これで完ぺき!成年後見の申立て方法・手続きの流れ

成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症等の影響により判断能力が衰えた方がそのことによって不利益を受けないように、本人に代わって成年後見人等が契約行為その他の法律行為や財産管理を行う制度のことです。

成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度の2種類があり、多くの方に利用されているのは法定後見制度の方です。

申立ての流れについてしっかりと理解しておきましょう。

法定後見制度の利用を開始するためには家庭裁判所に申立てを行い、成年後見人等を選任してもらう必要があります。

申立ては特に専門家に依頼しなくても、誰でも行うことができます。

申立てできるのは、後述する一定の親族等です。

ところが、ほとんどの方は裁判所での手続きの経験が無く、心理的抵抗を感じる方も少なくありません。

そのせいで制度の利用が必要にも関わらず、なかなか利用に踏み切れないという方も多くいらっしゃいます。

そこでここでは成年後見制度(法定後見制度)を利用するために必要な、家庭裁判所への申立て方法や申立て後の手続きの流れについて解説します。

申立ての際に気を付けるべきポイントなどについても実務的な面から詳しく解説するので、ある程度時間に余裕があり、事務処理が苦手な方でなければこの記事を参考にして自分で申立てを行うことができると思います。

また、この記事を読んで自分には難しそうだなと感じられた方は、司法書士などの専門家に申立ての段階からサポートしてもらうことをおすすめします。

なお、制度利用のメリット・デメリットや利用が必要なケースなど、成年後見制度自体について詳しく知りたいという方はこちらの記事をお読みください。

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目次

成年後見等開始申立ての流れ

まずは成年後見申立ての大まかな流れについて把握しておきましょう。

なお、成年後見制度(法定後見制度)には補助・保佐・後見の3類型がありますが、今回の記事では圧倒的に利用者数の多い後見類型を中心に記述します。

※補助・補佐類型でも基本的な流れはほとんど同じです。

申し立てから後見開始までの大まかな流れは以下の通りです。

※クリックするとそれぞれの手順についての詳しい記述に移動します。

1.(準備)申立てに必要な資料・書類を集める。

2.(申立て)管轄の家庭裁判所に後見開始の審判を申立てる。
※通常は申立時に家庭裁判所で受理面接が行われる。

3.(審理)家庭裁判所によって申立人及び候補者の面接、本人の面接、親族への照会などが行われる。
※申立人や候補者の面接は受理面接という形で行われるのが通常。本人の面接や親族への照会は省略されることも多い。

4.(鑑定)必要に応じて医師による鑑定が行われる。
※省略されることが多い。

5.(審判)家庭裁判所によって成年後見人が選任される。

6.(通知・後見開始)申立人と後見人に審判書謄本が郵送され、審判確定後、後見開始の旨が登記される。

以下、それぞれの手順についてくわしく解説します。

1.(準備)申立てに必要な資料・書類を集める。

成年後見申立で最も重要なのはこの事前準備です。事前準備をしっかりと行えば申立ての8割は完了したと言っても過言ではありません。

申立てに必要な書類・資料は次の通りです。

※クリックするとそれぞれの書類についての詳しい記述に移動します。

■本人に関して必要な書類

■後見人候補者に関して必要な書類
  • 後見人等候補者事情説明書
  • 戸籍謄抄本(本人と候補者が同一戸籍の場合は戸籍謄本1部でOK)
  • 住民票(本人と候補者が同一世帯の場合は世帯全部の住民票1部でOK)

このほか、遺産分割のために成年後見申し立てを行う場合は、遺産目録などのに関する資料の提出も必要になります。

以下、それぞれの書類収集や作成の際の注意点について解説します。

なお、これらの書類の書式(ひな型)については下記裁判所ホームページからダウンロードできます。

申立てをお考えの方へ(成年後見・保佐・補助)|東京家庭裁判所後見センター

※上記リンク先からダウンロードできるのは東京家庭裁判所の書式です。基本的な様式は同じですが、微妙に異なる部分もあるため、申立先の家庭裁判所のホームページからダウンロードしてご利用ください。

