相続した不動産の抵当権抹消登記の方法【自分でやる抵当権抹消登記】
抵当権抹消登記は自分でもできる?
相続した不動産に抵当権が残っている場合、すでに債務を完済済みであれば抵当権の抹消登記が必要になります。
多くの方は不慣れな手続きに費やす時間や労力を考えて、専門家である司法書士に抵当権抹消登記申請の代行を依頼されますが、中には自分で登記しようと考えている方もいると思います。
抵当権抹消登記は自分でもできる?
そこで、ここでは抵当権抹消登記を自分で行おうとしている方のために、手続きの流れや必要書類等について詳しく解説します。これを読めば、一般的な抵当権抹消登記であれば自分で行うことができます。
また、自分でやるかはともかく、とりあえずどのような手続きか知りたいという方は、これを読んで自分で登記するか司法書士に依頼するか判断する際の参考にしてください。
なお、不動産を相続したが抵当権抹消登記が必要かわからない、そもそも抵当権って何?という方はこちらの記事をご覧ください。
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相続した抵当権についての基礎知識
まずは手続きの前提として、相続した不動産に設定された抵当権に関する基本的な知識について解説します。
そもそも抵当権抹消登記は必ずしなくてはいけない?期限はある?
抵当権抹消登記は義務ではないので、登記をしなくても特に罰則や罰金等はありません。
手続きの期限もないので、相続を機に、30年以上前に完済した抵当権がそのまま残っていることが判明したというケースも実務では珍しくありません。
ただし将来不動産を売却する際や、新たにローンを組んで抵当権を設定する際には、必ず事前に抵当権を抹消しておく必要があります。
売却先が決まり、代金決済日が近くなってから慌てて抹消しようとしても、書類の手配と登記申請に時間がかかると、決済に間に合わない恐れがあります。
そうなると決済日を延長せざるを得ません。最悪の場合売買そのものが流れてしまう可能性もあります。
また、登記をしない間に抵当権者である金融機関に合併等の事由が生じてしまうと、抹消のための手間や費用負担が大きくなってしまう恐れがあります。
このような事態を防ぐために、相続した不動産に完済済みの抵当権がある事がわかったら、相続登記と併せてすみやかに抹消登記を行っておきましょう。
抵当権の有無はどうやって確認する?
亡くなった方の不動産に抵当権が設定されているかどうかは、登記事項証明書(登記簿謄本)を確認すればわかります。
登記事項証明書はお近くの法務局で取得することが可能です。窓口で直接請求するほか、郵送やオンラインで請求することも可能です。
また、登記事項証明書を取得する代わりに、オンラインで登記情報の閲覧をすることで、抵当権の有無を確認することもできます。
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登記事項証明書(又は登記情報)には下図(図1)のように、地番や地積等の不動産の形式的な情報が記載されている部分(表題部)と、所有権や抵当権等の権利に関する情報が記載されている部分(権利部)に分かれています。
図1 登記謄本の見本(全体)
法務局HPより引用
抵当権の有無を確認する際に見る部分は「権利部(乙区)」の欄です。(下図2参照)
乙区の「登記の目的」欄に「抵当権設定」の記載があり、かつ抹消されていなければ抵当権が残ったままという事です。
この抵当権で担保されていた債務(住宅ローンなど)がすでに完済されている場合は、抵当権抹消登記が必要になります。
すでに抵当権が抹消されている場合は「登記の目的」欄に「○○番抵当権抹消」と記載されます。
なお、共同担保目録の欄がある場合は他にも抵当権が設定されている物件があるという事なので、その物件の登記簿も確認する必要があります。
図2 登記簿謄本の見本(乙区及び共同担保目録)
法務局HPより引用
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相続登記と抵当権抹消登記の順番に注意
