成年後見申立で必須!登記されていないことの証明書とは?-取得方法などー

登記されていないことの証明書とは

『登記されていないことの証明書』という書面を見たことがある方はそう多くはないでしょう。

むしろそんなの聞いたこともないという方が大半かも知れません。

しかし成年後見等開始の申立てをする際には、この証明書が必要になります。

馴染みのない書類だけに請求の際には注意が必要です。

そこでここでは、一般の方にはほとんど馴染みのないこの『登記されていないことの証明書』について、取得方法や請求の際の注意点などについて解説します。

ご自身で成年後見申立を行おうとしている方はぜひ参考にしてみて下さい。

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目次

登記されていないことの証明書の概要

まずは『登記されていないことの証明書』とは、どのようなものでどんな時に必要になるかを大まかに説明します。

※すでに知っているという方や、とにかく請求の方法だけ知りたいという方はこの項は読み飛ばして構いません。

証明書によって証明される内容とは?

『登記されていないことの証明書』とは、その名のとおり登記されていないことを証明するものですが、登記と言っても不動産登記や商業登記のことではなく、成年後見登記のことを指します。

現行の成年後見制度のもとでは、成年後見等が開始したことは東京法務局後見登録課の『後見登記等ファイル』に登記されます。

後見登記等ファイルに本人(成年被後見人等)として記録されている場合、日常生活や営業活動に必要な意思能力が十分でないと考えられるため、一定の資格についての登録や一定の事業・営業を行うための許認可申請が認められません。

そのため、各種の資格登録や許認可申請の際には『登記されていないことの証明書』によって、自分に士業としての職務や事業・営業活動を行えるだけの意思能力が十分に備わっていることを証明する必要があるのです。

どんな時に証明書が必要?

弁護士や司法書士、税理士など、多くの士業の資格登録の際には証明書の提出が必要になります。

また、建設業、古物商、風俗営業などの一定の事業・営業を行うための許認可申請の際にも証明書の提出が必要になることがあります。

そして、成年後見等の申立てをする際にも証明書の提出が必要になります。

ただし、これは意思能力が十分にある事の証明のためではなく(十分でないから申立てる事がほとんどでしょう)、すでに後見登記等ファイルに登記されているにもかかわらず、重ねて同様の審判がされることが無いようにするためです。

登記事項証明書、身分証明書との違い

登記されていないことの証明書と類似したもので、『(成年後見)登記事項証明書』と市区町村が発行する『身分証明書』があります。

『(成年後見)登記事項証明書』とは、東京法務局の後見等登録等ファイルに記載された事項についての証明書です。

主に成年後見人等が選任後の職務を行うにあたり、自分の権限を証明するために必要になります。

市区町村発行の『身分証明書』とは現行の後見制度の前身制度である禁治産・準禁治産制度における『登記されていないことの証明書』のようなものです。

※禁治産者・準禁治産者である事は戸籍に記載されていました。

現行制度開始(2000年4月1日)より前の時期についての証明が必要な場合はこちらを取得することになりますが、後見等開始申立ての際には原則として取得する必要ありません。

もっとも、身分証明書には破産者でないことについても記載されるため、後見人等の候補者が破産者でないことの証明のために提出を求められる可能性はあります。(破産者は後見人等になれません)

また、資格や業種によっては登録や許認可申請の際に、破産者でないことの証明のために提出が必要になる事があります。

登記されていないことの証明書の請求方法

登記されていないことの証明書の請求・取得方法は次の通りです。

なお、以下では主に成年後見等開始申立てのために取得する場合を想定して記述していますが、その他の目的で取得が必要な場合も基本的に請求方法は同じです。

請求方法、請求先

登記されていないことの証明書は、法務局の窓口での申請と郵送での申請の2通りの方法で請求可能ですが、それぞれ請求先が異なるため注意しましょう。

■窓口での申請

東京法務局後見登録課または全国の法務局・地方法務局の本局の戸籍課の窓口に必要書類を提出して申請します。

気を付けたいのは窓口での取り扱いがあるのは各法務局の『本局』のみであり、支局や出張所での取り扱いはないという点です。

神奈川県内の法務局を例にとると、横浜市中区の横浜地方法務局(本局)では窓口での請求が可能ですが、川崎支局や戸塚出張所などのその他の法務局(登記所)での取り扱いはないという事です。