●申立書、申立事情説明書

申立人及び本人並びに申し立ての実情に関して記載します。

それほど難しい質問等はないのでできるだけ全ての項目を埋めましょう。本人の経歴等わからない部分については空欄でも大丈夫です。

提出の際には申立書の上部の印紙欄に収入印紙(後見開始の場合は800円)を忘れずに貼り付けましょう

●親族関係図

書式には親や兄弟姉妹の欄についても記載欄がありますが、基本的には推定相続人について確実に記載しておけば十分です。

本人に子供がいる(存命している)場合は、親や兄弟姉妹についてはわかる方だけで大丈夫です。

一方、本人に子供がいないケースでは親や兄弟姉妹が推定相続人となるためしっかりと記載しておきましょう。子供がすでに亡くなっている場合の孫等についても同様です。

生年月日はわからなければ空欄でも大丈夫です。

●戸籍謄抄本

戸籍は本人の本籍地の市町村役場で取得できます。本籍地がわからない場合は、住民票を本籍地の記載を省略せずに取得すればわかります。

同一世帯又は直系血族(子供、孫、父母等)の方は、特に理由を説明することなく請求することが可能ですが、兄弟姉妹等が本人の戸籍を請求する場合は、請求理由について詳細な説明を求められることがあります。

本人以外が申立てる場合、戸籍が無ければ後述する『登記されていないことの証明書』も取得できません。

ご自身で取得するのが難しければ司法書士などに申立てを依頼しましょう。

●親族の同意書

同意書が必要な親族は、本人の推定相続人(現段階での法定相続人)です。

法定相続人とはおおむね次の方です。

  1. 配偶者
  2. 子供(子供がすでに亡くなっている場合はその子供(孫))
  3. 子供や孫がいない場合は直系尊属(父母や祖父母)
  4. 子供、孫、直径尊属のいずれもいない場合は兄弟姉妹(兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合はその子供(甥や姪))

連絡がつかない、申立てに反対している等の理由で同意書をもらえない方の分は提出する必要はありません。

ただし、後日裁判所から親族に照会の電話が入り、審理期間が長引く可能性が高くなります。

同意書のある親族については基本的に照会はされないため、手続き期間短縮のためにもできるだけ申立て時に揃えておきましょう。

法定相続人や法定相続分についてくわしくはこちら

●登記されていないことの証明書

本人についてすでに任意後見等の登記がされていないかを確認するために必要になります。

請求できるのは本人及び四親等内の親族と、その代理人です。

全国の法務局・地方法務局の本局(支局・出張所での取り扱いは無し)の窓口で請求できるほか、郵送での請求も可能です。

ただし郵送での請求先は東京法務局のみなので注意しましょう。

請求方法については下記の法務局ホームページをご覧ください。

登記されていないことの証明書の説明及び請求方法|東京法務局

なお、親族であることを証明するために添付する戸籍謄本等は、発行から3か月以内のものでなくてはならないため注意しましょう。

また、添付した戸籍謄本等は後見申立でも必要なため、忘れずに原本還付してもらいしましょう。

登記されていないことの証明書の請求方法についてくわしくはこちら

●本人の財産目録及びその資料

財産目録は裁判所所定の書式もありますが、書式を参考にして自分でエクセルシートなどにまとめたものでも構いません。

財産目録には財産の所在、価格などを証明する資料を添付します。

具体的には以下のようなものです。

・不動産・・・登記事項証明書(登記簿謄本)

・預貯金・・・通帳のコピー

・株式等の有価証券・・・残高証明書や評価明細書のコピー

・保険契約・・・保険証券のコピー

不動産の登記事項証明書だけはコピーではなく原本の提出が必要なので、気を付けましょう。

申立て段階ではすべての収支を把握することが難しいこともありますが、後見人選任後の調査の負担を減らすためにも、できるだけ正確なものを作成しましょう。

また、プラスの財産だけではなくローンなどの負債についても、財産目録への記載および資料の提出が必要なため、忘れないよう注意しましょう。

●本人の収支状況報告書及びその資料

直近2か月の本人の収入および支出の状況について表にまとめたものを提出します。

ここに記載漏れがあったり、計算間違いがあったり、多額の使途不明金があったりすると、家庭裁判所から確実に指摘を受けます。

場合によっては事務処理能力に問題ありという事で、候補者を後見人に選任してもらえないこともあるため、できる限り不備のないものを作成しましょう。

報告書には、領収書や通帳のコピーなどの収入・支出額がわかる資料を添付します。

通帳のコピーの取り方は下記の画像を参考にしてください。

千葉家庭裁判所ホームページより引用

通帳等のコピーの取り方(画像クリックで拡大します)

