遺言執行者とは?執行人の選び方や執行手続きの手順を解説!
遺言執行者の指定を忘れずに!
遺言では、相続人や受遺者に渡す相続財産を決めるだけでなく、相続手続きを行う「遺言執行者」を指定することも可能です。
遺言の内容で揉めた場合や、相続人の中に疎遠な方や認知症の方がいる場合でも、遺言執行者がいればスムーズに相続手続きを行うことが可能になります。
遺言執行者を指定しておけば安心
本記事では、遺言執行者の役割と、選任方法や遺言の内容を実現する手順方法についてくわしく解説します。
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遺言の執行とは
遺言の執行とは、遺言書に書かれている内容を実現するために必要な事務を執り行う(執行する)ことをいい、この事務を執り行う人の事を「遺言執行者」(「遺言執行人」と呼ぶ方もいます。)と言います。
遺言執行者は遺言の中で指定することが可能ですが、遺言で指定されていない場合でも、相続人等が必要だと判断すれば、家庭裁判所に請求することで遺言執行者を選任できます。
遺言執行者になれる人
遺言執行者には、未成年者及び破産者を除いて誰でもなることができます。(民法第1009条 遺言執行者の欠格事由)
実務上は相続人の代表者又は司法書士や弁護士などの専門家がなるケースがほとんどです。
相続人の一人を遺言執行者として指定する方も多いですが、法的知識が無く、事務手続きに不慣れな一般の方が執行者になることでトラブルになるケースも多いです。
ご家族に余計な負担を負わせたくないのであれば、信頼できる外部の専門家に依頼するのが確実です。
遺言執行者(遺言執行人)を選任するメリット
遺言執行者(遺言執行人)を選任するメリットはいくつかありますが、最も大きなメリットは手続きする人を決めることでスムーズに遺言の内容を実現できる点です。
遺言書が遺されていない場合、相続人は話し合い(遺産分割協議)によって相続する財産を決めることになります。
一方遺言では、亡くなった人が各相続人に渡す財産の指定や渡す財産の割合を決めることができ、相続人以外に財産を遺贈することも可能です。
ただ遺言の内容に納得できない相続人がいると、相続手続きを拒否したり妨害する可能性もあります。遺言執行者はそのようなトラブルを避けるために選任します。
遺言執行者に選ばれた人は、相続財産の管理や遺言の執行に必要な一切の行為の権利と義務を有することになりますので、相続人であっても執行手続きを妨げることはできません。
また、遺言はあるけど遺言執行者がいない場合、相続人が不動産の名義変更や預貯金口座の解約手続きを行うことになります。
手続きにはかなりの負担が伴う上、相続人の中に疎遠な方や、連絡が取れない方、認知症の方などがいると、手続きを進められなくなることもあります。
遺言執行者がいればこのようなリスクを回避することができるうえ、専門家が遺言執行者になれば、相続人の負担を減らすこともできます。
遺言執行者の選任方法
遺言執行者を選任する方法は、遺言者が選任するケースと、相続人など利害関係人が家庭裁判所に請求して選任するケースの2パターンがあります。
遺言書で遺言執行者を指定する
遺言者が遺言執行者を選任する場合、遺言の中で執行者を指定します。
また、遺言の中で第三者に指定を委託することも可能です。
遺言で遺言執行者の指定があった場合は、相続開始後に、相続人など利害関係人から、指定を受けた人に対して、一定の期間を定めて遺言執行者を引き受けるどうかを催告することができます。
期間内に確答をしない場合には、遺言執行者になることを承諾したとみなされるのでご注意ください。(民法第1008条)
家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てを行う
遺言執行者がいない場合や、選任した人がすでに亡くなっている場合は、利害関係人が家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てを行い、選任してもらいます。
申立ての際には執行者の候補者を立てることも可能です。
選任申立ての概要は以下の通りです。
■申立てできる人
利害関係人(相続人、受遺者、遺言者の債権者など)
■申立先
遺言者の最後の住所地の家庭裁判所
※申立人の住所地ではありません。
管轄裁判所はこちらで確認できます。
■申立てにかかる費用
●申立手数料 800円
※申立書に収入印紙を貼付して納めます。
●連絡用郵便切手 数百円~
※家庭裁判所によって異なります。詳しくは管轄裁判所にお尋ね下さい。
■申立てに必要な書類
・申立書(家庭裁判所のHPからダウンロードできます。)
