【保存版】これでもう迷わない!遺産分割協議書の書き方(PDF・WORDひな型付き)
遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、相続人全員による遺産分割についての話し合い(遺産分割協議)で合意した内容を書面にまとめたものです。
法律上、必ず作成しなくてはならないというわけではありませんが、法定相続分や遺言によって定められた相続分と異なる割合で相続する場合は、後で揉めないように作成しておくべきです。
後で揉めないように必ず協議書を作成しておきましょう
また、遺産分割協議に従って相続登記をする場合には登記申請書と一緒に提出する必要があります。
そうは言ってもそんな改まった書類なんて作ったことがないし、何を書けばいいかよくわからない、という方も多いと思います。
そこでここでは、実際に実務で使われるひな型をもとに、相続登記をはじめ各種手続きでも問題なく使える遺産分割協議書の書き方を、作成にあたっての注意点とともに解説します。
これを参考に作成すれば、せっかく作った遺産分割協議書が使えなかったり、後で協議書に記載のない財産が出てきて揉めたりすることはありません。
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遺産分割協議書を作成する前に確認・準備しておくこと
遺産分割協議書を作成するにあたっては、遺産分割協議が有効に成立している必要があります。また、スムーズに作成するためには事前の準備も必要です。
なお、遺産分割協議の進め方や、協議の際に気をつけるべきポイントについてはこちらの記事をご参照ください。
前提条件
協議書を作る前に、相続人間での協議が次の条件を満たしているかは確認しておきましょう。
条件を一つでも欠けば協議をやり直さなくてはならない可能性があります。
■遺産分割協議に相続人全員が参加している
戸籍等で調査をしなくても、誰が相続人であるかはわかっているというケースがほとんどだとは思いますが、念のため事前に戸籍を収集して相続人を確定しておきましょう。
もし知らない相続人が出てきた場合は早めに連絡を取っておきましょう。
亡くなった方と全く面識のない相続人だとしても、除外して協議をすることはできません。
■協議内容について全員が合意している
もちろん分割内容について反対であれば署名押印することはないでしょうが、実際には相続人の一人が強引に進めて、よくわからないまま署名押印してしまったというケースはよくあります。
遺産の全容や分割内容について相続人全員がきちんと理解していなければ、後でトラブルになりかねません。
協議のやり直しはできる限り避けるべきなので、財産目録などを作成して遺産の全容を把握したうえで、合意しておきましょう。
■参加者全員が有効に法律行為ができる状態である
相続人の中に認知症等で意思能力が無い方がいる場合は、家庭裁判所で成年後見人を選任してもらい、本人の代わりに成年後見人が協議に参加して署名押印する必要があります。
※成年後見人が相続人である場合はさらに特別代理人の選任も必要
認知症=意思能力が無いというわけではありませんが、意思能力が不十分だと思われる場合は、これを機に成年後見制度の利用を検討してみてください。
認知症の方がいる場合の遺産分割協議・相続手続きの注意点についてはこちら
また、相続人の中に未成年者がいる場合は、その方の法定代理人(通常は親)が代わりに協議に参加しますが、親と子供両方が相続人の場合は特別代理人の選任が必要になります。
特別代理人の選任についてくわしくはこちらの記事をご参照下さい。
事前準備
■各種証明書類の取得
特に不動産については必ず登記事項証明書(登記簿謄本)を取得しておきましょう。
不動産の所在等について登記簿記載の通りに正確に記載しておかなければ、後の名義変更手続き(相続登記)の際に支障があるためです。
また、被相続人の死亡時の本籍や住所、相続人の住所についても正確に記載しておくべきなので、戸籍や住民票を準備しておきましょう。
■財産目録の作成
財産目録とは、相続財産の種類、数、所在、価額などを一覧にまとめたものです。
作成は義務ではありませんが、作成しておけば協議書への記載漏れや記載間違いを防ぐことができます。
特に財産が多い場合には、後で揉めないようにきちんとしたものを作成しておくべきでしょう。
