父母の財産を兄が開示してくれない・・・調べる方法はある?【財産開示がされないため、遺産分割の前提として調査が必要なケース】

兄に任せたものの、きちんと財産を開示してくれない…

ご相談前の状況

ご両親が亡くなられた方からのご相談。

現在の相続人はご相談者様と兄の2名。

1年前にお母様が亡くなり、同居していた兄が手続きを進めることになっていたが、一向に進まず、手続きの進捗や遺産の内容を聞いてもはぐらかされ続けているとのこと。

数年前に亡くなった父の相続では、母がすべての財産を相続したはずだが、今となってはそれもちゃんと手続きされているか怪しいとのこと。

父母の財産について兄の協力なしで調べることは出来ないかという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 母の遺産分割をするにあたり、財産の詳細を知っているはずの兄が開示してくれない。
  • 自分で調査することも考えたが、手元に通帳等の資料がない。
  • 金融機関の中には故人の地元にしか支店のない銀行や信用金庫があるが、遠方のため直接出向くのは難しい。
  • 父の遺産について、きちんと相続手続きが終わっているか確認したいが、今からでも調べることは出来るのか。
  • 遺産分割を公平に行うために、使途不明の出金がないか確認したい。

当事務所からのご提案

亡くなった方が遺言を遺していなければ、基本的には相続人全員で遺産分割協議を行って、遺産の分け方を決めることになります。

公平な遺産分割のためには、分割対象となる財産を漏れなく開示して、相続人全員が正確に把握しておく必要があります。

しかし、中には特定の相続人が通帳等の資料を管理していて、他の人にきちんと開示してくれないケースもあります。

このケースもまさにそのようなケースであり、先に亡くなった父の時も今回も「自分がやっておくから」と言ってろくに財産開示をしてもらえない状況でした。

このような場合、金融機関に対して全店照会を行えば、口座の有無を確認できます。

全店紹介の結果判明した口座については、残高証明書の請求を行う事で死亡時の残高を確認することができます。

また、想定より残高が大幅に少ない場合などは、金融機関に対して取引履歴の請求を行えば、相続開始前後の入出金の記録を確認できます。

使途不明の出金があれば、相続人全員で情報を共有して、適切な処理を検討すべきです。

口座の有無の確認や、残高証明書・取引履歴の請求は、金融機関名さえわかれば可能です。

金融機関には10年間の帳簿保存義務があるので、相続手続完了後も最長10年前までなら調べることができます。

また、遠方で直接窓口に出向けない場合は、事情を説明すれば郵送等で対応してくれるところがほとんどです。

幸いこのケースではお父様の遺産分割協議書が残っていたので、金融機関についてある程度の目星はつきました。

金融機関の調査は意外と大変!

とはいえ、慣れない方が金融機関に対して事情を説明し、書類を発行してもらうのは、想像以上に骨の折れる作業です。

また、残高証明書や取引履歴は1通につき数百円の発行手数料がかかるのですが、ほとんどの金融機関では、手数料については店舗での支払いか「別段預金口座(その他口座)」への振込しか受け付けていません。

金融機関によっては別段預金口座(その他口座)への振込みは窓口でしか受け付けていない所もあります。

仕事で忙しい方が平日日中に出向くのは難しいでしょう。

また、郵送請求する場合、手続き方法の確認や書類に不備があった場合の対応については電話でやり取りをすることになりますが、日中に金融機関からの電話に対応するのは難しいこともあるでしょう。

そうなると必要以上に時間がかかります。

そこで、当事務所で心当たりのある金融機関すべてに連絡を取り、口座の有無の確認や残高証明書・取引履歴の請求を行い、調査結果を財産目録としてまとめ、ご提示することを提案しました。

このように解決しました

  • 心当たりのあるすべての金融機関に連絡を取り、全店照会を行い、口座の有無を確認しました。
  • 判明した口座について残高証明書や取引履歴の請求を行い、相続開始時点の残高や、不明な入出金記録の確認を行いました。
  • 取得した書類を基に財産目録を作成し、お渡しさせていただきました。
  • 取引履歴を精査した結果、不明な入出金が多く、使い込みが疑われたため、今後の対応についてアドバイスさせていただきました。

担当者からのコメント

このケースでは通帳等の資料は一切手元に無い状態でしたが、調査の結果、数千万円の財産があることが判明し、さらに使途不明の出金が多数見受けられました。

これまでの経緯から、兄が素直に認めて話し合いに応じる可能性は低いと思われたので、弁護士をつけて交渉することをお勧めしました。

ご検討の結果、まずはいったん自分で連絡を取ってみて、埒が明かなければ弁護士に相談しますという事になりました。

他の方が財産を開示してくれない場合、すぐに弁護士に依頼するというのも一つの方法です。

しかし、弁護士は依頼者の利益保護のため、基本的に相手方と対立する立場になるため、こちらが弁護士をつけると相手方も弁護士を付けざるを得ず、かえって長期化することもあります。

また、弁護士は交渉には長けているものの、金融機関調査等には慣れていない方も多く、依頼した後なかなか調査が進まなかったり、調査は自分で行うよう言われるケースもあるようです。

※もちろんきちんと調査してくれる弁護士もいますが、実際にそのような相談を何度も受けたことがあります。

きちんと財産を調べて話し合いを求めたところ、すんなり話がまとまるケースも少なくありません。

弁護士に依頼するのは、相手方が対立姿勢を明らかにしてからでも遅くはないので、まずは相続手続きに精通した専門家に相談の上、財産の調査をしっかりと行う事をおすすめします。

当事務所では、面倒な相続手続をまるごとおまかせできる「相続まるごとおまかせプラン」等の相続サービスをご提供しており、相続財産の調査についてもこれまでに数多くのご相談・ご依頼の実績がございます。

ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。

相続まるごとおまかせプランについてくわしくはこちら

相続財産全般の調査方法についてくわしくはこちらをご覧ください。

金融機関の相続手続き、残高証明書や取引履歴の取得についてくわしくはこちらをご覧ください。

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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