団信(団体信用生命保険)の加入者が完済前に死亡し、死亡保険金によって住宅ローンが完済されたケースなど、不動産所有者の死亡後に債務を完済した場合、必ず「相続登記(相続による所有権移転登記)」→「抵当権抹消登記」の順番で申請しなければなりません。
これは、登記記録には実際の権利変動を正確に反映しなければならないというルールがあるためです。
順番に申請すると言っても、相続登記の完了を待って申請する必要はなく、実務上は、1件目:相続登記、2件目:抵当権抹消登記の順番で申請することを明記して、同時に申請します。(連件申請と言います)
なお、完済後に不動産所有者が死亡した場合は、事実関係発生の順番どおり「抵当権抹消登記」→「相続登記」の順番で申請することができますが、実務上はこのケースも「相続登記」→「抵当権抹消登記」の順で連件申請することが多いです。
前提として合併による抵当権移転登記や住所変更登記が必要な場合も
昔完済した抵当権が抹消されずに残っている場合、債務を完済する前に抵当権者である金融機関や保証会社等が吸収合併によって消滅していることがあります。
この場合は、合併後の存続会社が抵当権者として登記義務を引き継ぐのですが、抵当権抹消の前提として合併による抵当権移転登記が必要になります。
抵当権移転登記は金融機関の費用負担で行いますが、書類が何もなければ事実確認や書類の手配にかなりの時間がかかるので注意しましょう。
また、相続後に抹消する場合はあまり関係ないと思いますが、抵当権を抹消する際に所有者の住所や氏名が変更になっている場合は、抵当権抹消の前提として登記名義人(所有者)の住所等の変更登記が必要になります。
なお、完済後に抵当権者の合併があった場合や、抵当権者の所在地や名称に変更があった場合(完済との前後問わず)は、抹消登記申請の際に合併や変更を証明する書面を添付すれば(又は会社法人等番号を記載すれば)よく、前提として抵当権移転登記や住所変更登記を行う必要はありません。
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抵当権抹消登記手続きの流れ
抵当権抹消登記の手続きの流れは、住宅ローンを組んでいた金融機関や相続の事情によっても異なりますが、一般的には下記の通りです。
なお、抵当権抹消に必要な書類は金融機関から受領済みという前提です。
※クリックするとそれぞれの手順についてのくわしい解説に移動します。
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以下、それぞれの手順について詳しく解説します。
抵当権抹消登記と同時に相続登記を申請する場合は相続登記の準備を行う
先に解説したとおり、団信によって住宅ローンが完済されたケースなど、相続発生後に債務を完済した場合、必ず「相続登記」→「抵当権抹消登記」の順番で申請しなければなりません。逆に申請すると申請が却下されてしまいます。
まだ相続登記を申請していない場合は、1件目:相続登記、2件目:抵当権抹消登記の順番で連件申請するのが簡便なので、相続登記についても事前に準備をしておきましょう。
すでに相続登記が完了している場合は抵当権抹消のみを申請することになります。
※金融機関によっては抵当権抹消のための書類を交付する際に先に相続登記を済ませるよう指示されることがあります。
相続登記の必要書類、申請方法等についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。
登記申請書及び添付書類を作成する
抵当権抹消登記は、不動産の所有者(新たに所有者となる相続人)と抵当権者(住宅ローンを組んだ金融機関又は保証会社など)の共同申請で行います。
共同申請と言っても、ローン完済時に金融機関から登記申請に関する委任状を貰えるので、実際には所有者が単独で申請することになります。
抵当権抹消登記に必要な書類及び注意点はこちらをご確認ください。
登記申請書は下図の記載例を参考に作成します。
なお、申請書のひな型は下記の法務局ホームページからダウンロードできます。
抵当権抹消登記申請書記載例
法務局HPより引用
抵当権抹消登記申請書記載例(敷地権付区分建物・マンションの場合)
法務局HPより引用
申請書を作成する際は下記の点に注意しましょう。
■登記の原因
