保険金や個人年金は遺言執行の対象になる?【保険契約や共済契約が多数あり、かつ遺言執行者が指定されているケース】

遺言執行者に指定された!でも自分でできるか不安…

ご相談前の状況

叔父様が亡くなられた方からのご相談。

相続人は兄弟姉妹や甥姪たち。

遺産については、生前特に親しかったご相談者様と妹様にすべて相続させる内容の遺言があり、二人が遺言執行者に指定されているとのこと。

不動産や預貯金の他に、故人が加入していた保険や共済等が多数あるが、すべて遺言の対象になるのか、他の相続人への連絡は必要かなど、遺言執行の範囲や実務対応について不安があるという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 遺言執行者の義務として、相続人全員の住所を調べ、通知しなければならない。
  • 遺言執行者の義務として、財産調査を行い、財産目録を作成しなければならないが、財産の種類が多く、調査するだけでも大変。
  • 保険金や個人年金、共済金などは、受取人の固有財産になるのか遺言の対象になるのかきちんと確認の上、処理する必要がある。
  • 相続人の中には疎遠な人も多く、出来れば直接やり取りをしたくない。
  • 仕事が忙しく、遠方在住のため、自ら遺言執行を行うのは難しい。

当事務所からのご提案

亡くなった方が遺言を遺していた場合、遺産は遺言に従って承継されることになります。

また、遺言の中で遺言執行者が指定されていれば、執行者が遺言の内容を実現するための手続き(金融機関の解約や不動産の名義変更など)を行う事になります。

遺言執行者は、他の相続人の協力を得ることなく単独で手続きを行う事ができます。

また相続人による一切の妨害行為が禁止されるなど、独占的な立場にあります。

その代わり遺言執行者には法定の義務が課されています。その中でも特に重要なのが、相続人への通知(民法1007条)と相続財産目録の交付(民法1001条)です。

今回は不動産や預貯金などの他に故人が加入していた保険契約や共済契約が多数あり、全容を把握するだけでもかなり手間がかかるため、お仕事で忙しいご相談者様の手には負えそうもない状況でした。

また、相続人の中にはほぼ面識のない方やあまり関係の良いとは言えない方もいて、遺言執行者の義務とは言え、直接連絡をすることはできれば避けたいとお考えでした。

そこでまずは当事務所で戸籍等の必要書類を集めるとともに、相続財産の調査を行い、その後遺言執行者の義務を果たすべく、各相続人への通知や財産目録の交付をサポートさせていただくことを提案しました。

保険金や個人年金は遺言執行の対象になる?

遺言執行を行うにあたっては、遺言執行の対象となる財産を正確に把握し、漏れなく手続きを行う必要があります。

しかし中には遺言執行の対象になるか判断が付きづらいものもあります。代表的なのは、生命保険、個人年金保険などの保険契約や共済契約です。

まず、死亡保険金や死亡共済金については、基本的に受取人が指定されていることが多く、指定がない場合も規約で定められた優先順位にしたがって受取人が決まることがほとんどです。

受取人が指定されている場合や、規約で受取人の優先順位が定められている場合、死亡保険金や共済金は受取人の固有財産となるため、遺言執行の対象にはなりません。

また、故人が加入していた民間の個人年金保険の死亡一時金等についても、特定の受取人が指定されているか、規約で優先順位が決まっていることがほとんどであり、遺言執行の対象になるケースはほとんどありません。

一方、生前に満期を迎えたものの未請求であった養老保険の満期保険金や、医療保険の給付金、県民共済の出資金などは、本来は亡くなった契約者が受け取るべきものなので、相続財産として遺言執行の対象になります。

医療給付金や出資金は死亡保険金を請求すると一緒に支払われることがほとんどなのですが、厳密には遺言の対象か否かで受取人が異なるため注意が必要です。

この他にも、自動車保険や火災保険・地震保険などの損害保険契約についても相続財産として遺言執行の対象になりますが、これらはほとんどが掛け捨て型で、解約返戻金の金額も少額であることが多いので、大きな問題にはなる事は少ないでしょう。

※ただし、JA(農協)の建物更生共済(通称:建更)については、満期金がある積立型の保険のため、相続財産としてきちんと処理すべきです。

今回、故人は各種の保険や共済に多数加入されており、そのすべてについて遺言執行の対象になるか否かを確認するのは普通の方にはとても面倒な作業でした。

そこで当事務所で各保険会社等に連絡を取り、書面や口頭での確認を行い、一つ一つ正確に処理することを提案しました。

このように解決しました

  • 戸籍謄本等の必要書類を集め、各相続人へ就任承諾の旨と遺言の内容を通知しました。
  • 残高証明書や名寄帳の請求など、相続財産の調査を行い、財産目録を作成し、各相続人に交付しました。
  • 保険や共済契約については、一つずつ契約内容の精査を行い、遺言執行の対象となるものは、執行者の代理人として請求・分配を行いました。
  • 遺言執行の対象にならない保険金や共済金についても、受取人の方から個別にご依頼をいただき、請求・分配を代行しました。
  • その他、預貯金の解約・分配や不動産の名義変更等も代行し、ご依頼者様の負担なく、全ての手続きが完了しました。

担当者からのコメント

遺言執行者は基本的に誰でもなれるため、相続人や受遺者本人が遺言執行者として指定されているケースは少なくありません。

しかし、遺言執行者には法定の義務があり、義務を怠ると損害賠償責任などを負う可能性があります。

後で責任を追及されないためには、執行の対象財産を正確に把握して、財産目録の作成や、解約・換金・分配等の処理を行わなくてはなりません。

しかし、それまで全く経験のない事を適切に処理できる自信があるという方は少ないでしょう。

費用を節約しようと自分でやった結果、トラブルになってしまい、解決のために大きな費用や手間を費やすことになってしまっては元も子もありません。

遺言を遺される方も大切な家族がいたずらに苦労する事は望んでいないでしょう。

不要なトラブルを抱えないよう、遺言書で遺言執行者に指定された方は、遺言執行及び相続実務に精通した専門家に相談の上、代行を依頼する事も検討してみてください。

当事務所では、遺言執行者として、または遺言執行者の代理人としてこれまでに多数の遺言執行・執行サポートの実績があり、多種多様な財産がある遺言執行手続きについても数多くのご相談・ご依頼をいただいております。

ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

遺言作成・遺言執行サポートについてくわしくはこちら

遺言執行者の職務や遺言執行の流れについてくわしくはこちらをご覧ください。

個人年金等の私的年金の死後手続きについてくわしくはこちらをご覧ください。

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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