受遺者が遺贈を放棄した場合、遺産はどうなる?【受遺者が遺贈を放棄したため、相続人間での協議が必要なケース】
遺贈を放棄されてしまったら、遺産はどうなる?
ご相談前の状況
叔母様を亡くされた方からのご相談。
相続人は兄弟姉妹や甥姪計4人だが、遺言書により相続人ではない従弟の方が受遺者として指定されており、遺言執行者として某信託銀行が指定されているとのこと。
ところが受遺者の方からご相談者様に遺贈を辞退したいと相談があり、遺言執行者への連絡を含め、今後必要な手続きについて聞きたいという事で相談にいらっしゃいました。
問題点
- 受遺者が遺贈を放棄した場合、遺贈予定だった財産について相続人全員で遺産分割協議を行わなければならない。
- 遺贈の内容によっては家庭裁判所で遺贈放棄の申述を行わなければならない。
- 遺贈放棄後の財産は遺言執行の対象ではなくなるので、遺言執行者と協議・調整を行わなければならない。
- 遺産分割協議がまとまったら、協議内容に従って各財産の名義変更や解約・分配を行わなければならない。
当事務所からのご提案
亡くなった方の遺産は相続人全員の話し合いによって分け方を決めるのが原則です。
一方、故人が遺言を遺していた場合は基本的に遺言の通りに引き継がれることになります。
ただし遺贈を受けるかどうかは自由なので、受遺者(遺産の受取人として遺言で指定された方)が遺産はいらないと思えば放棄する事もできます。
受遺者が遺贈を放棄した場合、遺贈予定だった財産については原則通り相続人全員で遺産分割協議を行い、分け方を決めることになります。
また、遺贈には包括遺贈と特定遺贈の2種類があり、遺言の中で「遺産全体の2分の1を○○に遺贈する。」という風に割合を指定されている場合は包括遺贈となります。
包括遺贈の受遺者(包括受遺者)は相続人同様の権利義務を有するため、故人のプラスの財産だけでなく、借金等のマイナスの財産も引き継ぐことになります。
そのため、包括遺贈を放棄するためには相続人による相続放棄と同様の手続き、すなわち相続開始後3か月以内の家庭裁判所への申述が必要になります。
今回、遺言書を確認したところ、財産ごとに取得者が定められている特定遺贈の形式でした。
特定遺贈を放棄する場合、相続人へ放棄する旨の意思表示をすればよく、特別な手続きは必要ありません。
ただし、後でトラブルにならないよう遺贈を放棄したことの証明書はもらっておくべきです。
今回、ご相談者様は面倒な手続きについてはすべて専門家に任せたいと希望されていました。
そこで、受遺者や相続人への説明及び意向確認、遺産分割協議の調整、遺贈放棄の証明書や遺産分割協議書の手配、その後の名義変更や解約・分配まで、この度の相続に必要な一切の手続きを代行・サポートさせていただくことを提案しました。
遺贈放棄の結果、遺言執行者の立場はどうなる?
このケースでは、故人は信託銀行の遺言信託サービスを利用して遺言書を作成されており、遺言執行者として信託銀行が指定されていました。
遺言執行者は遺贈を履行できる唯一の立場であり、遺言の執行に必要な一切の行為を行う事ができます。(民法1012条)
しかし、遺言執行者はあくまで「遺言の内容を実現するために」必要な行為を行えるのであり、今回のように遺贈が放棄された後の相続人による遺産分割協議や相続手続きにまで関与できるわけではありません。
今回、遺言の内容としては従弟の方への遺贈分が遺産の半分以上を占めていました。
放棄されない残りの部分については遺言執行者が執行するのが原則ですが、ほとんどの手続きを自分たちで行うにも関わらず、執行報酬として100万円以上を支払わなくてはならないというのは、さすがにコストとして高すぎます。
幸い、遺言執行者として正式に就任承諾する前だったので、多少キャンセル料はかかる可能性はありますが、事情を説明すればキャンセルはできるものと思われました。
※正式に就任した後は、家庭裁判所の許可を得なければ辞任する事はできません。
そこで、ご相続人様から信託銀行に遺言執行のキャンセルの申出をしていただき、放棄しない部分の遺贈の履行についても、当事務所で代行・サポートさせていただくことになりました。
このように解決しました
- 受遺者に遺贈の放棄についての意向を確認の上、遺贈放棄の証明書を作成し、署名捺印をいただきました。
- 相続人全員の同意の元、信託銀行に遺言執行契約の解除を申し入れ、応じてもらうことができました。
- キャンセル料として十数万円かかりましたが、当事務所の報酬と併せても、大幅に費用を節約することができました。
- 相続人の皆様に経緯を説明の上、遺産分割の話し合いをサポートさせていただきました。
- 話し合いがまとまった後、遺産分割協議書を作成・送付し、署名捺印をいただきました。
- 戸籍収集、不動産の名義変更、預貯金の解約及び分配など、遺産承継に必要な一切の手続きを代行し、相続人様の負担なく終える事ができました。
担当者からのコメント
このケースのように、受遺者が遺贈を放棄した結果、故人が遺した遺言と違う内容で相続することになるケースは稀にあります。
特定遺贈については放棄の意思表示で効力は発生するのですが、実務上は後でトラブルにならないように、放棄した旨の証明書を作成した上、署名と実印で押印を貰い、印鑑証明書も提出してもらいます。
しかし知識のない一般の方が、受遺者や相続人に説明の上、そのような処理を滞りなく行う事はなかなか難しいでしょう。
また、包括遺贈を放棄する場合は3か月以内に家庭裁判所での手続きが必要となるため、より迅速な手続きが求められます。
相続放棄は聞いたことがあっても、遺贈の放棄で同様の手続きが必要と知っている方は少ないでしょうから、気づいたら3か月を過ぎてしまっていたという事もあり得ます。
遺贈を放棄する事情は様々ですが、放棄することでトラブルになる事は誰も望まないでしょう。
遺贈の放棄を検討している方や放棄によって遺産分割協議等が必要になった方は、相続に精通した専門家に相談の上、適切に対応しましょう。
当事務所は、面倒な相続手続きをまるごとおまかせいただける「相続まるごとおまかせプラン」をはじめとしたサービスを提供しており、遺贈を放棄した場合の相続手続きについても数多くのサポート実績がございます。
ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。
相続まるごとおまかせプランについてくわしくはこちら
遺贈の放棄についてくわしくはこちらをご覧ください。
※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。
お電話でのお問合せはこちら(通話料無料)
0120-546-069