抵当権抹消(順位番号後記のとおり)と記載し、「不動産の表示」欄の末尾(不動産が複数の場合はそれぞれの不動産の末尾)に「(順位番号1番)」のように記載します。
順位番号は登記簿謄本等を確認して乙区の順位番号を記載してください。
■原因
金融機関から受け取った解除証書や弁済証書に記載されている「〇年〇月〇日解除(弁済)」等の文言をそのまま書き写してください。日付が空欄の場合は金融機関に確認してください。
■権利者
不動産の所有者(新たに所有者となる相続人)の住所・氏名を記載します。
■義務者
抵当権者である金融機関等の住所(本店所在地)、名称(商号)、代表者の肩書及び氏名、会社法人等番号を記載します。金融機関から受け取った委任状や登記事項証明書等に記載があるので正確に書き写しましょう。
なお、金融機関等の登記事項証明書(発行後3か月以内のもの)を添付する場合は、会社法人等番号の記載は不要です。
■申請人兼義務者代理人
不動産の所有者(新たに所有者となる相続人)の住所・氏名を記載します。「権利者の欄」と全く同じ内容を記載してください。
末尾に印鑑(認印)を押すのを忘れないでください。
■登録免許税
抵当権抹消の対象となる不動産1つにつき1,000円です。土地と建物1つずつの場合は2,000円です。
マンションなどの敷地権付区分建物の場合、建物(専有部分)+敷地の数の合計になります。
■不動産の表示
登記事項証明書等に記載されている情報を正確に記載してください。
■申請書が複数枚にわたる場合
申請書が複数枚にわたる場合は、ホチキス留めして、申請人の欄に押印したものと同じ印鑑で各ページの綴じ目に契印してください。
申請書の契印方法(法務局HPより引用)
■登記完了証及び原本還付書類を郵送で受け取る場合
登記完了後に発行される完了証や原本還付された書類を郵送で受け取りたい場合は、申請書に下記のように記載します。
『送付の方法により登記完了証の交付並びに原本還付書類の返還を希望します。 送付先の区分 申請人の住所』
また、申請書類とあわせて返信用の封筒及び切手、又はレターパックを同封(提出)しましょう。
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登録免許税を納付して、登記申請書及び添付書類を管轄法務局に提出する
登記申請書及び添付書類の準備が整ったら、以下の要領で法務局に書類を提出します。
■申請先
不動産の所在地を管轄する法務局
抵当権を抹消する不動産が複数ある場合も、管轄が同じであれば一回で申請できます。
管轄が違う場合はまとめて申請できないため、それぞれの法務局に順次申請します。
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■申請方法
申請方法は以下の3つがあります。
1.窓口に必要書類を持ち込んで申請する。
2.必要書類を郵送して申請する。
3.オンラインで申請する。
このうち3のオンライン申請は登録・準備に手間がかかるので、ここでは1の窓口での申請と2の郵送での申請について解説します。
【窓口での申請】
法務局の窓口に必要書類を直接持ち込んで申請する方法です。書類に不備があった場合にその場で訂正できるように、申請書に押した印鑑は必ず持っていきましょう。
申請書の記載等に不安がある方は、法務局の登記相談窓口で提出前に相談しましょう。(登記相談には事前の予約が必要です。)
【郵送での申請】
申請書類一式を管轄法務局の不動産登記係宛に郵送して申請する方法です。
不備があったときの訂正が面倒ですが、平日昼間に時間が取れない方はこちらの方法でもいいでしょう。
郵送する封筒の表面には『不動産登記申請書在中』と記載します。
重要な書類なので書留郵便などの対面受取が必須な方法で送りましょう。おすすめはレターパックプラスです。
■登録免許税の額
抵当権抹消の対象不動産1個につき1,000円
土地と建物はそれぞれ1個と数えます。また、マンションなどの敷地権付区分建物の場合、建物(専有部分)+敷地の数の合計になります。
■登録免許税の納付方法
書面申請での登録免許税の納付方法には
1.申請書(収入印紙貼付台紙)に収入印紙を張り付ける。
2.銀行等の金融機関の窓口で現金で支払い、領収書を申請書に張り付ける。
