遺産は借地権付きアパートのみ、どうやって分ければいい?【借地権付賃貸不動産を売却して代金を分配したいケース】

借地上の賃貸アパートを売却するためには何が必要?

ご相談前の状況

叔父様が亡くなられた方からのご相談。

配偶者やお子様がいないため、相続人は兄弟姉妹及び甥姪の計5名。

叔父様には預貯金がほとんどなく、唯一財産と呼べるのは自宅兼賃貸アパートの不動産のみ。

売却して代金を分けることを考えているが、建物は現在賃貸中であり、土地は借地のため、どのような手続きが必要かわからないとのこと。

また、他の相続人と交流がなく、手続きについて上手く説明できる自信もないため、公平な第三者に手続きを任せたいという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 不動産は早期に売却して代金を分けるつもりだが、土地が借地のため、相続登記の他、地主に確認して名義変更手続きを行う必要がある。
  • 建物は現在賃貸中のため、売却の際に賃貸人変更の手続きが必要になる。
  • 契約期間中に借地権を処分する方法は、地主による買取りか第三者への売却になるが、どちらの方がメリットが大きいか検討する必要がある。
  • 借地かつ賃貸中物件のため、一般向けの売却は難航する可能性が高く、近隣住民への売却や、不動産業者による買い取りも検討する必要がある。
  • 第三者に売却する場合、事前に地主から承諾を得る必要がある。またその際に承諾料の支払が必要になる。
  • 相続人間の関係が微妙なため、手続きのために何度も連絡を取り合うことは避けたい。

当事務所からのご提案

遺産のほぼすべてが不動産であり、今後その不動産を利用する方もいなければ、売却して代金を分けるのが最も公平かつ簡便な遺産の分け方でしょう。

ただし、土地が借地の場合や、建物を他人に賃貸している場合、空き家・更地の売却と異なり、注意すべき点がいくつもあります。

まず、借地権については相続登記ができないため、建物の名義変更(相続登記)の他、地主に連絡して名義変更の手続きを行う必要があります。

また、第三者への売却の際には売却前に地主の承諾を得なくてはなりません。その際、承諾料として借地権価格の10%程度の支払いが必要になるのが通常です。

また、賃貸中の建物をそのまま売却する場合、入居者との賃貸借契約はそのまま引き継がれます。

そのため、売却にあたっては賃貸借契約書を提示して、契約条件や期間のほか、滞納家賃や敷金・保証金等についても確認しなければなりません。

地主の中には知らないのをいいことに法外な手数料を要求してくる方もいます。

また、賃貸借契約の内容を書面から把握するのは、一般の方には難しい作業です。

今回は、相続人の中にほぼ面識のない方がいるため、遺産分割協議や相続登記のために必要な書類のやり取りだけでなく、売却手続きについての説明や売却代金の分配についても公平な第三者に任せたいと希望されていました。

そこで、当事務所に相続人全員から不動産売却手続き代理の委任をいただき、借地や賃貸中の物件の売却に強い不動産会社と協力のもと、不動産の相続手続き及び売却手続きを進めることになりました。

借地を一般向けに販売するのは難しい?その理由とは

借地や賃貸中物件を売却する場合、どうやって売却するかも重要です。

一般的な不動産の場合、不動産会社を通じて広告を出し、エンドユーザー(一般の方)向けに販売することが多いと思います。

しかし、借地の場合、月々の地代に加え、更新や建て替えのたびに更新料や承諾料が必要となるため、長く住むことを目的とする方からは避けられやすいです。(その分価格が安いのでデメリットばかりではないのですが)

また、せっかく購入する気になっても、住宅ローンを組みづらいため、直前で話が流れるケースも少なくありません。

更に賃貸物件のオーナーチェンジでは、住宅ローンは使えず、購入するのは不動産運用目的の方に限られます。

エンドユーザー向けの販売が難しい場合、不動産業者に直接買い取ってもらうという方法があります。

売却価格は一般向けに比べて低くなりますが、融資を受けずに現況のまますぐに買い取り可能という事も多く、手離れがいいのが特徴です。

今回は1円でも高く売りたいというよりは、あまり手間をかけずに短期間で売却して清算したいというのが、相続人全員の一致した意見でした。

そこで、当事務所で不動産仲介業者と連携の上、まずは地主、次に近隣の住民に買取りを打診し、希望者がいなければ複数の買取業者に買い取りを打診し、一番条件のいいところに売却するという方針になりました。

このように解決しました

  • 戸籍謄本や遺産分割協議書の手配を行い、売却の前提となる相続登記を迅速に完了させました。
  • 地主に連絡を取り、借地の名義変更手続きを行いました。
  • 相続物件に強い不動産会社と連携し、地主や近隣住民に買い取りを打診しました。
  • 買取希望者がいなかったため、仲介会社を通して複数の買取業者に現況での買い取りを打診し、入札方式で買取希望者を募りました。
  • 最高額で入札した業者と売買契約を締結し、早期に売却することができました。
  • 売却後、手続きにかかった費用等を控除した上で、各相続人への分配を行いました。
  • 入居者に対して、新旧オーナーの連名で賃貸人変更通知を行いました。
  • その他にも室内整理、内見の立ち会いなど、売却に必要な一切の手続きを代行・サポートしました。
  • 売却により利益(譲渡所得)が生じたため、翌年の確定申告を担当する税理士をお繋ぎしました。

担当者からのコメント

不動産を相続したものの、利用予定もないため早く手放したいという方は多いです。

しかし、このケースのように借地や賃貸物件など、通常の不動産と異なる事情がある場合、前提として必要な手続きや気を付けるべき点が沢山あります。

必要な手続きや確認を怠ると後で大変なトラブルになりかねないので、売却をまかせる不動産会社は慎重に選ぶ必要があります。

不動産会社はネットで検索すればたくさん出てきますが、相続物件や借地物件の売却に本当に精通している業者は意外と少なく、知識のない方がネット上の情報だけで、専門性があるか否か、信頼できるかどうかを見抜くことは困難でしょう。

自分たちだけで信頼できる不動産会社を見つけるのが難しいと思われた方は、相続と不動産に強い司法書士などの専門家に相談してみましょう。

本当に相続に強い司法書士であれば、売却についての相談を受ける機会も多いので、信頼できる不動産会社を紹介できるはずです。

また、相続人の人数が多く、疎遠な場合は、やり取りに係る負担はかなりのものになりますので、公平な第三者に売却手続きをまるごと任せることも検討してみてください。

当事務所では、相続手続きから不動産の売却までを一括しておまかせできる「相続まるごとおまかせプラン」をはじめとしたさまざまなサービスをご提供しており、借地や賃貸中の物件の売却についても数多くのサポート実績があります。

ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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