●医師の診断書、診断書付票

かかりつけの医師(主治医や担当医)に家庭裁判所所定の様式のものに記入してもらいます。主治医が精神科の医師でなくても構いません。

本人の精神状態が微妙な場合(後見類型相当か補佐類型相当かかなり微妙な場合など)以外は書いてもらえることが多いと思います。

主治医等がいない場合や、いても診断書は書けないと言われた場合は対応して貰える医師に相談しましょう。

主治医に拒否された場合は精神科の専門医に書いてもらうのが望ましいです。

診断書の作成報酬は医師によりますが、おおむね3千円~1万円ぐらいでしょう。

●本人の健康状態のわかる資料

補助・保佐・後見のどの類型に相当するか(あるいは制度の利用が必要ないか)を判断するために必要となります。

具体的には、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳(愛の手帳)、介護保険認定書等の本人の精神の状態、要介護度が分かる書面のコピーを添付します。

●後見人候補者事情説明書

候補者が後見人としてふさわしいかを判断するための資料となります。

後見人になるのに特に立派な経歴等が必要なわけではないので、ありのままを漏れのないよう記載すれば大丈夫です。記入者の印鑑を忘れずに押印しましょう。

必要書類の説明は以上になりますが、申立ての段階では本人の財産や収支状況について把握するのが難しいケースもあるため、これらの書類をすべて完璧な状態で提出する必要はありません。

財産目録や収支報告書については、後見人選任後約2か月という厳しい時間制限内に改めて作成して提出しなければなりません。

特に申立人が後見人になる予定であれば、後の負担を減らすためにも、できるだけ詳細かつ正確な書類を作成するようにしましょう。

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2.(申立て・受理面接)管轄の家庭裁判所に後見開始の審判を申立てる。

書類が整ったら、いよいよ管轄の家庭裁判所に申立てを行います。

申立先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

申立て時の具体的な流れは以下の通りになります。

1.家庭裁判所に電話して申立日時(受理面接日時)の予約を入れる。
  ※予約時に伝えられる予約番号を控えておく。

2.申立日の3日前(土日祝除く)までに到着するように、申立書類を郵送する。

3.申立日になったら家庭裁判所に行く。

4.予約時間になったら調査官(参与員)による面接が行われる。

申立時には、家庭裁判所の調査官(参与員)によって申立人及び後見人候補者(本人が来れる場合は本人も)の受理面接(即日面接)が行われます。

まずは管轄の家庭裁判所に電話をして受理面接の予約を入れます。

余裕がある時期なら3日後に予約が取れることもありますが、時期によっては数週間から1か月以上先になることもあるようです。

予約の際には本人も来れるかの確認がされますが、後見類型の場合容易には来れない事の方が多いでしょう。

申立人及び後見人候補者がいれば問題なく受理面接は行われます。

予約の際に伝えられた予約番号は後で必要になるので必ず控えておきましょう。

もっとも、予約番号がわからなくても当日少し手間がかかるだけで面接が行われないわけではありません。

受理面接では、提出した書類をもとに申立ての経緯や本人の状況などについて調査官等からの質問があります。

その後の手続きをスムーズに進めるためにも、面接日の3日前までには裁判所に到着するよう申立書類一式を郵送して、事前に確認してもらいましょう。

場合によっては追加で書類の提出を求められることもあります。

申立日当日は遅刻しないよう時間に余裕を持って行動しましょう。

特に人の出入りが多い大きな裁判所では入庁時の手荷物検査で時間を取られたり、建物内で迷ったりすることも予想されるため、遅くとも予約時間の15分前には到着するようにしておきましょう。