という2つの方法がありますが、抵当権抹消登記については1の方法がいいでしょう。
収入印紙で納付する場合、必要な額の収入印紙を収入印紙貼付台紙(A4の白紙で代用できます)に張り付け、申請書の次に綴じ合わせ、綴じ目に申請書に使用した印鑑で契印します。
収入印紙には割印や消印はしないでください。
収入印紙は郵便局やコンビニの他、法務局にある販売所でも購入できます。
なお、正式な方法ではありませんが、収入印紙の枚数が少ない場合には、申請書の余白に直接張り付けて提出しても受理はされると思います。
登録免許税の納付・契印方法(法務局HPより引用)
登記完了後に登記完了証と原本還付書類を受領して手続き完了
申請書類に不備がなければ、通常1~2週間程度で登記が完了します。
登記完了後に発行される完了証と原本還付書類を受け取って手続き完了となります。
受取の方法は窓口での受け取りと郵送での受け取りの2種類です。
郵送の場合は、申請の際に返信用封筒(レターパック)を忘れずに同封しましょう。
窓口で受け取る場合、法務局から登記完了の電話連絡等は無いので、各法務局のホームページで「登記完了予定日」を確認して、予定日を過ぎたら申請書に押した印鑑と身分証を持って申請した法務局に出向き、受け取りましょう。
法務局の繁忙状況によっては当初の予定日を過ぎても完了していないことがあるので、念のため電話で登記が完了しているか確認してから行きましょう。
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抵当権抹消登記の必要書類
抵当権抹消登記に必要な書類は以下の通りです。
【抵当権抹消登記に必要な書類】
1.登記申請書
2.登記済権利証又は登記識別情報通知書
3.抵当権解除証書(又は弁済証書)
4.金融機関からの委任状
5.会社法人等番号が記載してある書面(法人全部事項証明書など)
上記のうち、1以外の書類は住宅ローン完済時に金融機関から発行される完済関係書類と一緒に貰えます。
■登記済権利証又は登記識別情報通知書について
抵当権設定登記の際に抵当権者(金融機関)に発行された書面です。
抵当権が設定されたのが古い場合は登記済権利証、比較的最近(おおむね2005年以降)の場合は登記識別情報通知書が発行されています。
登記済権利証は、抵当権設定契約書に法務局の「登記済」のスタンプが押されたもので、この場合は原本そのものを添付書類として提出します。
権利証は登記完了後に返却されます。
登記識別情報通知書の場合は、登記識別情報を記載した書面を封筒に入れ、封をして提出します。(郵送の場合は封筒をレターパックに同封して提出します。)
封筒の表面には抵当権者の名称及び登記の目的を記載し、「登記識別情報在中」と記載します。
「登記識別情報を記載した書面」は登記識別情報通知書の原本のほか、通知書のコピーや、通知書に記載されている12桁の記号番号をメモしたものでも大丈夫です。
※書き間違いがあると面倒なので、通知書のコピーの添付をおすすめします。
なお、登記識別情報通知書の原本を提出した場合でも原本は返却されません。(抵当権抹消後は使用することは無いので問題ありません。)
■抵当権解除証書(又は弁済証書)について
債務の完済後に金融機関から発行される、抵当権が消滅したことを証明する書面です。
法務局の申請書記載例の添付書面で言うと「登記原因証明情報」にあたります。
金融機関(又は保証会社)によって「解除証書」と呼ぶ場合と「弁済証書」と呼ぶ場合がありますが(「放棄証書」と呼ぶところもあります。)、効力は全く同じです。
金融機関によっては、登記済権利証が解除証書等を兼ねる場合もあります。(その場合は登記済権利証に抵当権を解除した旨のスタンプが押されたものが発行されます。)
また、解除等の日付や不動産の表示が記載されていない場合があるので、その場合は自分で記載する必要があります。
不動産の表示は登記事項証明書の通り記載すれば大丈夫です。日付は金融機関に確認しましょう。
■金融機関からの委任状
金融機関等の所在地や名称、代表者氏名等が記載された委任状です。
こちらも日付や不動産の表示が記載されていない場合があるので、その場合は自分で記載する必要があります。