財産目録の作成方法やひな型のダウンロードはこちらの記事をご参照ください。
死後手続き・相続手続き代行についてくわしくはこちら
遺産分割協議書のひな型・記載例(PDF・WORDファイルダウンロード)
ここからは遺産分割協議書の具体的な書き方・記載方法について解説します。
まずは下記の遺産分割協議書のひな型及び解説付き記載例をご覧ください。
今回は主にこのサンプルを基に解説していきます。
■遺産分割協議書見本
遺産分割協議書
被相続人 世田谷 太郎(平成○○年○○月○○日 死亡)
最後の本籍 東京都世田谷区世田谷一丁目○○番
最後の住所 東京都世田谷区世田谷一丁目○○番○○号
上記被相続人の遺産の分割について、共同相続人全員での協議の結果、下記の通り決定した。
記
1.相続人 世田谷 花子 は次の財産を取得する。
土地
所在 東京都世田谷区世田谷一丁目
地番 ○○番〇
地目 宅地
地積 ○○.○○㎡
建物
所在 東京都世田谷区世田谷一丁目○○番〇
家屋番号 ○○番〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 ○○.○○㎡
2階 ○○.○○㎡
2.相続人 世田谷 一郎 は次の財産を取得する。
○○銀行 ○○支店の被相続人名義の預金
普通預金 口座番号○○○○○○ のすべて
3.相続人 世田谷 花子 は被相続人の債務をすべて負担する。
4.本協議書に記載のない財産及び後日判明した財産については相続人 世田谷 花子 が取得する。
上記協議の成立を証するため、本協議書を2通作成して、それぞれに署名押印し、各自1通を保有する。
平成○○年○○月○○日
住所 東京都世田谷区世田谷一丁目○○番○○号
相続人 世田谷 花子 (実印)
住所 東京都渋谷区渋谷一丁目○○番○○号
相続人 世田谷 一郎 (実印)
■遺産分割協議書記載例
遺産分割協議書記載例(クリックで画像が拡大します)
遺産分割協議書のひな型(上記の記載例の赤文字がないもの)はこちらからダウンロードできます。
ひな型(PDF)のダウンロードはこちら
ひな型(WORD)のダウンロードはこちら
上記の解説付き記載例はこちらからダウンロードできます。
PDFファイルが表示されない方はこちら
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遺産分割協議書を作成する際の注意点
それでは、上記記載例を基に遺産分割協議書作成時の注意点について解説します。
一般的なケースでの協議書への記載方法
協議書の形式に決まりはないですが、一般的なケースでは上記記載例を参考に、次のようなことに気を付けながら記載すれば後で問題になることはないでしょう。
※番号は上記記載例のものと対応しています。
【1】タイトル
『遺産分割協議書』と記載します。
【2】被相続人の表示
記載するのは亡くなった方の、最後の本籍・住所、氏名、相続開始日(=死亡日)です。
記載間違いがあると法務局や金融機関等での手続き時に受け付けてもらえない可能性があるので(特に法務局のチェックは厳しいです)、戸籍謄本や住民票を見ながら一言一句違わずに記載しましょう。
例えば住民票に『二丁目8番地の2』と記載されていれば、『2丁目』『2-8-2』などと記載せずそのまま書きましょうということです。
氏名の漢字も旧字体や異体字(『吉』という字の上部分が士ではなく土になっているなど)が使用されていればそのまま記載しましょう。
【3】遺産分割の宣言
特に書き方に決まりはありませんが、『被相続人の財産について』『相続人全員が』『遺産分割協議を行った』ことがはっきりわかるように記載しましょう。
【4】財産の帰属
一般的には相続人ごとに、取得する財産を列挙する形で記載します。
財産の数が多い場合は、財産目録を付けて『財産目録記載の1の不動産を取得する』としても大丈夫です。
解釈に疑義が生じないように、文末は『取得する』と断定しておきましょう。
【5】不動産の記載
不動産は登記事項証明書(登記簿謄本)記載の通りに記載します。
一戸建て住宅であれば記載例の項目を記載すれば大丈夫です。
固定資産評価証明書や古い権利書と登記事項証明書の記載は違うこともあるので、必ず最新の登記事項証明書を取得してください。
マンションの場合や相続したのが共有持分権である場合については後ほど解説します。
