父名義の自宅兼アパートをリフォームするので生前贈与してもらいたい【子の資金負担でリフォームする際に自宅不動産を贈与するケース】

親名義の不動産を息子のお金でリフォームしたい。税金はどうなる?

ご相談前の状況

生前贈与をご検討中の方からのご相談。

お父様所有の自宅兼アパートについて築年数が古くなってきたので、大幅なリフォームをして収益を上げるとともに、家族が今後も快適に暮らせるようにしたいとのこと。

リフォーム資金については、安定した収入があるご相談者様名義でローンを組むつもりだが、建物が親の名義のままだと子から親への贈与として贈与税が課税されてしまうと聞いて、相談にいらっしゃいました。

問題点

  • リフォーム代を負担した人が建物所有者以外の場合、リフォーム部分について贈与税の課税対象となってしまう。
  • 建物を子供に贈与する場合、高額の贈与税がかかる可能性があるので、相続時精算課税制度の利用を検討する必要がある。
  • 相続時精算課税制度を利用する場合、メリットだけでなく利用によるデメリットも検討する必要がある。
  • 相続時における小規模宅地等の特例の適用可否など、贈与によって将来的に税務上不利にならないか検討する必要がある。
  • 賃貸物件について敷金を預かっている場合、負担付贈与にならないよう気を付ける必要がある。
  • 贈与の翌年に贈与税の申告をしなければならない。

当事務所からのご提案

親子で同居している場合、自宅をリフォームするにあたり建物所有者の親は高齢でローンを組めないため、現役世代の子供がローンを組んでリフォーム代を負担する事があります。

この場合、親子間に直接的な金銭のやり取りがあるわけでは無いので、贈与税の問題は生じないように思えます。

しかし、実はリフォーム代を負担した人が建物所有者以外の場合、リフォーム部分については「資金を負担した人から建物所有者への贈与」と取り扱われ、贈与税の課税対象となります。

今回は賃貸併用住宅だったため、大規模改修による収益の増加を見込んで、高額のリフォーム費用を金融機関から借り入れる予定でした。

しかし現状の賃料収入はそれほど多くなく、建物所有者であるお父様名義では高額の借り入れは難しいため、職業柄安定収入が見込めるご相談者様名義で融資を受けることになっていました。

このままでは子から親への贈与という事で、お父様に1,000万以上の贈与税が課税されてしまいます。

このような場合、リフォームする建物を贈与して建物所有者と資金負担者を一致させれば、リフォームによって贈与税がかかることはありません。

ただし、その場合建物の贈与に対して贈与税がかかります。

古い木造の自宅であれば気にするような金額ではありませんが、賃貸併用のしっかりした作りの建物であれば評価額が数百万円になり、高額の贈与税がかかることもあります。

そこで今回は、税理士と連携の上、「相続時精算課税制度」を利用して建物を贈与することを検討することを提案しました。

相続時精算課税制度を利用する場合の注意点とは?

相続時精算課税制度とは簡単に言うと「親から子や孫へ生前贈与する際に2,500万円までは非課税で贈与できる制度」です。

これだけ聞くと夢のような制度に聞こえますが、実際には利用によるデメリットもあります。

特に相続税との関係では

  • いったん制度を利用すると暦年贈与による節税効果は小さくなる。
  • 小規模宅地等の特例の適用を受けられなくなる。

という2点については十分に気を付ける必要があります。

この点について当事務所と税理士で連携して制度利用のメリットとデメリットを比較検討したところ

  • ① については、不動産以外に父にめぼしい財産は無いため暦年贈与の予定は無い。
  • ②については、「土地」については贈与しないため、将来特例の適用を受けられる。

ということで大きなデメリットは無い一方

「賃貸物件を贈与することで、今後の賃料収入はお子様のものとなるため、結果として相続税の節税につながる。」

という大きなメリットがあると判断しました。

そこで、当事務所で贈与契約書を作成し、お父様とお子様それぞれに署名捺印をいただく手配をし、その後速やかに贈与に伴う不動産の名義変更手続き(所有権移転登記)を行う事になりました。

また、賃貸物件に関して敷金を預かっている場合、贈与の仕方によっては負担付贈与とされ、不動産の評価額が高額になってしまう可能性があります。

※負担付贈与の場合、贈与税・相続税評価ではなく時価で評価しなくてはならないため。

今回も敷金を預かっていたので、不動産と一緒に敷金相当の金銭を贈与することで、負担付贈与にならないように贈与することになりました。

このように解決しました

  • 不動産及び敷金相当の金銭を贈与する内容の贈与契約書を作成し、お父様とお子様のご署名ご捺印をいただきました。
  • その他の必要書類を整え、法務局に贈与による所有権移転登記を申請しました。
  • 登記完了後、相続時精算課税制度の利用と贈与税の申告に必要な資料を、税理士に連携しました。

担当者からのコメント

親が子供のマイホームのリフォーム代を出してあげることはよくあります。

また、今回のように子が親のリフォーム代を出すケースも、増改築して二世帯住宅にする場合など、決して珍しい話ではありません。

親子という事もあって気にしない方も多いのですが、税務署の調査能力は高く、リフォームした事はすぐに把握されるので、そのままにしておくと後になって高額の贈与税が課税される可能性が高いです。

また、今回は最適解となりましたが、相続時精算課税制度は使い方によっては、節税効果が少ないどころか逆効果になってしまう事さえあります。

幸い今回は事前に相談していただいたために、税務面の問題もなく最良の方法を選択することができましたが、ネットや本で得たあいまいな知識で生前贈与等の相続対策を実行したために、後で大変なことになってしまったケースはいくらでもあります。

良かれと思ってした行動が、大切な家族を苦しめるようなことの無いように、生前贈与等の相続対策は相続・贈与に詳しい専門家に相談の上、実行することを強くおすすめします。

当事務所では、不動産の生前贈与をはじめとした相続対策について数多くのサポートの実績がございます。

ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

相続対策・生前贈与を検討されている方はこちら

相続時精算課税制度についてくわしくはこちらをご覧ください。

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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