解除証書に日付が記載されている場合は、委任状の日付も同日を記入すれば大丈夫です。
■会社法人等番号が記載してある書面
先述のとおり、申請書には抵当権者である金融機関の会社法人等番号を記載する必要があります。そこで会社法人等番号確認のためにこちらの書類が必要になります。
具体的には法人の登記簿謄本(全部(一部)事項証明書、代表者事項証明書など)が同封されてくることが多いです。(コピーの場合もあり)
会社法人等番号が不明な場合は、金融機関の法人登記簿謄本を自分で取得することで確認可能です。
また、会社法人等番号は12桁の番号であり、法人設立後に国税庁から指定される13桁の「法人番号」とは異なりますが、法人番号から先頭の一桁を除いたものが会社法人等番号なので、下記のサイトで法人番号(13桁)を調べることで、無料で会社法人等番号(12桁)を確認することができます。
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抵当権抹消登記のその他の注意点
抵当権抹消登記を申請する際は、金融機関の合併等の事情によっては、この他にも書類が必要な場合や別の登記が必要なことがあります。
以下、登記申請の際の注意点について解説します。
相続登記と連携申請する場合の注意点
先述のとおり、団信によって完済した場合など、不動産の所有者(抵当権設定者)の死亡後に住宅ローン等の債務を完済した場合は、「相続登記」→「抵当権抹消登記」の順番で登記を申請する必要があります。
この場合、実務上は相続登記と抵当権抹消登記を「連件申請」という方法で、同時に申請することが多いです。
連件申請の方法ですが、基本的に別々の申請なので申請書は別々に作成して添付書面も別々に添付します。
その上で、下記の要領で連携申請特有の処理を行うことになります。
【連件申請の際の書類の提出方法等】
1.申請書の右上に1件目は1/2、2件目は2/2とそれぞれ記載する。(3件以上ある場合は1/3、2/3…の要領で記載する。)
2.添付書類は1件目の分と2件目の分が混ざらないようにまとめて、1件目の方が上に来るようクリアファイル等に入れる。
3.1件目と2件目で共通する書類については、2件目の申請書の添付書面の欄の書類名の末尾に「(前件添付)」と記載することで(2件目については)原本の添付を省略できる。(例:「登記原因証明情報(前件添付)」)
金融機関に商号変更や本店移転等があった場合
抵当権設定後に、金融機関に商号変更や本店移転等があり、登記簿に記載されている名称(商号)や所在地(本店)が現在のものと異なっていても、抵当権抹消登記の前提として登記名義人の住所等変更登記は必要ありません。
この場合、申請書の義務者の欄には現在の名称や所在地を登記事項証明書の通り記載すれば大丈夫です。
また、添付書面としてその変更事項につき「変更を証する書面」を提出する必要があります。
「変更を証する書面」は商号変更や本店移転の事実が記載されている法人の登記事項証明書や閉鎖事項証明書ですが、申請書に会社法人等番号を記載すれば「変更を証する書面」の添付は原則不要です。
ただし、変更の事実が閉鎖登記記録(閉鎖事項証明書)に記載されていて、閉鎖事項証明書に現在のものとは異なる会社法人等番号が記載されている場合に限っては、当該閉鎖事項証明書を添付書面として提出する必要があります。
閉鎖事項証明書は抹消書類を発行(再発行)してもらう際に金融機関から貰えると思いますが、最寄りの法務局で自分で取得することも可能です。
抹消書類受領後に金融機関の代表者に変更があった場合
抵当権抹消書類の受領後に、金融機関に代表者(代表取締役)の変更があり、手元にある抵当権抹消書類(解除証書や委任状など)に記載されている代表者が現代表者と異なっていても、新たに書類を貰いなおしたり、代表者名を書き換えてもらったりする必要はありません。
これは登記申請の委任による代理権は、法人の代表者(法定代理人)の代理権の消滅によっては消滅しないとの規定があるためです。(不動産登記法第17条)
この場合、申請書の義務者の欄には現在の代表者の肩書及び氏名を記載すれば大丈夫です。
ただし、申請する法務局によっては旧代表者の氏名を記載するよう言われたり、新旧両方を記載するよう言われることがあるようなので、事前に法務局に確認することをおすすめします。