【6】預貯金の記載
同じ金融機関でも別の支店や、定期、総合口座などで複数の口座がある場合もあるので、誰がどの預金を取得するのか特定できるように記載します。
一つの口座を分割して取得する場合は口座番号に続けて、『の2分の1』などと記載すればいいでしょう。
金額を書いてもいいですが、相続開始時点から金額の変動があった場合に少々面倒です。
【7】債務の負担
債務は法定相続分に応じて各相続人に相続されるため、遺産分割協議書に負担割合を記載してもそれを債権者に主張することはできません。
※債権者は各相続人に相続分に応じた額を請求できます。
しかし、相続人間での合意は有効であり、負担割合によって財産の配分も変わってくるでしょうから、誰が負担するかについても協議して記載しておくべきです。
記載例のように記載するほか、特定の債務を誰かが負担する場合は、『相続人○○は次の債務を負担する。○○ ○○(債務の表示)』のように記載します。
なお、相続人間での合意内容を債権者に主張するためには債権者を含めて債務引受契約を締結する必要があります。
債権額にもよりますが、債権者にとっても各相続人へ個別に請求するのは手間であるため、債務の引受人の資力が確認できれば契約に応じてくれる事が多いでしょう。
ただし、債権者によっては債務者から脱退する方について、連帯保証人になることを求められる場合もあります。
【8】協議書に記載のない財産の帰属
それほど高額でない動産等まですべてを記載すると大変なため、帰属をめぐって争いになる恐れが無い財産については、記載例のように記載しておけば十分でしょう。
逆に争いになりそうなものについてはすべて個別に記載しておくべきです。
また、後日新たに遺産が発見された場合も記載例のように記載しておけば、改めて協議を行う手間が省けます。
一方、万が一高額な遺産が発見された場合に備えて
・『後日判明した財産の帰属については相続人全員での協議によって決定する』
・『後日判明した財産の価額が10万円未満の場合は相続人○○が取得する。価額が10万円以上の場合は相続人全員での協議によって決定する』
などと記載することもできます。
何も記載しなかった場合は、原則通り法定相続分に従って相続されることになり、異なる割合で取得する場合は記載のない財産についての遺産分割協議が必要になります。
後日新たに財産が見つかった場合の処理についてくわしくはこちら。
【9】協議書の作成通数
偽造や改ざんを防ぐために、協議書は原則として同じものを相続人の人数分作成して、それぞれが正本として保管します。
ただし特に決まりはないので、相続人の人数が非常に多い場合は、争いになる恐れが無ければ、正本を1通作成して後で謄本(コピー)を渡す等の方法でもいいでしょう。
万が一のことを考えて、できる限り人数分作成することをおすすめします。
【10】日付
遺産分割協議が成立した日を記載します。
通常は協議書に最後の相続人が署名押印した日となります。
【11】相続人の表示
相続人の住所及び氏名を記載します。住民票や印鑑証明書の通りに記載しましょう。
後のトラブルを防ぐために氏名は原則として自署します。
ただし自筆は遺産分割協議書の成立要件ではないので、身体的理由等でどうしても自署できない場合は記名でも構いません。(後で法務局や金融機関から説明を求められる可能性はありますが)
代筆は後のトラブルにつながる恐れがあるのでできるだけ避けるべきですが、やむを得ず代筆する場合は、代筆した経緯等を書き添えておいた方がいいでしょう。
文書の真実性を高めるためには住所も自筆するのが好ましいですが、記載間違いの恐れがあり、各種手続きでも自筆を要求されることはないので、パソコン等で記載しても構いません。
【12】押印
必ず印鑑登録してある実印で押印します。
各種手続きで遺産分割協議書を提出する際は相続人全員の印鑑証明書の添付を要求されるため、印影が違えば手続きできません。
【13】捨印
住所の記載間違いなど軽微なものであれば、捨印によって対応できるので押しておくと便利です。
捨印で修正できるのは軽微なものに限られ、金額や取得者などの重要事項は捨印による訂正はできません。
法務局や金融機関でも、大きな訂正については訂正印による訂正か、再度の協議書作成を求められるでしょう。
