先祖代々の土地を流失させないために遺留分の放棄をしてもらいたい…【生前贈与をする代わりに遺留分を放棄してもらいたいケース】

一族代々の土地を長女に継承してもらうため、他の子供には遺留分を放棄してほしい…

ご相談前の状況

遺言書作成含む生前対策をご検討中の方からのご相談。

現時点での推定相続人は子供3人。

相談者様は地主の家系で、先祖から代々引き継いできた土地を、これ以上外部に流失させることなく一族の代表である長女一家にすべて相続してもらいたいという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 遺言書を作成することで、不動産を長女にすべて相続させるという希望は叶うが、相続開始後に遺留分の請求をされる可能性が高い。
  • 死後に遺留分の請求をめぐるトラブルが起きないようにするには、生前に他の相続人に「遺留分の放棄」をしてもらう必要がある。
  • 遺留分の放棄をするためには、被相続人(財産を遺す人)から生前に遺留分相当額の贈与を受ける必要がある。
  • 財産を貰う方の負担にならないように、亡くなった後の手続きについても対策しておく必要がある。

当事務所からのご提案

かつての日本では、不動産等の財産は基本的に「家」に紐づいており、家を継ぐ長男等に代々引き継がれていました。(「家督相続」と言います。)

家制度が亡くなった現在でも、昔からの地主の家系などでは、先祖代々引き継いできた不動産については、一族の代表に引き継いでもらいたいと考える方も多いです。

このような希望は、遺言書を作成することで実現できます。

ただし、相続人には「遺留分」という最低限認められた取り分があり、遺言によって貰える財産がこの遺留分を下回った場合、財産を多く貰った相続人に対して不足分の金銭の支払いを求めることができます。(「遺留分侵害額請求」と言います。)

不動産が遺産の大部分を占める場合、遺留分を計算する際の不動産の評価方法で苛烈な争いが繰り広げられたり、遺留分を支払うための資金の捻出で大変な苦労をするケースも少なくありません。

ご相談者様も不動産は代々守っていって欲しいものの、それが原因で家族が不仲になったり、過大な負担を負わせたりすることは望んでいないとのことでした。

このような場合、生前に「遺留分の放棄」をしてもらうことで、死後のトラブルを回避することができます。

遺留分を生前に放棄するためには家庭裁判所に申立てを行い、許可を得る必要がありますが、放棄が許可されれば、その相続人は死後に遺留分の請求をすることはできません。

ただし、遺留分の生前放棄が認められるためには、「本人の自由意志」「放棄の理由の合理性・必要性」「放棄の代償(見返り)」という3つの要件を満たす必要があります。

特に放棄の代償として遺留分相当額の財産を贈与しなくてはならない、という点がネックになることが多いです。

このケースでは、不動産の価値が高額だったため、遺留分の金額も高額になることが予想されました。

幸い不動産を担保に融資を受けられることになったため、遺言で財産を貰わない相続人二人に対して、遺留分相当額の金銭を贈与する代わりに遺留分の放棄をしてもらうことになりました。

このように解決しました

  • 遺留分放棄の前提として、生前贈与を行うにあたり、贈与契約書を作成し、スムーズな贈与をサポートしました。
  • 遺留分放棄の許可申立ての際には、被相続人の財産目録の提出が必要なため、当事務所で資料を集め、目録を作成しました。
  • 遺留分放棄の要件である「放棄の理由の合理性・必要性」を裁判所にわかりやすく伝えるため、申立ての事情を詳細に記載した「上申書」を作成しました。
  • 作成した書類一式を、戸籍謄本等の必要書類と一緒に家庭裁判所に提出し、遺留分放棄の許可申立てを行いました。
  • 申立て後に裁判所から届く「照会書」について、照会の意図をわかりやく説明し、正確に回答できるようサポートしました。
  • 申立て時の書類や照会書の提出によって、十分に審議可能と判断されたため、裁判官による面接は省略されました。
  • 申立てから2か月ほどで、無事遺留分放棄が許可された旨の通知がありました。
  • 遺留分放棄の手続きとあわせて、長女一家にすべての財産を相続させるという内容の遺言を、公正証書で作成しました。
  • 遺言で当事務所を遺言執行者に指定していただきました。
  • 将来、相続が発生した後の様々な手続きについての負担が無くなったことで、遺言者様亡き後についても安心していただくことができました。

担当者からのコメント

このケースのように、先祖から引き継いできた不動産については、散逸させることなく次の代に引き継いでもらいたいと考える方は多いです。

しかし、特定の方に多くの財産を遺そうとすると、財産を貰えない相続人から不満を持たれ、相続開始後に大きなトラブルに発展する可能性が高いです。

そのようなトラブルを避けるためには、遺言の作成とあわせて遺留分の放棄をしてもらう事が有効な手段となります。

ただ、遺留分の放棄が認められるためには、裁判所が求める許可基準を満たした上、不備のない申立てを行うことが必要になります。

一般の方にとっては、裁判所での手続きや裁判所に提出する書類の作成は馴染みが無くハードルが高いと感じられると思います。

確実に遺留分放棄を認めてもらい、大切な財産を思い通りに受け継がせるためには、遺留分の放棄を含む生前対策全般に強い専門家に相談することをおすすめします。

当事務所では、遺留分放棄の許可申立てをはじめとした相続・生前対策について、数多くのご相談・サポートの実績があります。

遺留分放棄の許可申立てについては、これまでにサポートしたすべてのケースで遺留分放棄が許可されています。(申立てをすれば必ず許可されるというわけではありませんのでご注意ください。)

ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

遺言書の作成を検討されている方はこちら

遺留分の放棄についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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