現在の代表者の氏名は金融機関に直接聞くか、登記事項証明書を取得して確認しましょう。
また、委任状に記載されている代表者の代表権が消滅している旨を明らかにするために、下記のような文言を申請書に記載します。
記載箇所に決まりはないので、義務者の欄と添付情報の欄の間に記載すればいいでしょう。
「登記義務者の代表取締役○○の代理権は消滅している。本件申請時の義務者の代表取締役は△△である。」
また、この場合、退任した代表者が代表権限を有していたことを証明する書面として法人の登記事項証明書や閉鎖事項証明書が必要になります。(作成後3か月以内の縛り無し)
もっとも、申請書に記載した会社法人等番号で退任した代表者が代表権限を有していたことが確認できるときは、証明書の添付は不要です。
さらにこのケースで気を付けたいのが解除証書や委任状の日付です。(日付を自分で記入する場合)
解除日や委任日として、代表者が退任した後の日付を書いてしまうと、代表権限がない人からの委任という事になってしまいます。
登記官から指摘を受けた場合、委任状等に捨印が押してなければ(大抵押してありません)、金融機関等に連絡して現在の代表から委任状を貰い直すことになります。
このケースでは事前に登記事項や閉鎖事項証明書を確認する必要があり、金融機関や法務局への確認が必要になることも多いので、よくわからなければ司法書士に依頼することをおすすめします。
参考(代理権の不消滅)
第十七条 登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、次に掲げる事由によっては、消滅しない。
一 本人の死亡
二 本人である法人の合併による消滅
三 本人である受託者の信託に関する任務の終了
四 法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更
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完済後に金融機関の合併があった場合
住宅ローン等の債務を完済後に抵当権者である金融機関等に合併があり、抵当権者が合併によって消滅した場合でも、抵当権抹消登記の前提として抵当権移転登記を行う必要はありません。
この場合、申請書の義務者の欄には次のように記載します。(抵当権者であった世田谷銀行が世田谷目黒銀行に吸収合併され消滅したものとします。)
義務者 (被合併会社 株式会社世田谷銀行)
東京都世田谷区世田谷○丁目○番○号
上記承継会社 株式会社世田谷目黒銀行
(会社法人等番号 ××××-××-××××××)
代表取締役 世田谷 太郎
また、添付書面として「合併を証する書面」を提出する必要があります。
「合併を証する書面」は合併の事実が記載されている法人の登記事項証明書や閉鎖事項証明書ですが、申請書に会社法人等番号を記載すれば「合併を証する書面」の添付は原則不要です。
ただし、合併の事実が存続会社(上記の事例では世田谷目黒銀行)の閉鎖登記記録(閉鎖事項証明書)に記載されていて、閉鎖事項証明書に現在のものとは異なる会社法人等番号が記載されている場合に限っては、当該閉鎖事項証明書を添付書面として提出する必要があります。
なお、債務完済後に金融機関の合併があった場合でも、抵当権者が合併後の存続会社である場合には、通常の抹消登記と異なる所はありません。
ただし、合併に伴って商号変更や本店移転等があった場合は、こちらに記載のとおり、「変更を証する書面」等の添付が必要なことがあります。
完済前に金融機関の合併があった場合
住宅ローン等の債務の完済前に抵当権者である金融機関等に合併があり、抵当権者が合併によって消滅した場合は、抵当権抹消登記の前提として抵当権移転登記を行う必要があります。
抵当権移転登記の申請人は合併後の存続会社である金融機関です。(単独申請)
完済証明書等の資料が残っておらず、そもそも完済の時期がわからないという場合も含め、ますは連絡を取りましょう。
合併による抵当権移転に係る登記費用は通常すべて金融機関が負担しますが、登記申請手続き自体は金融機関から委任状等の必要書類を渡されて、自分(所有者・抵当権付不動産を相続した相続人)で行ってくださいと言われることもあります。
