15年前に死亡した父名義の不動産、兄の借金と一緒に相続放棄できる?【兄の相続放棄と同時に先に死亡した父の相続放棄をしたいケース】

15年前に他界した父の相続放棄もしないといけない?

ご相談前の状況

お兄様が亡くなられた方からのご相談。

故人には配偶者も子供もおらず、両親ともすでに亡くなっているため、相続人はご相談者様お一人。

兄は数年前から体を壊していて、借金もありそうなので相続放棄を検討しているとのこと。

財産の中に実家不動産があるが、15年以上前に亡くなった父名義のままかもしれないので、そちらの処理方法についても確認したいという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 不動産が父名義のままの場合、兄だけでなく父についても相続放棄を検討する必要がある。
  • 相続放棄は基本的に死亡事実を知ってから3か月以内に裁判所に申し出る必要があるが、父についてはすでに死亡から15年以上が経過している。
  • 早く相続放棄をしなければ、固定資産税の納税義務が課される可能性がある。

当事務所からのご提案

亡くなった方に借金等の債務がある場合、家庭裁判所で相続放棄の手続きを行う事で支払いを免れることができます。

相続放棄する場合、債務だけでなくプラスの財産も放棄することになります。

放棄対象の被相続人が、先に亡くなった他の方の財産を相続しているケースでは、その相続した財産も放棄することになります。

今回、先に亡くなったお父様の相続関係について詳しくお話を伺ったところ、以下のような状況でした。

  • 父が亡くなったのは15年以上前
  • 兄は父と同居しており、生前から面倒を見ていたため、実家不動産を含む父の財産はすべて兄が相続するものと思っていた。
  • 遺産分割協議書などは作成した覚えはないが、父の財産は生前からすべて兄が管理していて、ご相談者様はまったく受け取っていない。
  • 役所からは亡くなった後もお父様の名義で固定資産税の納税通知書が届いている。
  • ご相談者様は実家から遠く離れて暮らしており、調査することも難しい状況であった。

上記の事情からすると、父の財産はすべて兄が相続しているという事で、兄の相続放棄をすれば大丈夫なようにも思われます。

しかし、不動産に関して言えば、第三者との関係では登記名義人が所有者とされます。そして上記事情からすると登記名義は父のままである可能性が高いと思われました。

実際に登記簿を確認したところやはり不動産は父名義のままで、さらに父と兄を債務者とする抵当権まで設定されていました。

本来であれば遺産分割協議を行い、兄の名義にしておくべきだったのですが、登記をしていない以上、対外的には不動産は相続人である兄とご相談者様の共有状態であったと解されます。

また、固定資産税は不動産の登記名義人に対して課税されますが、名義人死亡の事実を役所が把握した場合は、役所の判断で相続人代表者が納税義務者(納税管理人)に指定されることがあります。

つまり今回、例え兄の相続放棄をしたとしても、登記名義人である父の相続人であるご相談者様が、固定資産税の納税義務を負う可能性があるという事です。

これを避けるためには、兄だけではなく父についても相続放棄を行う必要があります。

相続開始から長期間経過後に相続放棄ができる場合とは?

相続放棄の期限は、原則として相続発生日から(又は死亡の事実を知ってから)3か月以内とされているため、今回のように相続発生から15年以上経過しているような場合は、もはや相続放棄できないようにも思われます。

しかし、期限内に相続放棄をしなかった(若しくはできなかった)ことについて相当な理由がある場合は、相続発生から3か月以上が経過していても放棄が認められることもあります。

今回のケースでは、亡くなった事実については死亡当日から知っていましたが、前出の状況からすると期限内に相続放棄をしなかったことについて相当な理由があるものと思われました。

そこで、当事務所で期限内に相続放棄できなかったことについて説明し、相当な理由があったことを認めてもらうための上申書(事情説明書)を作成し、父兄の相続放棄の申述書と一緒に提出させていただくことを提案しました。

また、実家から遠く離れて暮らしており戸籍等を集めるのも難しいとのことだったため、戸籍収集をはじめ、裁判所から届く照会書の回答支援、相続放棄が認められた後の役所や債権者への通知まで、一貫してサポートさせていただくことになりました。 

このように解決しました

  • 期限内に父の相続放棄をしなかったことにつき相当な理由があったことを裁判所に認めてもらうための上申書を作成しました。
  • 相続放棄に必要な戸籍等の収集や申述書の作成も代行し、上申書と一緒に裁判所に提出しました。
  • 相続放棄申述書提出後に裁判所から届く照会書(回答書)について回答をサポートしました。その結果、父兄ともに相続放棄が認められました。
  • 相続放棄が認められた後、相続放棄申述受理証明書の取得及び役所や債権者への通知もサポートさせていただきました。

担当者からのコメント

このケースのように、遺産分割協議や相続登記未了のまま次の相続が発生してしまい、かなり昔に亡くなった方について相続放棄が必要になるケースは稀にあります。

先に発生した相続について、プラスの財産を一切受け取っていなければ、今回のように相続発生から長期間経過していても相続放棄できる可能性はあります。

ただし、長期間経過後の相続放棄を認めてもらうためには、裁判所にきちんと事情を説明し、納得してもらう必要があります。

一般の方が、自分自身で事情を説明することはとても難しいでしょうから、相続に精通した専門家に相談のうえで、手続きを進めることを強くおすすめします。

当事務所では10年以上前に亡くなった親族の相続放棄など、長期間経過後の相続放棄について数多くのサポート実績があり、そのほとんどが受理されております。

ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

スピーディに相続放棄をお手伝い!くわしくはこちら

3か月経過後の相続放棄についてはこちらの記事もご参照ください。

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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