁判所に放棄の理由を丁寧に伝えるため、また、申立人(放棄をする方)本人にとっても放棄の理由を整理して理解しておくために役立ちます。
また、上申書を提出した結果、裁判所からの照会は書面による回答のみで済み、裁判官による面接が省略されたケースも多くあります。(書面による照会は必ず行われ、省略されることはありません。)
次項では、実際の上申書の一部を抜粋したものを掲載するので、参考になさって下さい。
許可されやすい上申書(事情説明書)の例
下図は、実際に裁判所に提出した上申書の一部を抜粋したものです。
実際には、ケースに応じてもっと詳細に事情を記載することになりますが、「申立ての理由」を記載する際などに参考になさってください。
上申書の見本
なお、贈与の金額については必ずしも記載する必要はありませんが、後日裁判所からの照会で確認される可能性が高いです。
金額を記載しても、それを裏付ける資料の提出は基本的に求められません。(もちろん虚偽の金額を記載してはいけません。)
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遺留分放棄の許可申立ての手続き方法・必要書類・注意点等
生前に遺留分を放棄するためには、家庭裁判所への申立てが必要になります。
遺留分放棄の許可申立ての手続きの概要は以下のとおりとなります。
■申立人
遺留分を有する相続人
※財産をのこす側ではなく、貰う側です。
■申立ての時期
相続開始前
※被相続人の生存中という事です。
■申立先
被相続人の住所地の家庭裁判所
※申立人の住所地ではありません。
管轄裁判所はこちらで確認できます。
■申立てに必要な費用
・申立手数料 800円
※申立書に収入印紙を貼付して納めます。
・連絡用郵便切手 数百円~
※家庭裁判所によって異なります。詳しくは管轄裁判所にお尋ね下さい。
■申立てに必要な書類
・申立書(裁判所のHPからダウンロードできます。)
・財産目録(裁判所のHPからダウンロードできます。任意の形式でも構いません。)
・被相続人の戸籍謄本(発行後3か月以内のもの)
・申立人の戸籍謄本(発行後3か月以内のもの)
・(必要に応じて)上申書
※上申書の提出は必須ではありませんが、特に込み入った事情がある場合は「申立の理由(事情)」を整理するために作成・提出することをおすすめします。
※同じ書類は1通で足ります。
※事情によってはこのほかの書類が必要になることもあります。
申立書及び記入例は下記の裁判所ホームページからダウンロードできます。
■申立ての流れ
※クリックするとそれぞれの手順についての解説に移動します。
1.申立てに必要な戸籍謄本等の書類を収集し、財産目録等を作成する
3.家庭裁判所より申立人に(場合によって被相続人にも)「照会書(回答書)」が届く
4.場合によっては裁判官による申立人本人の面接(審問)が行われる
5.家庭裁判所による審議が行われ、許可(不許可)の審判がされる
以下、それぞれの手順についてくわしく解説します。
申立てに必要な戸籍謄本等の書類を収集し、財産目録等を作成する
まずは申立てに必要な戸籍謄本等を収集します。
同じ書類は1通で足りるので、被相続人(財産をのこす人)と申立人が同一戸籍の場合は1通のみ提出すれば大丈夫です。
代襲相続人(孫など)が申立てをする場合は、自分が相続人である事を証明するために親の死亡の記載のある戸籍も必要になります。
戸籍謄本等については、家庭裁判所での受付時点で発行後3か月以内のものが原則として必要なので注意しましょう。
申立書の記入は下図の記入例を参考にしてください。
遺留分放棄申立書 記入例①(裁判所HPより引用)
遺留分放棄申立書 記入例②(裁判所HPより引用)
財産目録は裁判所のホームページからダウンロードもできますが、任意の形式でも構いません。
裁判所の書式では、現金、預貯金については金額を記載する欄があるものの、不動産や株式等の評価額については記載する欄が無いので、必ずしも記載する必要はありません。
また、不動産や預貯金の存在を裏付ける資料(登記事項証明書や預金通帳のコピーなど)の提出も原則として不要です。
参考までに当事務所が、遺留分放棄許可申立ての際に実際に使用している財産目録(Excelファイル)を掲載しますので、必要に応じて編集してご利用ください。
財産目録のダウンロードはこちら
管轄の家庭裁判所に申立ての書類を提出する