一般の方が抵当権移転登記を自分で行うのは難しいので、抵当権抹消登記と併せて司法書士に依頼することをおすすめします。
なお、抵当権移転登記後の抹消登記については、通常の抹消登記と異なる所はありません。
抹消書類を紛失してしまっている場合
債務は完済しているはずだが、紛失等の事情により抹消書類が見つからない場合、金融機関から再度抹消書類を発行してもらうことになります。
ただ、大昔に完済した場合、金融機関が合併や商号変更を繰り返していることも多く、その場合どこに連絡すればいいかを調べるだけでも大変です。
また、上記のとおり、金融機関が合併した後に完済したケースでは、抵当権抹消の前提として抵当権移転登記が必要になります。
しかし書類が何もなければ完済と合併の前後などわからないでしょうし、金融機関に聞いても時間がかかった挙句よくわからないことさえあります。
結局、司法書士が金融機関の担当者と打合せをして、必要な登記や書類の手配を行うということも少なくありません。
特に完済から長期間経過している場合は、申請書の記載事項や添付書面について慎重な判断が必要なため、初めから司法書士に依頼することを強くおすすめします。
死後手続き・相続手続き代行についてくわしくはこちら
抵当権抹消登記その他の死後手続き・相続手続きのつまずきポイント
ほとんどの人にとって死後手続き・相続手続きを行うのは初めての経験でしょうから、思わぬところでつまずいてしまうことがあります。
そこでここでは、抵当権抹消登記をはじめとする死後手続き・相続手続きを自分で行う場合につまずきやすいポイントについて解説します。
ご自身で手続きを行うか悩まれている方は参考にされてください。
また、これを読んで自分には難しそうだな・・・と感じられた方はお早めに専門家に相談することをおすすめします。
死後手続き・相続手続きのつまずきポイントについて
死後手続き・相続手続きを、ご自身で行う場合多くの方がつまずくポイントとしては、主に以下の4つが挙げられます。
1
平日に役所や法務局に行く時間が取れない。
死後手続き・相続手続きを自分で行う場合、戸籍等の請求や手続きに必要な書類の提出のために役所や金融機関、法務局などに足を運ぶ必要があります。
役所や法務局の窓口は17時過ぎには閉まってしまいますし、金融機関の窓口は、ほとんどの場合15時で閉まってしまいます。
金融機関の中には14時までに受付をしないと駄目、というところもあります。
仕事や家事育児などで忙しい中、わざわざ時間を作って出向くのは厳しい…という方も多いのではないでしょうか。
2
役所や法務局に相談しても専門用語で説明されてよくわからない。
死後手続き・相続手続きについて確認するために、役所や法務局、金融機関等に相談したが、聞きなれない専門用語をたくさん使って説明されたため、結局よくわからなかったという話もよく聞きます。
例えば、相続手続きでは“被相続人”、“相続人”という用語が頻出しますが、どっちがどっちかわからなくなる方もいらっしゃいます。
また、必要書類の中でも戸籍は種類が多く、作成された時期等によって正式名称が異なる上、手続き先によっては通称で説明されることもあるため、混乱してしまう方も多いです。
また、説明する能力や理解する能力は人それぞれなので、人によっては説明の仕方や対応について不満を抱くこともあるかもしれません。
3
手続きの分担をめぐって不公平感が生じてしまう。特定の方に手続きの負担が偏ってしまう。
相続人の方が複数いる場合、死後手続き・相続手続きを行うにあたって、公平に分担することができればいいのですが、実際には仕事の忙しさや、居住地の関係などの事情から特定の方に負担が偏ってしまいがちです。
また、代表者の方が主に書類の手配や手続先とのやり取りを行うケースも多いのですが、財産は等分なのに自分ばかり負担が大きいということで、不満がたまり、手続き後もわだかまりが残ってしまうことがあります。
特定の方への負担の偏り、手続きの分担をめぐる不公平感は、見落とされがちですが重要なつまずきポイントです。
4
相続手続きや死後手続きについて相談できる人がいない。相談しても見当違いのことを言われてしまう。