面接時の服装に決まりはなく、スーツなどでなくても問題ありません。

ただ、服装のみで判断されるという事は無いにしても、調査官も人間ですから、後見人候補者があまりにだらしない恰好だと、『この人で大丈夫かな・・・』と悪い印象を与えてしまうかもしれません。

社会人としてTPOをわきまえた常識的な服装を心がけましょう。

面接自体は特に難しいことを聞かれるわけではないので、調査官や参与員に聞かれたことに対してありのままを答えれば大丈夫です。

うまく受け答えができなかったからと言って申立てが受理されないという事もありません。

ただし後見人候補者の方については、面接時の受け答えによっては適格性なしと判断される可能性もあります。

もっとも、希望した候補者が選任されないケースというのは、本人の財産が多額であったり、親族間で争いがあるなど、候補者の適格性以外に問題があることが多いです。

そのような事情が無ければ候補者がそのまま選任されることがほとんどなので、あまり身構える必要はありません。

裁判所や調査官にもよるかもしれませんが、候補者がそのまま選任される見込みが低いケースでは面接時にその旨を伝えられ、後見人候補者の変更や後見制度支援信託の利用を促されることが多いようです。

なお、司法書士や弁護士を後見人候補者とする場合、その方が裁判所の候補者名簿に記載されている専門職であれば、候補者についての面接は省略されることが多いようです。

もっとも、その場合でも申立人の面接は原則として行われるので、不安な方は候補者となる方に同席してもらった方がいいかも知れません。

3.(審理)家庭裁判所によって申立人及び候補者の面接、本人の面接、親族への照会などが行われる。

上記のとおり申立人及び後見人候補者に関しては、申立時に面接が行われるのが通常です。

さらに本人の精神状態を確認する必要があるため、裁判所へ来ることが可能であれば、申立時に本人についても面接が行われます。

しかし後見申立ての場合は、本人は健康状態や精神状態等の問題によって来ることが難しいことも多いです。

その場合は本人の面接は後日行われるという事になっており、裁判所のホームページ等にもそう記載されています。

ただし、裁判所の人員等の問題もあり、実際には医師の診断書によって意思能力が無い(後見相当である)ことが明らかな場合には、本人の面接は省略されることが多いようです。

また、親族への照会についても、申立時に同意書を提出した親族については行われないことがほとんどです。

一方、同意書を提出しなかった場合は一定の範囲の親族に対しては、原則として照会(申立てについての意向の確認)が行われることになります。

ただ、成年後見制度は本人保護のための制度なので、たとえそこで親族が反対の意向を表明したとしても、裁判所が本人のために必要と判断すれば、成年後見人等が選任されます。

ただし、反対する親族がいる場合は親族間に争いがあるという事で専門職を関与させるとの判断が下される可能性が高いでしょう。

4.(鑑定)必要に応じて医師による鑑定が行われる。

鑑定とは、本人に判断能力があるかを医学的に判定する手続きです。

鑑定が行われる場合、通常は裁判所から主治医に依頼があり、鑑定が行われるという流れになります。

鑑定の費用は申立人の負担となり(申立てによって本人からの償還を求めることはできます)、相場は5~10万円程度です。

もっとも後見開始申立ての場合は、本人の精神状態が微妙だと思われるとき(保佐相当か後見相当か微妙な場合など)を除いて、鑑定は行われないことが多く、鑑定が行われるのは申立て全体の1割程度に過ぎません。

5.(審判)家庭裁判所によって成年後見人が選任される。

家庭裁判所による調査・審理を経て、後見制度の利用が相当であると判断されれば、後見等開始の審判がなされ、あわせて成年後見人等を選任する審判がなされます。

問題が無ければ候補者がそのまま選任されることが多いですが、場合によっては司法書士等の専門職が選任されたり、後見監督人が選任されることもあります。

6.(通知・後見開始)申立人と後見人に審判書謄本が郵送され、審判確定後、後見開始の旨が登記される。

審判後、審判書謄本が本人及び申立人並びに後見人等に郵送されます。

後見人が審判書謄本の送達を受けた日(受領した日)から2週間以内に、利害関係人等から不服申し立て(即時抗告)がされなければ、審判が確定し、その日から後見人としての職務が開始します。

