いとこ(従兄弟・従姉妹)の遺産相続は原則不可!相続には遺言を!
いとこの遺産を相続できる?
「いとこ(従兄弟・従姉妹)」は、年齢も近く、親族の中でも身近な存在です。老後も親しく交流している場合も多いのではないでしょうか。
もしかしたら、「私に何かあった時はいとこがいるから大丈夫」と思っている人もいるかもしれません。
いとこに遺産をのこしたいなら遺言書を書きましょう
ですが、何も対策をしていなかった場合、法律上いとこ(従兄弟・従姉妹)の遺産を相続することは、原則不可とされています。今回は、いとこ同士の相続について解説します。
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いとこの遺産は相続できないのが原則
例えば、すでに両親も亡くなり、配偶者に先立たれて子どももいなかった場合、親族はいとこしかいないというケースもあるでしょう。そして、自分の亡き後のことはいとこに任せたい、と思うのも自然な心情です。
ところが、このようなケースでは、相続人は不在とみなされます。なぜなら法律上、いとこは相続人ではないからです。
それでは身寄りがない(法定相続人が一人もいない)人の財産は最終的に誰のものになるのでしょうか?
身寄りがない人の遺産は最終的にどこへ行く?
無くなった方に相続人がおらず、遺言書も遺されていない場合、相続財産は、最終的には国庫に収納されることになります。
ただし、すぐに国に納められるわけではなく、相続財産管理人の選任がなされ、1年以上の時間をかけて、負債の清算などの然るべき手続きを経た後、それでも余りがある場合に国に納められることになります。
この手続きの中で、故人と特別な関係にあった方については、特別縁故者、特別寄与者として申し立てを行い、認められれば財産を相続できます。
つまり、いとこの方も特別縁故者や特別寄与者にあたる場合は遺産を相続できる可能性があるということです。(特別縁故者、特別寄与者については後ほど解説します。)
とは言え、それはあくまで例外的な場合であり、法律上は、いとこは相続人ではないため、遺産を相続できないのが原則なのです。
いとこは法定相続人ではない
いとこは親族なのに、なぜ相続人になれないのでしょうか?
相続についての約束事は民法で規定されています。民法では、被相続人(=亡くなった方)に近い親族に財産を相続させるために相続人の範囲を定めています。
親族とは6親等以内の血族(血縁関係)、3親等以内の姻族(配偶者の血族)を指します。いとこは4親等にあたりますので親族です。
※赤字は法定相続人
1親等 | 父母、子ども |
2親等 | 祖父母、孫、兄弟姉妹 |
3親等 | 曽祖父母、ひ孫、おじ・おば、甥・姪 |
4親等 | 高祖父母、玄孫、祖父母の兄弟姉妹、いとこ、兄弟姉妹の孫 |
遺産を相続できる親族の範囲は直系尊属(両親、祖父母、曽祖父母…)直系卑属(子ども、孫、ひ孫…)の他は兄弟姉妹(亡くなってる場合は甥姪)までとされています。
具体的には、配偶者が最も被相続人から近い親族とされ、次に子ども、子どもが亡くなっている場合は孫、子どもが無い場合には、被相続人の親、親が亡くなっている場合には兄弟姉妹、兄弟姉妹が亡くなっていたら甥や姪が財産を相続できると定めています。
これらの親族を法定相続人と言います。
そして、いとこは法定相続人には含まれません。
法定相続人についてくわしくはこちら
なぜいとこは法定相続人ではないのか
そもそも日本の民法は、以前は家督相続制度が採用されており、財産は個人のものではなく「家(一族)のもの」という考えに基づき、代々受け継がれていました。
しかし昭和22年の現行民法制定後は、より個人を尊重する考えから、亡くなった方の財産は、より関係の近い方に相続されるという事になりました。
この時、いとこやおじ・おばは法定相続人の範囲に含まれませんでした。(海外ではいとこが相続人になる国もあります。)
当時は生涯未婚率も今よりずっと低く、また、きょうだいがいることが当たり前だったので、法定相続人が誰もいないというケースは少なかったと思います。
ところが、少子高齢化、核家族化が進み、非婚・未婚者の増えた昨今では、民法の定める法定相続人の範囲では、対応できないケースも増えてきています。
生前仲が良く面倒を見てきたにもかかわらず、法定相続人でないばかりに財産を受け取る事ができないという、故人にとっても残された方にとっても大変残念なケースも、決して珍しい事ではなくなってきているのが実情です。
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いとこの遺産を相続する方法
では、いとこの財産を受け取る方法はまったくないのでしょうか?