・遺言者の死亡の記載のある戸籍謄本
・遺言執行者候補者の住民票又は戸籍の附票
・遺言書の写し(又は遺言書検認調書謄本の写し)
・利害関係を証する資料(相続人であることがわかる戸籍謄本など)
※事情によってはこのほかの書類が必要になることもあります。
申立書の書式や記載例については下記裁判所ホームページにてご確認ください。
遺言執行者選任の申立てについてくわしくはこちらの記事をご覧ください。
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遺言執行者の職務内容と執行手続きの流れ
遺言執行者に選ばれた方は、執行者になることを承諾した後、すみやかに遺言内容を実現するための手続きを行わなくてはなりません。(民法第1007条第1項)
その内容は法律で明文化されているものと、明文化されていないものの、実務上当然行うべきとされているものがあります。
具体的には下記のような職務を行うことになります。
以下、それぞれについて解説します。
遺言書の検認手続きを行う
亡くなった人が自筆の遺言書を残していた場合、遺言書の存在を確認するための検認手続きが必要になります。
検認は相続人に対し、遺言の存在と内容を相続人に知らせると共に、遺言書の偽造や変造を防止する役割もあります。(遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。)
検認を行う人は、遺言を保管している人または遺言書を見つけた相続人と規定されているため、執行者の方が遺言書を保管していた場合は、まず検認手続きを行う必要があります。
検認は遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に対して申立てをして行います。
申立ての際には、相続人全員の相続関係を証明する戸籍や現住所がわかる書類の提出が必要になります。
なお、公正証書遺言や法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言については、検認をする必要はありません。
自筆証書遺言の検認手続きについてくわしくはこちらの記事をご覧ください
相続人へ就任承諾の旨と遺言の内容を通知する
遺言執行者に選ばれた人は、執行者を引き受けるかどうかについて意思表示をしなければなりません。
遺言執行者に就任することを承諾した場合には、すみやかに相続人へ就任の通知を行います。
また、相続人に対して遺言の内容を通知しなくてはなりません。(民法第1007条第2項)
通知は遺産を貰わない方、遺言書に記載されていない方を含めたすべての相続人に対して行わなくてはなりません。
そのため実務上は、まず亡くなった方の相続関係を証明するすべての戸籍の収集から始めることになります。
なお、条文上は「相続人」とされていますが、遺言書で受遺者(遺言で財産を貰う方)として相続人以外の方が指定されている場合、当然その方にも通知しなくてはならないでしょう。
金融機関へ相続が発生したことを通知する
明文の規定はありませんが、実務上、遺言執行者に就任した後はすみやかに金融機関に対して相続発生の連絡を行い、口座を止めてもらう(凍結してもらう)必要があります。
口座を止めなかったために、引き落としがされ続け、預金残高が減ってしまうと、後に分配をする際にトラブルになりかねません。
また、2019年の改正相続法施行によって、法定相続人による預貯金の仮払い制度が創設されたため、金融機関が遺言の存在を知らない場合、相続人によって預貯金の一部を払い戻されてしまう恐れがあります。
さらに、(違法ではありますが)遺言の内容を快く思わない相続人が勝手に引き出してしまうリスクもあります。
本来の取得者ではない方に財産が渡ってしまうと、取り戻すためには訴訟の提起など大変な労力が必要になります。
これらのトラブルを未然に防ぐために、相続が発生したら、相続人への通知と同時(あるいはそれより前)に、金融機関に相続が発生したことを連絡し、相続人からの仮払い要請には応じないよう伝えておくべきです。
相続財産を調査し、財産目録を作成・交付する
遺言執行者は相続財産の目録を作成し、その目録を相続人に交付する必要があります。(民法第1001条)
このため、遺言執行者は、自身で相続財産である不動産や預貯金の所在を調べて、財産状況を把握する必要があります。
遺言書に相続財産が記載されているケースもありますが、遺言を書いてから亡くなる間に財産状況が変動している可能性もあるので、改めての調査は必須です。