ただしそうは言っても、万が一他の相続人が協議書を改ざんして、それで手続きが通ってしまったら、正当な権利を取り戻すにはかなり手間がかかります。
記載間違いがあった場合の訂正の手間と、万が一のリスクを天秤にかけ、リスクの方が大きいと考えるのであれば捨印は押さないでおきましょう。
なお、司法書士などの専門家に手続きを依頼する場合は、リスクはほぼないため、押しても問題ないでしょう。
押す場合は相続人全員が協議書に押した印鑑(つまり実印)で押します。
マンションや共有不動産の持ち分の記載方法
■マンションの場合
不動産がマンションの場合、通常は専有部分と敷地利用権が一体化(敷地権化)しているので、『一棟の建物』、『専有部分の建物』、『敷地権』について記載します。
具体的には次のように記載します。
一棟の建物の表示
所在 東京都渋谷区一丁目○○番○○
建物の名称 東京横浜セントラルタワー
専有部分の建物の表示
家屋番号 東京都渋谷区一丁目○○番○○
建物の名称 101
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 1階部分 ○○.○○㎡
敷地権の表示
土地の符号 1
所在及び地番 東京都渋谷区一丁目○○番○○
地目 宅地
地積 ○○.○○㎡
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 1234分の100
一戸建ての場合と比べて記載量が多いですが、登記事項証明書の通りに記載すれば大丈夫です。
ポイントは最初の『建物の名称』です。(上記事例では東京横浜セントラルタワーという部分)
登記申請時には『登記簿に記載されている建物の名称を記載すれば、建物全体についての構造と床面積の記載は省略できる』という取り扱いがされているので、遺産分割協議書でも同様に省略して構いません。
高層マンションの時などは非常に便利です。
ただし、これはあくまで建物の名称が登記簿に記載されている場合の話なので、記載がなければ原則通り構造と床面積を漏れなく記載することになります。(登記簿に記載されていない名称を記載しても意味がありません)
また最近建築された建物ではほとんど見かけませんが、古いマンションでは『敷地権化していない区分建物』というのがあります。
この場合は上記のような敷地権の表示がないので、土地の登記簿を確認して土地の所在等と持ち分を記載することになります。
■持分の場合
相続したのが不動産全部についての所有権ではなく共有持分だった場合は、次のように持分の記載を加えます。
所在 東京都世田谷区世田谷一丁目
地目 宅地
地積 ○○.○○㎡
持分 2分の1
被相続人以外の他の共有者についての記載は必要ありません。
株式等の記載方法
株式等の有価証券類については、証券会社、発行会社、株式数などを記載して特定します。
自動車の記載方法
自動車については、車検証の記載に従って、登録番号(ナンバープレートの番号)、車名、型式、車台番号(車体番号)を記載して特定します。
代償分割する場合の記載方法
代償分割とは、特定の(又は全部の)財産を相続人の一人が取得する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払う遺産分割方法です。
主な遺産が不動産である場合によく用いられます。
代償分割する場合は次のように記載します。
相続人世田谷花子は、第1項の遺産を取得する代償として、世田谷一郎に対して、平成○○年○○月○○日までに、金600万円を支払う。
ポイントは『代償として』の部分です。
この記載がないと、代償金の支払いが単なる贈与とみなされ、贈与税を課される恐れがあります。
支払い時期については、特に定めない場合には『本協議書作成後速やかに支払う』としておけば良いでしょう。
分割払いなどについて定めた場合はそれも記載しておきましょう。
代理人が署名押印する場合の記載方法
親権者や成年後見人、特別代理人などが本人に代わって署名押印する場合は次のように記載します。
住所 東京都世田谷区世田谷一丁目○○番○○号
相続人 世田谷 一郎
住所 東京都目黒区目黒一丁目○○番○○号
世田谷一郎特別代理人 目黒 三郎 (代理人の実印)
ポイントは署名はもちろん押印も代理人のものが必要ということです。
当然印鑑証明書も代理人のものを添付します。