窓口での申請の場合、当日の混雑具合にもよりますが、書類に不備が無ければ10~20分程度の待ち時間で取得できるでしょう。

郵送より確実に早く取得できるため、その後の手続きを急いでいる方はこちらの方がいいでしょう。

なお、請求対象者の住所地、本籍地による申請窓口の制約はありません。

■郵送での申請

郵送での申請の場合の請求先は、東京法務局後見登録課のみです。

他の法務局に郵送請求することはできないので注意しましょう。

請求の際は後述する必要書類の他に、返送先を明記した返信用封筒(切手を張り付けたもの)を忘れずに同封して、下記宛先に送付します。

郵送の場合、郵便が到着してから証明書が送付されてくるまでおおむね1週間程度かかります。

●郵送先

〒102-8225 

東京都千代田区九段南1丁目1番15号 九段第2合同庁舎
東京法務局 民事行政部 後見登録課

請求できる人

◎証明の対象者本人

対象者の配偶者及び四親等内の親族

◎上記の方から委任を受けた代理人

請求に必要な書類

■本人または親族による請求の場合

●申請書

こちらの法務局ホームページからダウンロードできます。

登記されていないことの証明申請について|東京法務局

※上記リンク先の申請書は直接入力可能なPDFファイルですが、お使いのPC等の環境により上手く入力できない場合はプリントアウトして記入してください。

記載例はこちら

登記されていないことの証明申請書記載例|東京法務局

●請求者の本人確認書類

運転免許証、健康保険証、パスポート、住基カード、マイナンバーカード等

※郵送申請の場合はコピーを同封します。

●証明の対象者との関係を証明する戸籍謄本等(配偶者や親族による請求の場合のみ)

証明の対象者本人の配偶者や親族の方が請求する場合、配偶者又は四親等内の親族であることを証明するために戸籍謄抄本や住民票等の提出が必要になります。

本人と請求者が同一戸籍の場合は戸籍謄本一通のみで足りますが、別戸籍の場合は本人と請求者それぞれの戸籍謄本等が一通づつ必要になります。

郵送の場合でもコピーではなく原本の提出が必要ですが、後述する方法で原本還付を希望すれば、証明書と共に戸籍謄本等の原本は還付(返却)されます。

■委任を受けた代理人による請求の場合

●申請書

本人や親族等による請求の場合と同様です。

●代理人の本人確認書類

請求者(委任者)の本人確認書類は不要ですが、代わりに代理人のものが必要になります。

郵送の場合はコピーを同封します。

●証明の対象者との関係を証明する戸籍謄本等(配偶者や親族による請求の場合のみ)

配偶者や親族から委任を受けた代理人による申請の場合、証明の対象者と請求者(委任者)の関係を証明する戸籍謄抄本が必要になります。

郵送の場合でも原本の提出が必要ですが、原本還付は可能です。

●委任状

本人または親族等から委任を受けたことの証明として必要になります。

委任状の書式及び記載例はこちら(リンク先は東京法務局のホームページです)

委任状

委任状記載例

◆郵送による請求の場合

上記の書類に加えて返送先を明記した返信用封筒。(切手貼付)

請求にかかる費用

◎発行手数料

収入印紙300円分(証明書1通につき)

証明書発行手数料として証明書1通につき300円を納めます。

申請用紙の所定の場所に通数分の収入印紙を貼りつけてください。

収入印紙は郵便局及び法務局などで購入できます。

※コンビニでも売っていますが、200円の印紙しか取り扱っていないところがほとんどです。

この他、親族等による請求の場合は戸籍謄本等の発行手数料(1通につき450円)、郵送による請求の場合は郵便料金(切手代)が必要になります。

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請求の際の注意点

登記されていないことの証明書を請求する際は以下のことに気を付けましょう。

戸籍謄本を添付する場合は発行から3か月以内のものが必要

本人以外の配偶者や親族が請求する場合、本人との関係を証明するために戸籍謄本等を添付する必要がありますが、この戸籍謄本等は提出時点で発行から3か月以内のものでなくてはなりません。

