家業の後継者にすべての財産を相続させたい【家業を継ぐ子供にすべての財産を相続させたいケース】

家業を継ぐ子供に全財産を相続させたい。揉めないためにはどうすればいい?

ご相談前の状況

遺言書の作成を検討されている方からのご相談

現時点での法定相続人はお子様3人。

ご相談者様と亡くなったご主人様は、先代から引き継いだ家業を営んでおり、家業の後継者であるお子様にすべての財産を相続させたいという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 特定の方に財産を一切渡さないのであれば、遺留分請求のリスクについても検討する必要がある。
  • 明らかに不公平な配分となっても、相続人から不満が出にくいように、遺言書を作成した理由や遺言者の想いなどを遺言書に明記する必要がある。
  • 意思能力の問題で後で揉め事にならないように、きちんとした形で作成する必要がある。
  • 万が一、亡くなる順番が逆になった場合に備えて、遺言の中で対策しておく必要がある。
  • 財産を貰う方の負担にならないように、亡くなった後の手続きについても対策しておく必要がある。

当事務所からのご提案

亡くなった後の財産は、その時点の法定相続人全員によって遺産分割協議を行い、相続されるのが一般的です。

しかし、家業・事業を営んでおり、さらに後継者に引き継いでほしいとお考えであれば、後継者となる相続人にすべての財産を相続させたいと希望される方も多いでしょう。

そのような希望は、遺言を遺すことによって実現させることが可能です。

ただし後継者以外の方に一切の財産を相続させないとする場合は、そのことによって後々トラブルにならないか、慎重に検討する必要があります。

なぜなら、法定相続人には法律上保証されている取り分として「遺留分」が定められており、遺言で貰える財産の額がこの遺留分を下回った方は、多く貰った方に対して、死後に遺留分の請求をすることができるからです。(遺留分侵害額請求と言います。)

死後に遺留分の請求をされてしまうと、請求を受けた相続人にとって、精神的にかなりの負担となります。

また、相続人同士の関係が悪化してしまう事もほぼ間違いないでしょう。絶縁状態になることも珍しくありません。

遺されたご家族が「争族」にならないためにも、遺言書を作成するにあたっては、遺留分については考慮する必要があるのです。

今回は家業の継続・発展のためにできれば後継者であるお子様の一人にすべての財産を相続させたいというご希望をお持ちでした。

ただ、遺留分と死後に起こりうるトラブルについて説明したところ、お子様には相続をめぐるトラブルで負担をかけたくないという思いもあるとのことでした。

そこで当事務所で、ご相談者様のお気持ちと、死後に遺留分請求等のトラブルになるリスク、その際に娘様にかかる負担などを考慮し、最もバランスの取れた内容で遺言を作成することを提案しました。

さらに、このまま相続が発生した場合、相続税の納税や、相続手続きの負担がかなり大きくなると思われたので、そちらについても税理士とも協力の上、対策をご提案させていただくことになりました。

このように解決しました

  • 相続関係や財産状況、遺言を遺すにあたっての想い等を詳しく伺い、トラブルになるリスクとお気持ちのバランスを考慮した結果、後継者以外の方にも一定の財産を相続させる内容で遺言を作成することになりました。
  • 遺留分請求のリスクを少しでも減らすために、遺言書を遺した理由や遺言者様の心情、請求を控えて欲しい事等を付言事項に盛り込みました。
  • 万が一亡くなる順番が逆になったときの対策のため、遺言書案は予備的遺言も盛り込んだ内容になりました。
  • 作成した原案を基に調整を行い、司法書士が証人として立ち会いのもと、意思能力についても証拠が残る形で公正証書遺言を作成しました。
  • 将来、相続が発生した後のやり取りについての相続人様の負担を軽減するために、遺言の中で当事務所を遺言執行者に指定していただきました。
  • 相続発生後の様々な手続きや、相続人間でのやり取りについての負担が無くなり、遺言者様亡き後についても安心していただくことができました。

担当者からのコメント

このケースのように、家業を継ぐ後継者にできるだけ多くの財産を相続させたい場合は、生前にできるだけ対策を行っておく必要があります。

家族で経営している事業では、故人の財産が事業と密接に関連していることが多く、それが相続によって分散してしまうと、あっという間に経営が傾きかねません。

しかし一口に対策と言っても、単に遺言を遺せばいいというものではありません。

遺言を書いただけでは遺留分侵害請求のリスクは排除できないため、場合によっては生前贈与、除外合意・特定合意、生命保険の活用、遺留分の生前放棄など様々な対策を組み合わせて実行する必要があります。

そのような対策を自分たちだけで、あるいは(相続問題に詳しくない)顧問税理士との相談だけで決めてしまうのはリスクが高過ぎると言わざるを得ません。

本当に家業・事業の繁栄と家族の幸せを願うのであれば、法務・税務の両面で相続及び事業承継の専門家に相談の上、対策を行うことを強くおすすめします。

当事務所では、相続と事業承継について数多くのサポート実績がございます。専門の税理士と連携の上、万全な相続・事業承継対策をご提案します。

依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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