もっとも、金融機関等での手続きには成年後見人であることが記載された登記事項証明書が必要になるため、多くの場合、実際に職務を開始するのは東京法務局に登記がされた後になるでしょう。

審判の確定から登記が完了するまでの期間はおおむね2週間程度です。

なお、成年後見開始の審判や申立てを却下する審判に対しては不服を申し立てることができますが、後見人選任の審判、すなわち後見人の人選については不服を申し立てることはできません。

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成年後見等開始申立ての概要

成年後見等開始申立の申立先、申立権者、費用、期間等は以下の通りです。

申立先

本人の住所地を管轄する家庭裁判所

住所地とは基本的には住民登録がある所、すなわち住民票上の住所という事です。

自宅とは住所管轄の異なる病院に一時的に入院していたとしても、申立ては自宅所在地を管轄する家庭裁判所に対して行います。

ただし、病院や介護施設等に長期入院・入所している場合には、その施設等の所在地が住所地として認められる場合もあります。

そのような例外的な場合は、具体的事情に基づいて裁判所が判断するので、必ず家庭裁判所に確認しましょう。

また、勘違いされている方も多いのですが、申立先は申立人の住所地を管轄する裁判所ではありません。

遠方に住む親族の方が申立てせざるを得ない場合は、後見人候補者を誰にするかを含めて、事前に司法書士等に相談してから申立てることをおすすめします。

申立てできる人

本人、配偶者、4親等内の親族など

後見類型では本人に申立て出来るだけの意思能力がある事はほぼないでしょうから、実際には配偶者又は4親等内の親族による申立てがほとんどです。

配偶者というのは法律上の夫や妻のことであり、内縁の妻や夫には(養子縁組等をしていなければ)申立権はありません。

4親等内の親族がどこまでを含むかについてですが、民法上の定義によれば『親族』とは配偶者の他は

『6親等内の血族』

※血族=血のつながりのある家族や親戚。養子縁組による血族関係含む

又は

『3親等内の姻族』

※姻族=婚姻によってできた親戚

を指します。(民法725条)

つまり結局のところ後見等開始の申し立てができるのは

①4親等内の血族

②3親等内の姻族

という事になります。

具体的には

①4親等内の血族・・・両親、祖父母、子、孫、兄弟姉妹、甥姪、おじおば、いとこ、甥姪の子など

②3親等内の姻族・・・配偶者の両親、配偶者の祖父母、配偶者の兄弟姉妹、配偶者の甥姪、配偶者のおじおばなど

といった方々が申し立てできるという事になります。

なお、親族の他に検察官も申立てを行うことができますが、実際に行われることはほとんどありません。

また、成年後見制度の利用が必要な状況であるにもかかわらず、下記のような事情がある場合には、市区町村長も申立てをすることができます。

・4親等内の親族がいない場合

・4親等内の親族がいても、音信不通だったり、申立を拒否している場合

・虐待等の理由により、親族による申立が適当でない場合​

申立てにかかる費用

成年後見等開始申立てに必要な費用は以下のとおりです。

この中で収入印紙及び連絡用の郵便切手については申立時に納める必要があります。

これらの費用については申立人が負担することになりますが、一部については本人の財産からの償還を求めることは可能です。(詳しくは後記O&A参照

◎手数料(収入印紙)

■後見等開始申立て手数料一覧(単位:円)
 後見保佐補助
申立手数料(収入印紙)800800~2400※11600~2400※2
登記手数料(収入印紙)240024002400

※1 

  • 保佐開始の申立てのみ…800円
  • 保佐開始の申立て+同意権追加付与の申立て…1600円
  • 保佐開始の申立て+代理権付与の申立て…1600円
  • 保佐開始の申立て+同意権追加付与の申立て+代理権付与の申立て…2400円

※2

  • 補助開始の申立て+同意権付与の申立て…1600円
  • 補助開始の申立て+代理権付与の申立て…1600円
  • 補助開始の申立て+同意権付与の申立て+代理権付与の申立て…2400円