また、「財産の一切を相続人〇〇に相続させる」など、相続財産の所在が遺言書に明記されていないこともあるので、その場合は、相続人や親族等から資料を預かって一から調査しなくてはなりません。
実務上は、不動産であれば名寄帳の取得、預貯金や有価証券であれば金融機関に対して全店照会や残高証明書の請求などを行い、調査します。
財産目録の形式に規定はありませんが、一般的には、不動産については所在、地番、家屋番号、持分等を明記し、金融資産については金融機関名、支店名、口座番号、相続開始時点の残高等を明記することが多いでしょう。
また、後でトラブルにならないよう、名寄帳や残高証明書のコピーを添付しておきましょう。
財産目録の作成方法などについてくわしくはこちらの記事をご覧ください。
相続財産の名義変更・解約・換金・分配手続きを行う
相続財産の調査が終わり、財産目録の交付が完了したら、遺言内容に沿って相続財産の名義変更・解約・換金・分配手続きを行います。
預貯金や有価証券については解約の上、必要に応じて換価換金を行い、各相続人に分配を行います。
不動産については、財産を取得する方への名義変更登記を行います。
以前は相続人が取得する場合は執行者が登記申請することができなかったのですが、2019年の改正相続法施行によって、特定の不動産を特定の方が相続する場合は、遺言執行者から相続登記を申請できるようになりました。
相続法改正によって登記をしなければ権利を失ってしまう可能性も出てきたので、すみやかに手続きを行いましょう。
執行費用・報酬の精算、終了の報告を行う
遺言書に記載されている内容の実行が完了したら、遺言執行にかかった費用や報酬の計算を行い、清算します。
報酬額は、遺言で定められていなければ、相続人との協議によって決めることになります。
話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所で報酬額を決めてもらう事もできます。家庭裁判所は、相続財産の状況や相続手続きの難しさなどを考慮して報酬額を決定します
清算が完了したら、執行の状況をまとめた書面等を作成し、相続人等に遺言執行が完了したことを報告して、手続きは終了となります。(民法第1012条第2項、民法第645条)
遺言の内容によっては必要な手続き
相続財産の分配手続き等の他にも、遺言に以下の事項が記載されていた場合は、遺言執行者がこれを行わなくてはなりません。
・子の認知(民法第781条)
・推定相続人の廃除及び廃除の取り消し(民法第893条、894条)
上記二つについては、遺言執行者のみが行えるとされています。
めったにないケースですが、もし記載されていた場合は、専門家に相談の上、執り行うようにしましょう。
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遺言執行で必要になる書類
遺言を執行するためには、以下の書類等が必要になります。
- 亡くなった人の相続関係を証明する戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺言書または遺言書情報証明書
- 検認済証明書(検認が必要な遺言書に限る)
- 遺言執行者選任審判書謄本(家庭裁判所で選任された場合)
- 遺言執行者の実印
- 遺言執行者の印鑑登録証明書
遺言の内容や相続財産の種類によっては、上記の書類に加えて別途書類を用意する必要があります。
例えば銀行の相続手続きでは、亡くなった人の通帳・キャッシュカードなどが必要です。
不動産の登記申請手続きでは、被相続人の住民票の除票、不動産を取得する方の住民票、固定資産税評価証明書などが必要です。
専門家を遺言執行者に指定した方がいいケースとその理由
遺言執行者は必ず選任しなくてはならないというわけではありません。また、先に述べた通り、基本的には誰でも執行者になることができます。
しかし、遺言執行者には法律で一定の義務が定められており、責任も生じます。(民法第1012条、1020条ほか)
遺言者が生前に遺言内容を相続人に周知し、全員が了承している場合は、遺言執行者を指定しなくても、あるいはご家族を執行者として指定してもスムーズに相続手続きを行えるかもしれません。
しかし遺言者が相続人同士の関係性が良好だと思っていても、実際の関係性は相続人同士でなければわかりません。
生前は本人の手前、表立って主張することは無くても、相続をきっかけにそれまでの不満が噴出するケースも珍しくありません。
遺言内容に納得できない相続人が一人でもいれば、相続財産の分配で揉める可能性は考えられます。
法的知識の無い一般の方を執行者に選任してしまうと、トラブルが起きた場合にうまく対処するのは難しいでしょう。