答えは、
「まったくないわけではないが、亡くなった方が何も対策をしていなかった場合、かなり時間と労力がかかる。」
となります。
以下では『亡くなった方が何も対策をしていなかった場合に』、いとこの財産を相続する方法を説明します。
「特別縁故者への財産分与」を申し立てる
一つ目の方法は、『法定相続人が全くいない場合』に使える方法です。
この場合、家庭裁判所に、特別縁故者への財産分与の申立てを行うことにより、財産を取得できる可能性があります。
特別縁故者とは、以下のいずれかに当てはまる人のことです。
① 被相続人と生計を共にしていた者
② 被相続人の療養看護に努めた者
③ 被相続人と特別の縁故があった者
①や②についてはイメージしやすいと思いますが、③についてはかなり抽象的ですね。
実際のところは、家庭裁判所が、故人との関係性や財産分与についての意思表示の有無などの様々な事情を考慮して、総合的に判断することになります。
特別縁故者への財産分与の申立てを行うには、前提として家庭裁判所に『相続財産管理人選任の申立て』を行い、相続財産管理人が選任されている必要があります。
そして故人に多額の負債(借金)が無い限りは、選任の申立ては、特別縁故者として財産を受け取りたい人自身で行うことになるでしょう。(多額の負債がある場合は債権回収のために債権者が申し立てる事があります。)
特別縁故者として財産を受け取るのは簡単ではない
しかし、申立てを行えば誰でも簡単に財産がもらえるかというと、そうではありません。
下記のような理由から、この方法によって財産を受け取るのはなかなかハードルが高いと言わざるを得ません。
- 申立ての際に、戸籍謄本や相続財産に関する資料を集めて提出しなくてはならない。
- 申立ての際に、予納金として数十万円~100万円程度を納付しなくてはならない。(納付不要な場合もあります。)
- 予納金は返ってこない可能性もある。
- 相続財産より相続債務の方が多かった場合は、特別縁故者への財産分与は行われない。(債務の清算の方が優先)
- 特別縁故者として認められるまで最低でも13か月以上の期間がかかる。
- 申立てをしても特別縁故者として認められるとは限らない。
- 特別縁故者として認められたとしても、財産のすべて、または大部分を貰えるとは限らない。(相当深い関係が無ければわずかな割合しか認められないことが多い。)
- 特別縁故者として認められた場合、遺産の額によっては相続税の申告が必要になることがある。
申立てが認められ、財産を受け取るまでには、上記のような様々なハードルを乗り越える必要があります。
とは言え、亡くなった方が何も対策をしていなければ他に方法はないので、メリットとデメリットを比較して、申立てを行うか慎重に判断しましょう。
申立てる場合は、手続きに精通した弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。
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特別寄与料を請求する
こちらの方法は、亡くなった方に『法定相続人がいる場合』に使える方法です。
この場合、相続人との話し合い又は家庭裁判所への申立てにより、財産を取得できる可能性があります。
2019年に相続法が改正され、新しく「特別寄与料(特別寄与者)」が定められました。これにより今までは財産を受け取ることができなかった親族も、故人の介護や事業の手伝いをしていた場合には財産を受け取ることができるようになりました。
法改正によって財産を受け取れるようになった「特別寄与者」とは、以下のすべての要件に当てはまる方です。
① 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をした
② そのことによって、被相続人の財産が維持された又は増加した
③ 被相続人の親族である
要件③の親族の範囲は、こちらで解説したとおりなので、いとこは他の2つの要件を満たせば特別寄与料を請求できます。
以前は、相続人以外の親族はどれだけ献身的に介護をしても、自分自身の取り分を主張することはできませんでした(貢献した分が、相続人である配偶者の寄与分として認められることはありましたが)。
改正によって相続人以外の人の貢献も「特別の寄与」として認められ、自分自身の取り分と受け取れることになりました。
参考
民法第1050条 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
特別寄与料を受け取るのもやはり簡単ではない
とは言っても、この方法によっても、やはり簡単に財産をもらえるというわけではありません。
財産を受け取るためには以下のようなハードルがあります。
- 特別寄与料を受け取るためには、相続人に対して請求を行い、話し合いをして、相続人全員の合意を得る必要がある。
- 相続人の合意を得られない場合、家庭裁判所への申立てが必要。
- 家庭裁判所への申立て期限は、相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、又は相続開始の時から1年以内。
- 申立てをしても必ず特別寄与料が認められるとは限らない。
- 特別寄与料が認められた場合、遺産の額によっては相続税の申告が必要になることがある。
特別縁故者への財産分与の申立て(及び前提となる相続財産管理人選任の申立て)と比べると、予納金がない分、経済的なリスクは少なそうに思えます。
しかし親族同士での泥沼の争いに発展する可能性があるので(大抵の場合、特別寄与料の請求に快く応じてくれる相続人はいないでしょう。)、心理的なハードルはより高いかもしれません。
それでも、亡くなった方が何も対策をしていなければ他に方法はないので、財産をもらいたい場合は早めに請求を行いましょう。