親権者が代理人となる場合は上記の特別代理人の部分を『法定代理人親権者』、成年後見人が代理人となる場合は『成年後見人』と記載します。
死後手続き・相続手続き代行についてくわしくはこちら
作成手段・方法・様式について
遺産分割協議書の作成手段や方法に特に決まりはありません。
記載間違いがあった時の訂正が容易なので、パソコンで案文を作成して、紙に打ち出したものに署名押印する方法をおすすめしますが、紙に全文を手書きしても構いません。
用紙に特に決まりはありませんが、法務局や金融機関に提出することを想定してA4かA3サイズで作成することが一般的です。
長期間保存することも想定して劣化の少ない紙に黒のボールペン等(フリクション等の消せるタイプでないもの)を使用しましょう。
協議書が1枚に収まらず複数になった場合は契印します。契印の方法は後の解説をご参照ください。
また、財産の数が非常に多い時は協議書の後ろに財産目録を付けた方がいいでしょう。
契印・割印について
契印の方法
遺産分割協議書の記載事項が多く複数枚になる場合は、契印が必要です。
契印の方法は次の2通りあります。
1.それぞれの用紙をホチキスで綴じて、各ページの綴じ目に(左右両ページにまたがるように)押印する。
2.遺産分割協議書を製本テープを使って製本して(袋とじにして)、表紙および裏表紙に製本テープをまたぐように押印する。
協議書が2~3枚であれば1の方法でいいでしょうが、4枚以上になると各ページに押すのは面倒なうえ、紙の厚みが出てきて押しにくいので2の方法をおすすめします。
製本と言っても、市販の数百円で買える製本テープを使えばだれでも簡単にできます。2の方法による契印は下の図を参考にしてください。
必ず相続人全員が実印で契印してください。
製本した遺産分割協議書の契印の見本
割印の方法
協議書を正本として人数分作成した場合は割印をします。
割印は協議書を重ね合わせ全ての協議書にまたがるように押印します。下の図を見ればわかると思います。
割印も相続人全員が実印で押します。
遺産分割協議書の割印の見本
死後手続き・相続手続き代行についてくわしくはこちら
後で財産が見つかった場合はどうする?
遺産分割協議をした際には認識していなかった財産が後になって見つかるという事は稀にあります。
その場合、新たに見つかった財産について相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
※遺産分割協議を行わない場合は、原則通り法定相続分に従って相続されることになります。
ただ、見つかった財産が少額の場合にまで一々話し合うのは面倒という事もあります。
そのような場合には、下記のように記載しておけば改めて協議を行う必要はありません。
【後日発見された財産の処理についての記載例①】
「後日判明した財産については相続人○○が取得する。」
また、新たに見つかった財産が少額なら協議不要だが、一定額を超える場合はきちんと話し合いたい、という場合は以下のように記載します。
【後日発見された財産の処理についての記載例②】
「後日判明した財産の価額が10万円未満の場合は相続人○○が取得する。価額が10万円以上の場合は相続人全員での協議によって取得者を決定する。」
一方、少額であっても新たに見つかった財産についてはきちんと話し合いたいという場合は以下のように記載します。
【後日発見された財産の処理についての記載例③】
「後日判明した財産については、相続人全員の協議によって取得者を決定する。」
また、預貯金や現金などの分割が容易な財産については、取得割合をあらかじめ決めておくという事も出来ます。
【後日発見された財産の処理についての記載例④】
「後日判明した財産については、相続人○○及び相続人△△がそれぞれ2分の1ずつ取得する。ただし財産の性質上分割できないものについては、相続人全員の協議によって取得者を決定する。」
こうしておけば、預貯金等については決められた割合で分割すればいいので、話し合いや協議書作成の手間は省けます。
後日財産が見つかった場合にどのように処理するかについては、相続人同士の関係性、他に財産が見つかる可能性等を考慮して、相続人代表者を中心に話し合ってあらかじめ決めておいた方がいいでしょう。
死後手続き・相続手続き代行についてくわしくはこちら
遺産分割協議書は全員が集まって作成しなければならない?遠方の相続人がいる場合はどうする?
