借地を相続したが契約内容も地主の連絡先も不明…【相続した借地について名義変更のほか契約内容の確認が必要なケース】

借地権を相続したが、地主の連絡先すらわからない…

ご相談前の状況

叔母様を亡くされた方からのご相談。

相続人は兄弟姉妹及び甥姪。

故人の遺言により、自宅建物とその敷地についての借地権をご相談者様が相続されたとのこと。

ところが遺言書には借地権の詳細について記載がなく、賃貸借契約書も見当たらないため、地主に連絡を取ることもできず、困り果てて相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 建物については、戸籍謄本等の必要書類を集め、相続登記を行う必要がある。
  • 借地権については相続登記とは別に、地主に連絡を取り、名義変更手続きを行う必要がある。
  • 賃貸借契約書が見当たらないため、地主の連絡先が分からない。
  • 未納地代がある場合、支払いについて話し合いをしなければならない。

当事務所からのご提案

他人が所有している土地の上に自分名義の建物が建っている場合、地主(土地所有者)に対して地代を支払っていれば、建物所有者には「借地権」という権利が発生します。

借地権はれっきとした権利であり、権利者が亡くなれば遺産として相続の対象になります。

その際、遺言書で取得者が指定されていればその方が借地権を引き継ぐことになります。

借地権を引き継ぐための手続としては、通常、以下の2つが必要になります。

  • 地主に連絡を取り、建物所有者に相続が発生した旨を通知し、今後の地代の支払方法等を確認する。必要であれば地主が指定する書面を提出する。
  • 建物について相続人名義への所有権移転登記(相続登記)を行う

上記のうち②については、遺言により特定の相続人が不動産取得者として指定されている場合、その方が単独で名義変更手続き(相続登記)を行う事ができます。

また、①についても通常は賃貸借契約書等の書面で地主の連絡先が把握できるので、それほど難しくはありません。

※地主によっては細かく手続き方法や提出書類を指定されることもあるので、早めに連絡を取りましょう。

しかし、今回は故人宅を探しても土地賃貸借契約書など地主の連絡先が分かる書面は見つかりませんでした。

また、遺言書にも「上記の建物の敷地に関する権利」と記載されているのみで、地主の名前などは記載されていませんでした。

これでは契約内容の詳細を確認するために地主に連絡を取ることもできません。

そこで、まずは当事務所で建物の敷地の登記簿謄本を取得して、登記簿上の土地所有者の住所氏名を確認し、手紙を出すことを提案しました。

借地契約更新に伴い契約の結び直しは必要?

ご依頼をいただいてから、早速登記簿上の所有者に連絡がほしい旨の手紙を出したところ、数週間後に親族の方から連絡がありました。

曰く、借地の管理については代理人弁護士に任せているのでそちらとやり取りをして欲しいとの事でした。

その後、弁護士と連絡を取り借地契約の内容やこれまでの経緯について詳細を確認する事ができました。

その中で地代が数年分未納になっていることが判明しました。

また、当初の契約から60年以上経過しているが一度も更新料が支払われていないため、契約を継続するのであれば、更新料含め契約内容について改めて相談したいとのことでした。

そこで未納地代については金額の確認が取れ次第すぐに支払う事を約束し、更新料の支払いや契約内容の見直しについては、ご依頼者様の意向を確認の上返答することになりました。

借地権者に相続が発生すると地主から賃貸借契約の結び直しを求められることはたびたびあります。

しかし、借地権は建物の相続人に当然に承継されるものであり、新賃借人は従前の契約内容をそのまま引き継ぐので、法律的には再契約の必要はありません。

また、契約更新についても契約に定めがなければ支払い義務はなく、当初の契約期間が満了しても、旧借地法や借地借家法の規定により法定更新されるのが原則です。

ただ、今回は故人が数年間地代を滞納しており、そのことを理由に契約を解除されても仕方のない状況でした。

また、建物が古いため、今後立て直し等で地主の承諾が必要になる可能性が高い事を考えると、地主と良好な関係を築いておくメリットも軽視できません。

今回、ご依頼者様に上記を説明した結果、せっかく故人から引き継いだ土地なので、今後も友好的に利用を継続したいとの意向でした。

そこで、地主側から提示された更新料や新たな契約の条件が不当なものでなければ、更新料の支払いや再契約の締結に応じる方向で進めることになりました。

このように解決しました

  • 戸籍謄本や不動産に関する資料を収集し、建物について相続登記を申請しました。
  • 建物敷地の登記簿謄本を確認し、登記簿上の土地所有者に手紙を出しました。
  • 地主の代理人弁護士と連絡を取り、未納地代の支払いについて取次ぎを行いました。
  • 相続登記の完了後、改めて地主側と連絡を取り、更新料や再契約の内容について確認をしました。
  • 更新料や契約内容が問題のないものだったので、更新料の支払いや再契約締結について取次ぎを行いました。

担当者からのコメント

借地権の相続に伴う名義変更手続きは、建物の相続登記が必要なこと以外は基本的に地主の指示に従えばよく、それほど難しいものではありません。

ただし、今回のように地主の連絡先や契約内容が全く不明な場合、知識のない一般の方にとって難易度は格段に跳ね上がります。

悪質な地主の場合、賃借人に知識がないと思って、自分に有利な内容で再契約を求めてきたり、法外な承諾料や更新料を請求されたりする事もあります。

今回のようなケースは例外として、相続による名義変更の際には承諾料はもちろん更新料も払う必要はないのですが、地主から言われたら断り辛いという方もいるでしょう。

借地権については、借りているだけなので財産的価値はないという認識の方も多いのですが、実際にはかなり強力な権利であり、都心部などの地価の高い地域では数千万円で取引される事も珍しくありません。

しかし、契約内容が明確でなかったり地主との間にトラブルを抱えていたりすると、とたんに価値は下落し、手放そうにも引き取り手がないという事態に陥りかねません。

いずれにせよ建物の相続登記は必要になるので、借地に関するトラブルを抱えたくないという方は、相続が発生したら、相続に精通した司法書士に早めに相談することをおすすめします。

当事務所では、名義変更手続きからその後の売却手続きまでおまかせいただいたケースなど、借地権の相続について数多くのサポート実績がございます。

ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。

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※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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