全ての書類が揃ったら家庭裁判所に提出します。
裁判所の窓口に持ち込んで直接提出することも可能ですが、郵送で提出するのが便利でしょう。
郵送方法に指定はありませんが、戸籍等の重要書類を送るため、書留など対面での受取が必要なものがいいでしょう。おすすめはレターパックプラス(通称赤レタパ)です。
家庭裁判所より申立人に(場合によって被相続人にも)「照会書(回答書)」が届く
裁判所によって運用が多少異なりますが、通常は申立書の提出から2~4週間後(時期によってはそれ以上時間がかかる場合もあります)に、裁判所から申立人宛てに下図のような「照会書(回答書)」が届きます。
照会書の見本
照会書では生前贈与の内容、被相続人の財産、放棄が自分の意思によるものか、などが聞かれます。
一つ一つの質問は難しいものではありませんが、質問の意味をよく理解して正確に回答しましょう。
当事務所でサポートさせていただいた場合は、申立て時に提出した上申書の控えをお渡ししますので、その内容に沿って回答すれば問題ありません。
また、必要に応じて質問の意味についてわかりやすく説明し、正確に回答できるようサポートさせていただきます。
照会書に回答を記入したら、照会書に記載されている期限内に返送しましょう。
なお、放棄をめぐる事情によっては、被相続人にも照会書が送られてくる場合があります。この場合も同様に期限内に回答・返送してください。
場合によっては裁判官による申立人本人の面接(審問)が行われる
複雑な事情がある場合や、提出した書類では放棄の理由が不十分と判断された場合など、場合によっては裁判官による面接(審問)が行われることもあります。
この場合は、裁判所か申立人に連絡が入るので、日程を調整して、期日になったら裁判所に向かいます。
面接で確認されるのは照会書と同じような内容ですが、照会書では不十分という事なので、より具体的に聞かれる可能性が高いでしょう。
法律的な難しい質問をされるわけではないので、落ち着いて正確に質問に答えれば大丈夫です。
なお、裁判官による面接は必ず行われるわけではなく、提出した書類で放棄の理由や申立人の意思が十分に確認できたと判断された場合は省略されます。
実際に当事務所でサポートした事例では、面接は省略される事が多いです。
家庭裁判所による審議が行われ、許可(不許可)の審判がされる
照会書(回答書)の返送後(場合によっては裁判官の面接後)、家庭裁判所による審議が行われ、1~2週間程度で遺留分放棄を許可する旨の審判があります。
許可の審判に対しては不服申し立て(即時抗告)はできないため、許可の審判と同時に確定します。
なお、審議の結果、家庭裁判所が「放棄が申立人の真意ではない」と判断した場合などは、遺留分放棄は不許可(却下)となります。
不許可となった場合は、審判から2週間以内に即時抗告を行う事で、高等裁判所での審議を求めることができます。
許可の審判確定後、申立人に審判書謄本が届く
遺留分放棄の許可審判が確定すると、申立人に下図のような「審判書謄本」が郵送で届きます。
審判書の見本
審判書謄本は特に相続手続き等で使用することはありませんが、放棄が許可されたことの証拠として、大切に保管しておきましょう。また、被相続人の方にもコピーなどを渡してあげると安心でしょう。
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遺留分放棄が許可されたことを申立人以外が確認する方法
遺留分放棄が許可された場合、申立人宛てに審判書謄本が届くので、それを見せてもらうことで被相続人や関係者の方も許可されたことを確認することができます。
万が一、審判書謄本を紛失してしまった場合も、申立てをした裁判所に請求を行う事で再交付を受けることができます。
ただし、謄本の請求は申立人(又は代理人弁護士)のみが行うことができ、被相続人や利害関係人からの交付請求は認められていません。
もし申立人が思い直して、裁判所に遺留分を放棄したくないと回答し、不許可となったとしても、被相続人や関係者には「許可された」と噓をつき、審判書謄本の提供も拒んでしまえば、被相続人の生前に真偽を確認することはできません。
被相続人の死後に実は放棄していなかったことが判明した…ということのないように、事前によくコミュニケーションをとっておき、審判後には申立人の方から審判書謄本のコピーをもらっておくようにしましょう。
遺留分放棄は必ず遺言書の作成とセットで!
