相続人である子が相続放棄した結果、相続人が大幅に増えてしまった…【子供全員が相続放棄して兄弟姉妹や甥姪が相続人になったケース】

相続放棄した結果、手続きの負担が重くなってしまった!

ご相談前の状況

お母様が亡くなられた方からのご相談。

お母様ご自身の相続人はご相談者様を含む子供二人だが、お母様が亡くなる少し前に配偶者が亡くなっているとのこと。

亡配偶者には相続人として後妻であるお母様の他に前妻との間の実子が二人いて、ご相談者様は直接の相続人ではないが、相続人であるお母様が亡くなったため二次相続人として手続きをしなければならないという複雑な状況。

相続人である実子とコンタクトを取ったところ、「父とは長い間疎遠だったので相続放棄を検討している。」と言われたため、どのように動くべきかわからないという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 先順位相続人である子供が全員相続放棄すると、次順位相続人に相続権が移ってしまう。
  • 相続放棄された場合、すでに亡配偶者の父母は無くなっているため、兄弟姉妹や甥姪が相続人になるが、かなり人数が多い。
  • 兄弟姉妹や甥姪は全国各地に散らばっており、高齢者も多いため、連絡を取ったり話をまとめたりするのが大変。
  • 遺産分割の話がまとまっても、遺産分割協議書に署名捺印をもらうためのやり取りに手間がかかる。

当事務所からのご提案

亡くなった方に子供がいる場合、配偶者及び子供が相続人になります。

また、被相続人(亡くなった方)の死亡後に相続人が亡くなった場合、その方の相続人がその地位を引き継いで相続人になります。(二次相続人)

このケースでは、お母様の死亡によってご相談者様たちが二次相続人になったため、亡配偶者の実子二人と遺産分割の話し合いをしなければならないという状況でした。

ところが、実子二人は、被相続人と長い間やり取りが無く、あまり関わりたくないため相続放棄を検討しているとのことでした。

この場合、相続人である実子二人が相続放棄をすると、次順位の相続人に相続権が移ります。

相続の優先順位は子(孫)→直系尊属(父母・祖父母)→兄弟姉妹(甥姪)の順ですが、今回はすでに父母・祖父母は亡くなっていたため、兄弟姉妹や甥姪に相続権が移ることになります。

亡配偶者の兄弟姉妹や甥姪は10人近くいて、全国に離れて暮らしおり、高齢の方も多いです。

実子二人に相続放棄されてしまうと、手続きの負担が大きく増えることは間違いありません。できれば実子二人に協力して貰い、手続きをスムーズに進めたいところです。

そこで、まずは実子二人に事情を説明し、決して迷惑はかけないので、相続放棄ではなく相続分を譲渡してもらえないか、お願いしてみることを提案しました。

先順位相続人が相続放棄してしまうと相続手続きがとても大変になることも

上記の提案について、ご相談者様から実子二人にお願いしたところ、「事情は理解できるが、万が一父に借金などがあった場合に困るので、やはり相続放棄します。」という回答がありました。

※相続分の譲渡では、借金があった場合に債権者からの請求を拒めません。

実際には亡配偶者には借金などはなく、プラスの財産もそれなりにあったのですが、本人の意志が固い以上、相続放棄を止めることはできません。

仕方がないので、実子二人には相続放棄が受理されたことの証明書を送ってもらうようお願いし、改めて相続手続きを進めていくことになりました。

相続手続きを進めるにあたっては、まずは戸籍を集めて相続人を確定する必要がありますが、兄弟姉妹や甥姪が相続人になる場合、膨大な量の戸籍が必要になります。

また、子供同士とは違い、長い間連絡を取ったことがない方や全く面識がない方がいることも少なくありません。

このケースもまさにそのようなケースであり、相続人はご相談者様含め10名にもなり、全国各地にばらばらに暮らしていました。

また、ご相談者様と亡配偶者はあまり交流が無かったので、兄弟姉妹や甥姪とはほぼ面識がない状況でした。

このような場合に、無理に自分で進めようとするとかえって事態が複雑化し、取り返しのつかないことになる可能性が高いです。

そこで、まずは当事務所で戸籍等を収集し、相続人の確定や連絡先住所の調査を行うとともに、相続財産調査を行った上で各相続人へ開示するための財産目録を作成することを提案しました。

その後、各相続人にコンタクトを取り、財産目録を開示した上で手続きへの協力をお願いし、話がまとまった場合は公平な第三者としてその後の手続きを進めていくことになりました。

このように解決しました

  • 膨大な量の戸籍を取集し、相続人を確定しました。
  • 面識のない相続人については、戸籍の附票を取得して現在の住所を確認しました。
  • 相続財産の調査を行い、財産目録を作成して相続人の皆様に開示しました。
  • 全国の相続人に手紙を出し、丁寧に事情をご説明しました。結果、無事手続きに協力してもらえることになりました。
  • 話し合いがまとまったため、相続分譲渡証明書や遺産分割協議書等を作成し、署名捺印をいただく手配をしました。
  • 遺産分割協議成立後は、協議内容に従って相続登記や預金の解約及び分配を行いました。

担当者からのコメント

先順位相続人が相続放棄した結果、相続人が増えてしまうケースは珍しくありません。

その多くはプラスの遺産を上回る借金があるため相続放棄を選択するケースですが、時にはこのケースのように「被相続人と疎遠だったため関わりたくない」という理由で相続放棄を選択される場合もあります。

借金などの負債が無ければ、相続放棄ではなく、遺産分割協議を行う、相続分を譲渡してもらう等の方法を選んだ方が、お互いに手間が少なくメリットも大きいです。

今回はうまくいきませんでしたが、事情を丁寧に説明すれば、遺産分割協議や相続分の譲渡に応じてくれることも多いです。

ただ、普通の方が法律的な事項や手続きについて正しく理解した上で、適切な手続きを選択し、必要な書類を作成するのはかなり難易度が高いかもしれません。

相続放棄をすることで手続きが複雑化する恐れがある場合は、事前に相続の専門家に相談の上、適切な方法を選択することをおすすめします。

当事務所では、兄弟姉妹や甥姪が相続人になるケースや、疎遠な相続人がいるケースなど難易度の高い相続手続きについて数多くのサポート実績がございます。

ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。

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兄弟姉妹が相続人になる場合の相続手続きについてはこちらの記事をご覧ください。

甥や姪が相続人になる場合の相続手続きについてくわしくはこちら

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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