特別寄与料の請求を行う場合は、制度に精通した弁護士に相談することをおすすめします。
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生前に対策をしておけば確実に受け取ることが可能
さて、これまでいとこが相続財産を受け取るための方法を紹介してきましたが、これらはあくまで『亡くなった方が何も対策をしていなかった場合』の話です。
生前にしっかり対策をしておけばお世話になった・仲の良いいとこに確実に財産を遺すことが可能です。
いとこに財産を遺すために生前にできる対策としては以下のようなものがあります。
・遺言書を作る。
・養子縁組をする。
・死因贈与契約を結ぶ。
・家族信託(民事信託)を設定する。
など
この中で、いとこに財産を遺すために最もシンプルな方法は、遺言書を作ることです。(他の方法は、事情によっては使えなかったり、使える場合もデメリットを考慮する必要があります。)
親族がいとこしかいなくて、いとこに財産を遺したい場合は、遺言書を書くのが一番確かな方法です。
いとこに財産を遺したい場合はぜひ遺言書を
遺言書は、自分の財産を思い通りの割合で受け継がせたい場合に、生前に書くものです。
特別縁故者への財産分与の申し立てや特別寄与料の請求は、前述したとおり時間も手間もかかります。そのうえ必ず認められるとは限りません。
ですが、遺言書があれば、大切な財産を、自分が遺したいと思った方に確実に遺すことが可能です。
また、遺言書は単に財産の分け方を指定するだけのものではなく、最後のメッセージとして、故人の想いを遺された方へつなぐ大切なツールです。
いとこ以外に相続人がいない方はもちろん、相続人はいるけどお世話になったいとこに財産をもらってほしいと考えている方は、ぜひ遺言書を作って下さい。
なお、遺言書を作る場合は、遺された方の負担を減らすために「公正証書遺言」を作成することをおすすめします。
遺言書の作成方法・注意点などについてはこちらの記事をご参照下さい。
遺言書を遺す場合は遺言執行者の指定を忘れずに!
上記のとおり、いとこに財産を遺したい場合は、遺言書を遺すのが最もシンプルな方法です。
しかし、遺言書を書いても、死後に勝手に遺言どおりに遺産が移るわけではありません。
遺言の内容を実現するためには、相続発生後に相続人等による手続きが必要です。しかし、相続人の中に遺言の内容に反対する人がいる場合や、そもそも相続人が誰もいない場合は、手続きがストップしてしまいます。
そのような場合でも遺言執行者がいれば、遺言の内容を実現することが可能です。
遺言執行者とは、遺言内容の実現のための職務を執り行う人のことで、遺言の中で指定することが可能です。
遺言執行者がいる場合は、原則として遺言執行者が単独で手続きを行うことができるので、相続人の中に反対する方がいても、相続人が誰もいなくても手続きを進めることができます。
遺言執行者は破産者及び未成年を除いて誰でもなれるので、遺言によって財産を貰う方(受遺者)を指定することも可能です。
しかし、遺言執行者には法律上一定の義務・責任が課されており、一般の方が滞りなく執行するのは難しい場合もあります。
特にいとこの方が受遺者になる場合は、慎重な対応が必要な場合も多いので、確実に遺産を受け継いでもらいたいのであれば、相続に精通した専門家を遺言執行者に指定しておくことをおすすめします。
遺言執行者についてくわしくはこちらの記事をご参照ください。
円満相続を実現するための生前対策のご相談はこちら
いとこの遺産を相続した場合は相続税が2割増しに
いとこから遺贈によって、あるいは特別縁故者又は特別寄与者として遺産を貰った場合、遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要になります。
相続税の基礎控除額は(3,000万円+600万円×法定相続人の数)です。法定相続人が一人もいない場合は、3000万円を超える部分に対して相続税が課税されます。
また、遺産を貰った方が被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の人である場合、その人の相続税額が2割加算になります。いとこはこの条件に該当するため、相続税の納付が必要な場合は2割増しの金額を支払うことになります。
具体的な税額については、他の相続人の有無や取得した遺産の内容によるので、税理士に相談しましょう。
いとこの財産を相続したい、もしくはさせたい場合は相続の専門家に相談しましょう!
遺言書を遺さずに亡くなると、原則として法定相続人の方しか財産を受け取ることはできません。また、法定相続人がいない場合は、最終的には財産は国に召し上げられてしまいます。
ご自分の財産をいとこに遺したい、また、他に親しい身内のいないいとこの相続が心配な方は、遺言書を書く、書いてもらうことを強くおすすめします。
ですが、遺言書も書き方によっては、十分に効力を生かせない場合もあります。また、遺された方が余計なトラブルに巻き込まれたり、手続き面で大きな負担を強いられたりすることもあります。
せっかく遺言を遺すのであれば、そのような心配のないよう、相続の専門家に相談の上で、しっかりとした内容の遺言書を作成すべきです。遺言書の作成を検討されている方は余裕のあるうちに、一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか?
遺言書の作成やその他の相続対策についてのご相談は当事務所で承ります。ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。
※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。
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