3か月以内の期限があるのは現在戸籍謄抄本や住民票です。除籍謄抄本又は改製原戸籍の謄抄本が必要となる場合には、発行後3か月以内のものでなくても大丈夫です。

新たに戸籍を取得する場合は問題ないでしょうが、遺産分割のために成年後見の申立てを行う場合など、すでに戸籍が手元にある場合もあると思います。

そのような場合は戸籍謄本等の末尾の発行日をきちんと確認しましょう。

この期限については、東京法務局のホームページにも記載されていますが、うっかり見落としがちです。

期限切れのものを提出してしまうと再提出となり、余計な手間がかかるため気を付けましょう。

添付した戸籍謄本等を返却してもらうためには原本還付処理が必要

本人以外の親族等が請求する場合、戸籍謄本等の原本の提出が必要になりますが、提出した書類は原則として返却されません。

ただし請求と同時に原本還付の手続きを行えば証明書の交付と同時に返却してもらえます。

戸籍謄本等は後に成年後見等の申立てでも必要になるため、忘れずに原本還付してもらいましょう。

原本還付の方法は以下の通りです。

●原本還付処理の手順

① 返却してもらいたい書類のコピーを取る(複数枚にわたる場合は全てのページのコピー)

② コピーしたものをすべてホッチキスで留める。

③ 最初または最後のページに『この写しは原本と相違ありません』と記入する。

④ ③で記載した箇所の近くに請求者の氏名を署名(又は記名)し、押印(認印でOK)する。

⑤ ④で使用した印鑑で各ページにまたがるように契印する。(契印の方法については下記の例を参考にしてください

⑥ 出来上がったものを原本と一緒に窓口へ提出する。(郵送の場合は同封して送る)

※原本還付してもらいたい書類が1部かつ1枚の場合は②、⑤の手順は不要です。

原本還付の方法は下記の例(東京法務局ホームページより引用)も参考にしてください。

戸籍謄本等の原本還付の方法(クリックで拡大します)

契印・原本証明についてはこちら

契印・原本証明の例(クリックで拡大します)

申請書の証明事項欄のチェック間違いに注意

申請書には証明事項をチェックする欄があり、チェックボックスが4つほど並んでいますが、成年後見等の申し立てを行う場合は必ず『成年被後見人,被保佐人,被補助人,任意後見契約の本人とする記録がない。』の所(上から3番目のチェックボックス)にチェックを入れてください。

専門的な話になりますが、本人について任意後見契約があると、原則として任意後見が優先されるため、申立てをしても法定後見開始の審判は行われません。(例外的な場合は除く)

そのため任意後見契約の有無についても証明する必要があるのです。

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証明書を取得したら早めにその後の手続きを

登記されていないことの証明書を取得したら、その後は早めに本来必要な成年後見開始申立て等の手続きを行いましょう。

証明書には特に有効期限はありませんが、提出先によっては3か月以内など一定の期間内に発行された証明書を求められる可能性があります。

詳しくは提出先に確認してください。

成年後見の申立て方法や手続きの流れについてはこちらをご覧ください

登記されていないことの証明でお悩みの方は専門家へ相談を!

登記されていない証明書の請求・取得は難しくはないため、この記事を参考にすれば誰でも確実に取得できるでしょう。

ただし、その後の成年後見申立については人によっては難しいと感じる方もいると思います。

ご自身での申し立てが難しい方や、申立てのために時間が取れないがすみやかに申立てを行う必要がある方は、証明書の取得も含めて司法書士などの専門家に相談されることをおすすめします。

成年後見申立や任意後見契約に関するご相談は当事務所で承ります。ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。

※申し訳ございませんが、登記されていないことの証明書の請求方法についてのみのご質問やお問い合わせにはお答えできません。東京法務局後見登録課などの関係各所にお問い合わせください。

記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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