どうやって分ける?遺産分割の3つの方法と揉めないための7つのポイント

遺産はどうやって分ければいい?

相続した財産をどうやって分けるかは、みなさん大いに関心のあるところでしょう。

遺産がすべて現金や預貯金であれば分けやすいでしょうが、多くの場合、不動産等の分けづらい財産が含まれています。

遺産の分け方を間違うと大変なトラブルになりかねません

そうなると分け方によって相続人間で大きな格差が生まれたり、場合によっては課税上の問題が発生することもあります。

仲の良かった家族が、遺産の分け方で揉めたせいで断絶状態になってしまうというのは、決してドラマの中だけの話ではありません。

本記事では遺産の3種類の分割方法と、揉めないための分割のポイントについて解説します。

これを読んで正しい認識をもって話し合いに臨めば、遺産をめぐる無用な争いは避けることができるはずです。

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目次

遺産の分割方法は3種類

遺産の分け方には現物分割・換価分割・代償分割という3種類の方法があります。

どの方法にもそれぞれ長所と短所があり、財産の種類や相続人の状況によって適する適さないがあるので、その特徴をしっかりと把握しておきましょう。

なお、預貯金は現物分割して不動産は換価分割する、といったように分割方法を併用することもできます。

1

現物分割

文字通り財産を現物のまま、そのまま分割する方法です。

一つの財産を分け合う方法と、財産の種類ごとに分け合う方法があります。

■一つの遺産を複数の相続人で分け合う方法

遺産分割方法・現物分割その1

一つの(1種類の)財産をそれぞれの取り分(相続分)に応じて分け合うやり方です。

現金や預貯金などの分割が容易な財産であれば、公平に分けることができるため、このやり方が最も不満が出にくいでしょう。

一方、不動産や自動車、動産等の分割しづらい財産は、共有状態にしてしまうと権利関係が複雑になり、後で揉め事になりやすいので、この方法によることは避けるべきです。

ただし土地であれば、状況によっては一つ(一筆)の土地を分筆してそれぞれ取得するという方法も悪くないでしょう。

■複数の遺産を種類ごとにそれぞれ分け合う方法

遺産分割方法・現物分割その2

不動産は配偶者、A銀行の預貯金と自動車は長男、B銀行の預貯金は長女、という風に、財産の種類ごとに取得する人を決めるというやり方です。

それぞれの財産は単独所有となるため、共有状態によるリスクは避けられます。

ただし財産の種類によっては、価額の面で不公平が生じたり、利用や処分のしやすさ・しにくさの面で不満が生じる可能性があります。

後々軋轢を生まないように、事前に相続人間での意思疎通をしっかり図り、できるだけそれぞれの状況と要望に沿うような財産を取得するようにしましょう。

お互いの要望に合う分配が難しければ、他の分割方法を検討しましょう。

2

換価分割

遺産分割方法・換価分割

不動産など、そのままでは公平な分割が難しい財産を売却(換価)して、その代金を相続人間で分けるという分割方法です。

主な遺産が不動産である場合によく使われる方法です。

共有状態になることを避けることができるうえに公平な分割が可能ですが、希望した価格で売却できるとは限らないため、場合によっては資産が大幅に目減りしてしまうこともあります。

また、売却に必要な費用や税金の負担、売却手続きを誰が中心となって行うか、最低売却額と売却までの期間、などについてはしっかりと合意しておかないと、後で不満を生む原因となります。

相続人間での調整が難しければ、売却換価を第三者である代理人にまかせるのも、公平性を保つ方法の一つです。

3

代償分割

遺産分割方法・代償分割

特定の財産(主に不動産)を相続人の一人が取得する代わりに、他の相続人に対して相応の代償金を支払うという分割方法です。

めぼしい遺産は自宅不動産ぐらいで、相続開始前から住んでいた相続人がそのまま住み続ける場合などによく使われます。

また、亡くなった方の配偶者と兄弟姉妹のように相続人間での関係性が薄い場合に、全財産を配偶者が相続する代わりに、いくらかの代償金(いわゆるはんこ代)を支払って遺産分割協議書にサインと判子をもらう、という形をとることもあります。

引き続き不動産を利用したい場合や、売却による資産価値の目減りを避けたい場合に適した方法ですが、代償金は財産を取得する相続人の固有財産から支払うことになるので、十分な支払い能力があるかは確認しておくべきでしょう。

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遺産分割で揉めないための7つのポイント

上記3種類の分割方法があることを踏まえたうえで、遺産分割協議で揉めないためのポイントを7つ挙げて解説します。

Point1

事前に財産調査をしっかり行い、財産目録を作成して相続人全員に開示する。

相続財産の全容については、相続人全員がしっかりと把握しておく必要があります。

一部でも詳細が不明な財産があれば、『本当は他にもっと財産があるのに、あいつが隠しているんじゃないか』などといった疑念を抱かれても仕方ありません。

そうなってしまうと話し合いが上手くいくことは望めないでしょう。

余計な疑いを持たせない・持たないようにするためにも、話し合いの前提として、相続人全員が財産の全容を確認できるように準備しておくことが大切です。

事前に財産の調査をしっかりと行い、名寄帳や残高証明書などの証拠となるものを集めたうえで、きちんとした財産目録を作成しておきましょう。

相続財産の調査方法についてはこちら

財産目録の作成方法はこちら

Point2

まずそれぞれの相続する割合を決める。

財産の一つ一つについて順番に取得者や分割割合を決めていては、時間がかかり過ぎるうえ、後で全体の分割割合を振り返った時に不公平が生じやすいです。

そこでまずは遺産全体から各相続人がどれぐらいの割合で取得するかを決めてしまいましょう。

遺産の中に不動産等の分割が難しい財産があれば、きれいに分割できることは少ないため、最終的には多少の調整は必要でしょうが、目標や目安があればそれに向けて話し合いもしやすくなるでしょう。