遺留分放棄はあくまで、「遺留分」を放棄する手続きであり、「相続放棄」とは異なります。(相続放棄は被相続人の生前に行うことはできません。)
遺留分を生前に放棄したとしても、遺言書が無ければ、死後に相続人全員により遺産分割協議が必要になります。
遺留分を放棄した方も相続人には違いないので、遺産分割協議に参加して法定相続分の権利を主張することができます。
遺留分の放棄は、遺言書の作成とセットで行わなければ意味がないので、被相続人の方は必ず遺言書を作成しておきましょう。
また、せっかく遺言書を作成しても、法的要件の不備によって遺言書が無効になってしまっては元も子もないので、専門家に相談の上、できるだけ公正証書で作成しておくことをおすすめします。
遺言書の作成についてくわしくはこちら
自社株式や事業用資産については「除外合意」や「固定合意」という選択肢も
事業経営者の方が、円滑な事業承継のために自社株式や事業用資産について対策をしておきたいという場合、遺留分放棄の他に、遺留分に関する民法の特例である「除外合意」や「固定合意」という方法もあります。
除外合意とは、事業の後継者が被相続人から贈与等により取得する株式や事業用資産について、遺留分請求の対象財産から除外することに推定相続人全員が合意するというものです。
これにより、自社株式や事業用資産を相続の対象から外し、相続によって会社の経営に影響が出ることを防ぐことができます。
固定合意とは、対象の株式の価額について、推定相続人全員の合意によって、合意時の評価額で固定するというものです。
会社の業績が好調で将来株価が上昇した場合でも、値上がり分は考慮されないので、後継者の経営意欲を削ぐことなく、相続発生時の過大な負担を避けることができます。
除外合意と固定合意は、いずれも経済産業大臣の確認を受け、その後に家庭裁判所の許可を受ける必要があります。
書類の作成などで税理士等の専門家の関与が必須なので、手続きを検討している方は、相続や事業承継に精通した専門家に相談しましょう。
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遺留分の放棄についてのよくある質問
ここからは遺留分の放棄のご相談の際によく受ける質問を、Q&A形式で解説します。
相続放棄についてくわしくはこちら
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まとめ
特定の方に多くの財産を相続させたいが、自分の死後に遺留分の請求などで相続人同士が争う事は避けたい、という場合、生前に遺留分放棄をしてもらうことでトラブルを未然に防ぐことができます。
しかし、遺留分を放棄するのはあくまで相続人本人であり、他の方が強制することはできません。また、放棄の条件として遺留分相当額の財産を贈与することも必要になります。
そういったハードルをクリアしてでも遺留分を放棄してもらいたいという方は、よほどの事情があるという事でしょうから、確実に遺留分放棄を許可してもらうためにも、相続実務に精通した専門家に相談の上、手続きを進めることをおすすめします。
遺留分放棄の手続きをお考えの方は相続の専門家へ相談を!
当事務所では、遺留分放棄の許可申立てをはじめとした相続・生前対策について、数多くのご相談・サポートの実績があります。
遺留分放棄の許可申立てについては、これまでにサポートしたすべてのケースで遺留分放棄が許可されています。(申立てをすれば必ず許可されるというわけではありませんのでご注意ください。)
当事務所がお手伝いした遺留分放棄の事例についてはこちらをご覧ください。
大切な財産を思い通り確実に次の世代に引き継がせるためには、遺留分放棄だけではなく遺言書の作成を含めた万全な相続対策が必要です。
当事務所では、相続に精通した専門家による最適なご提案が可能です。ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。
記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。
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