遺産分割協議書作成のための相続人全員がすぐに集まれる状況であれば、記載内容の確認や署名押印を一度に行えるため、全員が集まって作成する方法が最も簡単かつ確実でしょう。
しかし遠方に住んでいて集まることが難しければ、郵送で各相続人に回して、順次署名押印していく方法でも全く問題はありません。
ただその際に各相続人間でばらばらにやり取りをすると、伝えた伝えていないをめぐって後でトラブルになる可能性があるので、相続人が3人以上いる場合は代表者を決めてやり取りをした方がいいでしょう。
やり取りは簡単にでもメモを残しておくことをおすすめします。
そういったやり取りが面倒な方は、遺産分割協議書の作成を専門家に依頼することを検討してみてください。
また、相続人の数が多く、それぞれ離れて暮らしている場合は、郵送で回しているうちに紛失、汚損、破損してしまうリスクがあり、間違いがあった場合の訂正も大変です。
そのような場合は、通常形式の遺産分割協議書(1枚の書面に全員が署名押印する形式)の代わりに、相続人が一人一人個別に、遺産分割協議があったことの証明書(遺産分割協議証明書)を作成する方法をおすすめします。
証明書の内容は遺産分割協議書とほぼ同一です。
違う点はタイトル(遺産分割協議証明書とします)と、遺産分割宣言の所に『相続人○○は下記内容での遺産分割協議が成立したことを証明する』との文言を加えること、署名押印するのは作成した相続人だけ、ということぐらいです。
個別に作成した証明書であっても、相続人全員分を揃えて提出すれば、法務局等での手続きでも問題なく使用できるので、相続人の数が多く、協議書の紛失や破損の懸念がある場合等には便利な方法です。
ただ、郵送による場合、本当に他の相続人の協議書や証明書との違いがないかを確かめることが難しいため、その後に各種手続きを予定されているのであれば、証明書の作成や内容のチェックも含めて専門家に任せることをおすすめします。
遺産分割協議証明書についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。
海外在住の相続人がいる場合はどうすればいい?
海外在住と言っても、日本に住所がある(住民登録がある)場合は通常と何ら変わることはありません。
しかし日本国内に住民登録がない場合は印鑑登録することはできないため、各種手続きの際に印鑑証明書を提出することはできません。
そこでこの場合は印鑑証明書の代わりに、各国の在外公館(日本国大使館や総領事館)で発行してもらえるサイン証明書を提出することになります。
注意したいのはサイン証明書には
1.サインそのものを単独で証明してもらうタイプ
2.特定の書面(遺産分割協議書又は証明書)上のサインを証明してもらうタイプ
の2種類があるということです。
1は日本の印鑑証明書に近いもので、金融機関での手続きはこのタイプで通ることがほとんどです。(稀に2のタイプを要求してくるところもあります)
2は遺産分割協議書等を持ち込む必要があり、1に比べて取得が面倒なのですが、不動産登記手続きでは2のタイプを要求されることがほとんどです。
1のタイプでは絶対に登記できないというわけではありませんが、上申書等を提出することになると思います。
なので遺産に不動産がある場合はできる限り2のタイプを取得しておきましょう。
ただ2のタイプでは、遺産分割協議書に大きな間違いがあった場合に、再度証明してもらうことになるため、記載間違いのないように、協議書の作成段階から専門家に依頼した方がいいかもしれません。
なお、サイン証明は日本の公証役場でも発行してもらえるので(遺産分割協議書を持ち込んで認証してもらいます)、郵送時の紛失等のリスクを考えると、可能であれば一時帰国等の際に取得してもらった方がいいかもしれません。
また、金融機関での手続きの際や、不動産の相続登記手続きの際には、サイン証明書と併せて在留証明書(日本の住民票の代わり)の提出が必要な場合が多いです。
在留証明書はサイン証明書と一緒に大使館等で取得できるので、忘れずに取得しておきましょう。
サイン証明を日本の公証役場でしてもらう場合は、帰国前に在留証明書を取得してもらっておいた方がいいでしょう。
ちなみに、海外在住の相続人の方について「遺産分割協議書に記載する住所は日本語と外国語のどちらで記載すべき?」という質問をよく受けますが、万全を期して日本語と外国語の住所を併記しておくことをおすすめします。
在留証明書の記載どおり正確に記載されていれば、恐らくどちらでも手続きに支障はないと思います。
ただ、両方記載しておけばどちらかに多少の記載ミスがあっても手続きできるかもしれません。
なお、すでに帰化されて日本国籍を喪失されている場合は、この他にも本人であることの証明書等が必要になることがあります。
