便宜上単独名義にした不動産の売却代金分配を第三者に任せることはできる?【相続人同士が疎遠で不動産売却代金分配を任せたいケース】

過去にトラブルがあった叔父と連絡を取りたくない…

ご相談前の状況

ご祖母様が亡くなられた方からのご相談。

相続人は二男及び代襲相続人(亡長男の子)である孫(ご相談者様)の2名。

遺産のうち不動産については早期に売却して代金を分けたいが、もう一人の相続人である叔父は健康状態が悪く、また過去にトラブルもあったため積極的に連絡を取りたくないとのこと。

スムーズに売却を進めるためにご相談者様の単独名義にすることで合意はできているが、代金分配については公平のため専門家に任せたいという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 不動産は売却することで合意しているが、共有名義にすると売却活動の際に支障が出る可能性があるので便宜上単独名義にしたい。
  • 相続人間のやり取り、特に代金分配については公平のため信頼できる第三者に任せたい。
  • 売却の前提として、戸籍等の必要書類を集めて相続人名義への相続登記を行う必要がある。

当事務所からのご提案

遺産の分け方にはいくつかの方法がありますが、遺産の大部分を不動産が占める場合、公平に分けるために不動産を売却して代金を分ける(換価分割と言います。)ケースは少なくありません。

このケースでも、ご相談者様は遺産である不動産にお住まいでしたが、預貯金等他の財産が少なく、代償金として支払うお金もないため、換価分割の方法を選択することになりました。

ただ、このケースでは相続人同士で過去に金銭的トラブルがありました。

すでにその件は解決したものの、そのような経緯から、手続きに必要な書類のやり取り等はできるだけ第三者を通して行いたいと希望されていました。

特に売却代金の清算・分配については、再びトラブルにならないよう、公平な第三者に任せたいとのことでした。

そこで、当事務所で売却の前提となる相続登記について、必要な戸籍収集や遺産分割協議書の手配等含めて代行させていただき、売却後の経費の精算及び代金の分配についても代行させていただくことを提案しました。

売却活動のために便宜上単独名義にする場合の注意点は?

不動産を換価分割する場合、いったん複数の相続人での共有名義の登記を入れ、相続人全員が協力して売却活動を行うケースが一般的です。

しかしこのケースでは、もう一人の相続人である叔父様は健康状態が悪く連絡が取りづらいため、共有名義にしてしまうと売却活動や諸手続きに時間がかかってしまい、売り時を逃してしまうかもしれないという事を懸念されていました。

ただ、単純に単独名義にしてしまうと、実態と異なる形で譲渡所得税や贈与税が課税されてしまうリスクがあるため、「換価分割の前提として便宜上単独名義にする」ことを遺産分割協議書等に明示しておくことが必要になります。

しかし一方で、「便宜上」という文言が入った協議書では登記申請が通らない可能性があります。

そこで、当事務所で関係各所に確認の上、登記実務及び税務の両面から問題ないような遺産分割協議書を作成し、ご相談者様単独名義の相続登記を行うことを提案しました。

このように解決しました

  • 法務局及び税務署に確認の上、課税問題が生じない内容の遺産分割協議書を作成しました。
  • ご相続人様が直接やり取りをしないで済むよう、郵送で個別に遺産分割協議書等への署名捺印をいただくよう手配しました。
  • 戸籍謄本その他の必要書類も揃え、無事ご相談者様単独名義の相続登記を完了させました。
  • ご相談者様が手配した不動産仲介会社と連携の上、決済及び売却代金受領の段取りを整えました。
  • 相続人全員の代理人として代金決済に同席し、売却代金を受領しました。
  • 売却にかかった必要経費等を精算し、売却代金から差し引きの上、各相続人への分配を滞りなく行いました。
  • 遺産相続から売却代金の分配まで一括して代行させていただき、ご相続人様同士のやり取りを最小限に抑えて相続を終えることができました。

担当者からのコメント

このケースでは、売却活動がスムーズに行えるように便宜上代表者単独名義の登記を行いましたが、換価分割を前提として単独名義にすることはリスクも伴います。

譲渡所得税や贈与税課税等のリスクはもちろん、単独名義人となった代表相続人が、他の方の意向に反して勝手な処分を行ってしまえば、取り消すことは難しいです。

そのようなトラブルを未然に防ぐには、相続登記だけではなく、その後の売却手続きまで司法書士などの専門家にお任せすることをおすすめします。

特に売却代金の分配については、公平性の点から信頼できる第三者に任せるべきでしょう。

このケースでは不動産仲介業者については知人の方に依頼されましたが、専門家の中には、仲介業者の選定から売買契約の締結、決済の立ち合い、売却代金の分配までまるごと対応してくれる所もあります。

手間を省くために単独名義にしたが、後でトラブルになり、手間も費用も余計にかかってしまった…という事態を防ぐために、換価分割をお考えの方は、登記含めて一度司法書士等の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

当事務所では、相続手続きから不動産の売却までを一括しておまかせできる「相続まるごとおまかせプラン」をはじめとしたさまざまなサービスをご提供しており、不動産の換価分割に伴う売却・分配サポートについても数多くの実績がございます。

ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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