Point3

分割割合は法定相続分をベースに考える。

誰がどれぐらいの割合で財産を取得するかは重要なことですし、それぞれの言い分があるでしょう。

しかしあまりに過大な要求をしても話がこじれるばかりで、最終的に言い分が通る可能性は低いです。遺産分割調停でもまずは法定相続分が考慮されます。

最低限法定相続分が確保されていればお互いに納得しやすいでしょうから、まずは法定相続分をベースにして、話し合いの中でお互いの言い分を考慮して調整していくべきでしょう。

Point4

価額が大きく分割しづらい不動産等の財産をどうするか先に決める。

一般的に不動産は遺産全体に占める割合が大きく、簡単に分割することもできません。

まず不動産等をどうするかを決めてしまえば、後は預貯金などの比較的分割が容易な財産で各人の取得額を調整すればよく、おのずと分割の道筋は見えてくるはずです。

Point5

どうしても譲れない部分は最初にしっかりと主張しておく。

個人的な思い入れや、今の生活環境を考えた利便性などの理由から、どうしても特定の財産を手に入れたいということもあるかもしれません。

そういった場合は必ず、どうしても欲しい理由と共に話し合いの最初に主張しておきましょう。

後から言われても、そのために話し合いをやり直すのは面倒ですし、わがままと捉えられても仕方ありません。

仮に望み通りその財産を手に入れることができても、今後の関係に影響を与えかねません。その財産が欲しいのはあなただけではないのです。

もし他の相続人もその財産が欲しい場合に、どうしてもその財産の取得を望むのであれば、自分の相続する割合を減らしたり、代償金を支払ったりすることも視野に入れておきましょう。

また、欲深い人間だと思われたくないとの思いからか、話し合いの当初は別に遺産なんて興味ないというような態度をとっておきながら、後になってあれこれと言い出す方もいます。

これはある意味正直に主張してくる方より質が悪いです。他の相続人が気持ちを察してくれることに期待すべきではありません。

特別な事情がなければ、少なくとも自分の法定相続分について主張することは恥ずかしいことでも何でもありません。

本当に興味がない(自分の分はゼロでも構わない)場合はともかく、最低限欲しい取り分があるのならはじめから堂々と伝えておきましょう。

Point6

主張するばかりでなく相手への配慮と妥協も必要。

法定相続分が基本とは言っても、自分は他の相続人より多く貰うべき、と考える方が多いのも事実です。

特に、生前に故人の介護や生活面での支援をしていた方がいる場合や、他の方より多くの金銭的援助を受けていた相続人がいる場合に多いです。

そういった主張をする方からすると、多く貰って当然な理由があるのかもしれませんが、自分にとっての事実が他の方から見ても同じであるとは限りません。

例えば、同居して介護していたという事実は、他の方からすると同居中の家賃や生活費の分を援助してもらっていた、と捉えられるかもしれません。

兄弟のうち一人だけが留学費用や留学中の生活費を援助してもらっていたとしても、教育資金は親が出すのが当然で特別な援助には当たらない、と考える方もいるでしょう。逆もまた然りです。

本人からすれば納得できないこともあるでしょうが、だからと言って頑強に自分の意見ばかり主張していてはまとまる話もまとまりません。

調停や審判にもつれ込んでも、自分の主張が100%通ることはほとんどないでしょう。長い時間がかかったあげく、誰も得しない結果になることもあり得ます。

もちろん譲れない部分はしっかりと主張すべきですが、話し合いを無駄に長期化させないためには、相手の主張にもしっかりと耳を傾け、妥協できるところは妥協して、お互いの落とし所を探すことが大切です。

Point7

話し合いがまとまったら必ず遺産分割協議書を作成しておく

相続人全員で合意した事実があれば、口約束でも有効ですが、万が一合意内容を反故にされそうになった時に、確たる証拠もなく主張・反論することは難しいでしょう。

紛争の蒸し返しを防ぐために、合意内容は遺産分割協議書という形で書面に残しておくべきです。

そもそも、不動産の名義変更や、金融機関の解約・払い戻し手続きなどの遺産相続手続きでは、遺産分割協議書の提出を求められることも多いです。

スムーズに手続きを進めるためにも、話し合いがまとまり次第できるだけ早めに作成しておきましょう。

遺産分割協議書の書き方や作成方法についてはこちら

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話し合いが長期化しそうなら遺産分割調停の申し立てを

いくら上記のようなことに気を付けて話し合おうとしても、相手がこちらの言うことに全く耳を貸さないのであれば、話し合いはずっと平行線のままでしょう。

また、当事者同士ではついつい感情的になってしまう部分もあるかと思います

そんな時は早々に見切りをつけて、遺産分割調停を申し立てたほうがいいかもしれません。

調停でもお互いに譲る気が全くなければ、長期化は避けられず、望むような結果を得られるとも限りませんが、第三者が間に入ることによって冷静になり、案外早く話がまとまるかもしれません。

まとめ

遺産分割における3つの分割方法は、遺産の種類や相続人の状況によって適切に使い分けることが大切です。

分け方によっては、資産価値の格差や課税面での不公平感から不満が生じ、それが後の争いの種になることもあり得ます。

遺産分割の話し合いは、時に人生において重要な影響を及ぼすこともあるので、相続人間で争いがなくても慎重に進める必要があります。

もし適切な分け方について自信がない場合は、専門家の意見を聞いてみるのもいいかも知れません。

二次相続等を見越した適切な遺産の分け方や、遺産分割協議書作成などについてのご相談は当事務所で承ります。

遺産分割をめぐって争いのある方には弁護士をご案内することも可能です。ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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