この場合、書類の収集や各機関との調整が非常に大変なため、専門家に依頼されることをおすすめします。
死後手続き・相続手続き代行についてくわしくはこちら
遺産分割協議書を公正証書で作成するメリット
一応協議はまとまったが後で他の相続人が蒸し返してきそうで心配だ、代償金がきちんと支払われるか心配・・・という方には遺産分割協議書を公正証書で作成しておくことをおすすめします。
遺産分割協議書を公正証書で作成するメリットとしては次のようなことが挙げられます。
1.原本が公証役場に保存されるので、改ざん・変造や紛失の恐れがない。
2.公証人の関与のもと作成されるので、内容的に間違いのない協議書が作成できる。
3.公証人という第三者が関与するため、お互いに納得しやすく、後日の紛争の蒸し返しを予防できる。
4.証拠力、信頼性が高いためその後の金融機関等での手続きがスムーズに進む。
5.強制執行認諾条項付きであれば、代償金が支払われない場合にすぐに強制執行(裁判所を通じた差し押さえ)ができる。
費用がかかる(遺産額に応じて数千円~数十万円)、相続人全員で公証役場に出向かなければならない、というデメリットはありますが、遺産をめぐってトラブルになることは絶対に避けたい、という方にはそれを上回るメリットはあるので検討してみてください。
公正証書遺産分割協議書は全国どこの公証役場でも作成できるので、作成をお考えの方はお近くの公証役場にお問い合わせください。
協議書案文の作成や公証役場とのやり取りを専門家に依頼することもできます。
遺産分割協議書の作成を専門家に依頼するメリット
ここまで遺産分割協議書の書き方と注意点などについてを解説してきましたが、自分で作るのは面倒そうだから、専門家に依頼したいと思われた方もいると思います。
遺産分割協議書の作成を依頼できる専門家は主に行政書士、司法書士、税理士、弁護士の4士業です。
これらの専門家に依頼した場合、費用はかかりますが、それを上回るメリットもあります。
まず、遺産分割に争いが無い場合は、相続登記や預貯金の解約等の相続手続きを司法書士に依頼すれば、付随業務として遺産分割協議書の作成も行ってくれるところがほとんどです。
また、相続税申告を税理士に依頼すれば、なるべく節税できるような遺産分割案を提案してくれるでしょう。(相続税に強い税理士に限ります)
遺産分割に争いがある場合は、弁護士に交渉を依頼して合意が整えば遺産分割協議書の作成も当然行ってくれるでしょう。
本当に相続手続きに精通した専門家であれば、自分では気づかなかった協議書の問題点も指摘してくれるので、各種手続きを依頼される予定であれば協議書の作成段階から依頼されるのがいいと思います。
なお、税理士は業務の一環として遺産分割協議書を作成できるという明確な法的根拠がないため(作成したために処分された等の話は聞いたことがありませんが)、依頼する税理士によっては協議書の作成は断られる可能性があります。
その場合でも作成してくれる行政書士等を紹介してくれるとは思います。税理士、行政書士両方登録している方であれば問題ありません。
どの専門家に相談すればいいかわからないという方は、相続全般に強い司法書士への相談をおすすめします。
司法書士は相続登記業務の一部として、あるいは司法書士法施行規則31条が定める任意財産管理業務の付随業務として、遺産分割協議書の作成依頼や作成についての相談を受けることができます。
なお、当事務所でも相続登記や遺産承継業務(遺産整理業務)のご依頼をいただいた場合は、付随業務として遺産分割協議書の作成を行っています。
相続まるごとおまかせプランについてくわしくはこちら
遺産分割協議書の作成その他の死後手続き・相続手続きのつまずきポイント
ほとんどの人にとって死後手続き・相続手続きを行うのは初めての経験でしょうから、思わぬところでつまずいてしまうことがあります。
そこでここでは、遺産分割協議書の作成をはじめとする死後手続き・相続手続きを自分で行う場合につまずきやすいポイントについて解説します。
ご自身で手続きを行うか悩まれている方は参考にされてください。
また、これを読んで自分には難しそうだな・・・と感じられた方はお早めに専門家に相談することをおすすめします。
死後手続き・相続手続きのつまずきポイントについて
死後手続き・相続手続きを、ご自身で行う場合多くの方がつまずくポイントとしては、主に以下の3つが挙げられます。
1
相続財産の種類や数が多く、把握するだけでも時間がかかる。
亡くなった方が各地に不動産をお持ちだった場合や、株式や投資が趣味だった場合などは、財産の全容を把握するだけでもかなりの時間がかかります。