相続は財産にかかわるデリケートな問題のため、わからないことがあってもなかなか他人には相談しづらいものです。
特に相続人が一人しかいない場合や、動けるのが自分一人しかいない場合は他に頼れる人もいないため、不安になることも多いでしょう。
また、相談できる方がいたとしても、相続をめぐる事情は人によって千差万別なため、自分の経験が他人には全く当てはまらないという事はよくあります。
そのため、相談をしても見当違いのアドバイスをされてしまったり、複数の人から正反対の事を言われたために余計に混乱してしまったという話もよく聞きます。
死後手続き・相続手続き代行についてくわしくはこちら
死後手続き・相続手続きの代行を当事務所に依頼した場合
抵当権抹消登記をはじめとする死後手続き・相続手続きについては、上記のようなつまずきポイントがあるため、ご自身で行おうとしたものの、やっぱり専門家に依頼することにした、という方も多いです。
当事務所では、面倒な相続手続きをまるごとおまかせできる「相続まるごとおまかせプラン」をはじめとした相続代行サービスを提供しているので、抵当権抹消登記を含む死後手続き・相続手続き全般について代行・サポートが可能です。
抵当権抹消登記を含む死後手続き・相続手続きを、当事務所にご依頼いただいた場合の主なメリットは以下のとおりです。
メリット1
死後に必要な100種類以上の手続きについて正確に把握しているため、お客様にどの手続きが必要かをご案内することが可能です。お客様の方でどのような手続きが必要かを一つずつ確認する必要はありません。
メリット2
役所や金融機関、法務局とのやり取りは基本的に当事務所が行うため、お客様が連絡をしたり、窓口に行ったりする必要はありません。
メリット3
手続きのタイミング、必要書類、郵送対応の可否など、手続先ごとに異なる手続きの内容を正確に把握しているため、効率よく手続きを進めることができ、最短で完了させることが可能です。
メリット4
難しい法律問題や手続きの内容についても、専門用語をできるだけ使わずにわかりやすく説明させていただきます。
メリット5
各相続人への連絡・説明や、必要書類の郵送手配なども当事務所が代行するため特定の方に負担が偏ることはありません。
メリット6
年間100件以上の相続案件を担当する相続に精通した国家資格者が在籍しているため、疑問や不明点にすぐにお答えすることができます。
メリット7
手続きの進捗については、定期的に報告させていただきますので、安心してお仕事や家事育児等に専念できます。
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抵当権抹消登記についてのよくある質問
ここからは抵当権抹消登記を含む死後手続き・相続手続きのご相談の際によく受ける質問を、Q&A形式で解説します。
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抵当権抹消登記で困ったら司法書士に相談しましょう!
今回の記事では抵当権抹消登記を自分で申請される方のために、かなり細かい部分まで詳細かつ網羅的に解説してきました。
ごく一般的なケースであれば本記事を参考に自分で手続きを行うことができると思います。
ただ、相続後に抵当権抹消登記を行う場合、相続登記と一緒に申請することが多いですが、相続登記については抵当権抹消登記に比べて難易度が高く、イレギュラーなケースが沢山あります。
慣れない手続きに費やす手間を考えると、相続登記と一緒に司法書士に依頼した方がいいかも知れません。
相続をめぐる事情は人によって全く異なるので、記事を読んでなんだか難しそうだな、と感じられた方や、自分でやってみようとしたが行き詰まってしまった方は、お早めに司法書士へ相談されることをおすすめします。
抵当権抹消登記を含む死後に必要な手続き・相続手続きについてのご相談は当事務所で承ります。ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。
※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。
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