また、遺言の内容で揉めなくても、相続財産が多ければやるべき手続きは多くなります。
大切なご家族の方にそのような過大な負担を負わせるのは、できれば避けるべきです。
トラブルのリスクや労力を抑え、円満に相続を終わらせることを考えるのであれば、遺言執行者として専門家を指定することを検討してください。
特に下記のようなケースは紛争のリスクや、手続き上のトラブルになる可能性が高いので、専門家を遺言執行者に指定することを強くおすすめします。
- 相続人以外の方への遺贈を予定している。
- 特定の相続人に財産のすべて又は大部分を相続させることを予定している。
- 遺産をまったくもらえない又はあまりもらえない相続人がいる。
- 相続人同士の仲が良くない。
- 相続人の中に遺言者と疎遠な方がいる。
- 法定相続人が一人しかおらず、遺言者と年代が近い。
- 前妻・前夫との間に子供がいる。
- 相続人の中に行方不明の方がいる。
- 相続人の中に未成年者や障がい者がいる。
- 相続人の中に認知症の方やそうなる恐れがある方がいる。
- 相続人の中に海外在住の方や外国籍の方又は将来そうなる予定の方がいる。
- 遺言執行者の候補者として配偶者や兄弟姉妹を予定している。
- 遺言執行者の候補者として働き盛りの子供を予定している。
- 相続財産の数や種類が多い。
- 相続財産が高額である。(特に金融資産について)
- 相続財産の大部分を不動産が占める。
- 遺言による寄付や法人の設立を予定している。
- 遺言による認知や廃除を予定している。
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遺言執行者を解任・辞任する場合の手続き
遺言執行者が任務を怠った場合や、解任する正当な理由がある場合、利害関係人は遺言執行者の解任請求を家庭裁判所に対して行うことができます。
解任する正当な理由は、遺言執行者が相続財産を使い込んでいた場合や、病気などで任務が行えない場合などありますが、遺言執行者の報酬が高い場合も解任する理由になり得ます。
一方、遺言執行者に就任した方が、後に健康上の理由等でどうしても職務を行えなくなった場合は、家庭裁判所に辞任許可の申立てを行い、許可を得て辞任することができます。
辞任する際も正当な理由が必要であり、家庭裁判所は遺言執行者の立場や相続財産の代償や相続手続きの難しさなど総合的に判断し、辞任の可否判定を行います。
病気や仕事が多忙になった等の理由であれば認められやすいですが、単に面倒になった等の理由では認められない可能性があります。
相続人の方が遺言執行者になった後、思ったより大変なので辞めたいという相談を受けることがありますが、上記のとおり一度就任を承諾してしまうと辞めるのにも手間がかかるので、遺言書で執行者に指定されていたとしても、引き受けるかどうかはよく考えてから決めましょう。
また、ご自身で執行を行うのが難しい場合は相続に精通した専門家に執行事務の代行を依頼することも検討してください。
遺言執行者についてのよくある質問
ここからは遺言執行者についてのご相談の際によく受ける質問を、Q&A形式で解説します。
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遺言の執行で困ったら専門家に相談しましょう!
遺言書は、遺言者が自分の財産を受け取って欲しい人へ渡すために作成するので、遺言の内容通りに相続財産が行き届くことまで考える必要があります。
相続人同士の関係が良好だと思っていても、実際の関係は当人同士でなければわかりません。
また、揉める心配が無くても、相続発生時の状況によってはスムーズに手続きを行えない可能性もあります。
遺言で遺言執行者を指定しておけば、状況の変化があっても確実にご自身の意思を実現できます。
ただ、相続されるご家族の方を遺言執行者に指定してしまうと、他の方からあらぬ疑いをかけられたりして、かえってトラブルになる可能性もあります。
ただでさえ、遺言執行者には法律で義務や責任が定められているのに、トラブルがあった場合の対応まで任せるというのは一般の方には重過ぎるのではないでしょうか。
相続に精通した専門家を遺言執行者に指定しておけば、ご家族に過大な負担を負わせることなく遺言内容を実現できるので、遺言作成の際は、内容だけでなく、遺言執行まで含めてご検討ください。
遺言執行者への就任を含む遺言作成、遺言執行についてのご相談は当事務所で承ります。ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。
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