特に相続税申告が必要な場合は、すべての財産についてその有無や詳細を調査しなくてはなりませんが、普通の方が、様々な種類の財産について漏れのないよう効率よく調べるのは至難の業です。
ようやく調査が終わったころには申告期限が過ぎてしまっていた…という事になってしまうかもしれません。
2
遺産分割協議などで相続人間の調整が大変。
相続手続きについては、遺言書がある場合を除いて、原則として相続人全員で手続きを行う必要があります。
相続人が複数いれば、多くの場合、遺産分割協議書を作成することになります。
知識のない一般の方が自分たちだけで協議を進めようとすると、分け方などをめぐって意見が一致しない場合に、手続きが止まってしまったり、最悪の場合、不信感から争いに発展してしまう事さえあります。
3
手続きの分担をめぐって不公平感が生じてしまう。特定の方に手続きの負担が偏ってしまう。
相続人の方が複数いる場合、死後手続き・相続手続きを行うにあたって、公平に分担することができればいいのですが、実際には仕事の忙しさや、居住地の関係などの事情から特定の方に負担が偏ってしまいがちです。
また、代表者の方が主に書類の手配や手続先とのやり取りを行うケースも多いのですが、財産は等分なのに自分ばかり負担が大きいということで、不満がたまり、手続き後もわだかまりが残ってしまうことがあります。
特定の方への負担の偏り、手続きの分担をめぐる不公平感は、見落とされがちですが重要なつまずきポイントです。
相続まるごとおまかせプランについてくわしくはこちら
死後手続き・相続手続きの代行を当事務所に依頼した場合
遺産分割協議書の作成をはじめとする死後手続き・相続手続きについては、上記のようなつまずきポイントがあるため、ご自身で行おうとしたものの、やっぱり専門家に依頼することにした、という方も多いです。
当事務所では、面倒な相続手続きをまるごとおまかせできる「相続まるごとおまかせプラン」をはじめとした相続代行サービスを提供しているので、遺産分割協議書の作成手続きを含む死後手続き・相続手続き全般について代行・サポートが可能です。
遺産分割協議書の作成を含む死後手続き・相続手続きを、当事務所にご依頼いただいた場合の主なメリットは以下のとおりです。
メリット1
相続財産の種類や数が多い場合も、最大限効率よく調査を行うので、その後の遺産分割協議や相続税申告に余裕をもって対応することができます。
メリット2
相続関係その他の事情によって異なる必要書類の内容や有効期限についても正確に把握しているため、不足書類の取得で手間がかかることはありません。
メリット3
手続きの数が多い場合は、法務局で「法定相続情報一覧図」を取得するなどして、最小限のコストで効率よく手続きを行うため、戸籍等の原本還付待ちによる時間のロスや、戸籍等を多く取得しすぎたことによる無駄なコストが発生することはありません。
メリット4
公平な立場から、適切な遺産分割についてのアドバイス・サポートを行うので、わだかまりを残すことなく、円満な相続が実現できます。
メリット5
各相続人への連絡・説明や、必要書類の郵送手配なども当事務所が代行するため特定の方に負担が偏ることはありません。
メリット6
司法書士は、遺言の検認、成年後見制度の利用申し立て、特別代理人の選任その他の家庭裁判所での手続きについてもサポート可能なので、相続手続きをまるごとおまかせいただけます。
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遺産分割協議書についてのよくある質問
ここからは遺産分割協議書や関連する事項についてのよくある疑問・質問・注意点などをQ&A方式で解説していきます。
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遺産分割協議書の作成で困ったら専門家に相談しましょう!
今回の記事を参考にすれば、各種手続きに問題なく使える遺産分割協議書を作成できると思います。
ただし遺産分割協議書の作成はゴールではなく、作成後速やかに遺産相続手続きを行うことが大切です。
手続きが大変そうだと感じられている方や、協議書の内容に不安を感じられている方は、協議書の作成も含めて専門家に相談することをおすすめします。
遺産分割協議書の作成を含む遺産相続手続きについてのご相談は当事務所で承ります。ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。
記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。
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