◎連絡用の郵便切手

裁判所により異なるがおおむね3000~5000円程度

◎医師による鑑定手数料

5~10万円程度

※ただし実際に鑑定が行われるのは全体の1割程度

◎その他に必要になる費用

・戸籍、住民票、登記されていないことの証明書等の発行手数料…各数百円程度

・本人の精神状態についての医師の診断書作成料金…5000~1万円程度

※参考

司法書士等の専門家に申立ての代行を依頼した場合の報酬相場…10~15万円程度

申立てから審判(後見開始)までの期間

申立てから後見人等が選任されるまで(後見等開始の審判がされるまで)の期間は、申立ての事情や裁判所の混み具合にもよりますが、おおむね3か月以内には審判がされるようです。

以前に比べれば審理期間は短縮傾向にあるようで、東京家庭裁判所ではよほど複雑な事案でなければ、最近は1~2か月程度で審判があるようです。

提出書類等に不備が少ない方が、審理期間も当然短縮されるでしょうから、お急ぎの方は司法書士等の専門家に申し立てを依頼した方がいいかも知れません。

以前当事務所で後見申立てを行った事例では、受理面接時に申立て(受理面接)から審判まで1か月~1か月半程度と言われたものの、実際には10日程度で審判されたこともあります。

※本人の精神状態その他の様々な事情によって期間は変わってくるので参考までに。

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成年後見等開始申立てについてのよくある質問

ここからは成年後見等開始申立てについてのよくある疑問・質問・注意点などをQ&A方式で解説していきます。

高齢の兄弟について申立てを考えています。他に頼れる人もいないので自分が後見人となるつもりですが、私自身70歳を超えています。後見人になるのに年齢制限はありますか?

法律上年齢の上限はありませんが、実際のところ、一定年齢以上の高齢者は選任されにくい傾向にあります。

後見人に選任されるのに年齢は考慮されるか?という点ですが、下限については未成年者は後見人になれないと法律で定められています。(民法847条)

これに対して上限については法律上の制限はありませんが、誰を後見人に選任するかは家庭裁判所が判断することであり、その判断過程で年齢については当然考慮されるものと思われます。

実際のところ、後見人があまりに高齢であると職務を正常に行うことは難しく、むしろ後見人にも後見人が必要な事態になりかねません。

もちろん事情によっては高齢の候補者がそのまま選任されることもあるでしょうが、経験上、申立時点で75歳以上の方が選任されることは、たとえ心身ともに健康であってもかなり難しいと言わざるを得ません。

他に頼れる身内の方などがいない場合は、信頼できる司法書士などの専門家に後見人になってもらった方が本人のためにも安心かもしれません。

自分を候補者に申立てをしたのですが、専門職が後見人に選任される見込みです。当てが外れたので申立てを取り下げたいのですが、できますか?

申立て後の取り下げには家庭裁判所の許可が必要です。本人保護の必要がないと判断されない限りは、許可される事はないでしょう。

思ったような選任がされない、後見監督人を付けると言われた、財産管理について色々な制限がある事を知らなかった、等の理由で申立て後に取り下げを希望する方もいらっしゃいます。

しかし申立書類を提出した後に取り下げる場合、家庭裁判所の許可が必要になります。

そして成年後見制度は本人保護のための制度なので、上記のような申立人の思惑や事情を理由とする取り下げは認められることはないでしょう。

一方、取り下げの理由が、同じ方についての申立てが重複した、本人の判断能力が回復した等であれば、本人に不利益が生じることはないので取り下げは認められるでしょう。

成年後見はいったん開始すると基本的には本人が亡くなるまで続きます。

安易な気持ちで申立てをして後悔することのないように、本人保護のための制度であることを理解した上で申立てを行いましょう。

財産目録の提出が必要とのことですが、本人は長らく一人暮らしだったため財産状況が全く分かりません。大丈夫でしょうか?

申立て段階では財産の詳細については不明でも問題ありません。

本人の財産状況についてよくわからないというのはよくある話です。

同居している親子であっても、常日頃から財産状況について詳細に把握しているという事は稀であり、長い間別居している兄弟姉妹ともなればなおさらです。

たとえ預金のある金融機関の目星がついても、通帳がなければ現在の正確な残高はわかりません。

金融機関に尋ねても、本人以外からの問い合わせには応じられないと言われるでしょう。

このような状況は家庭裁判所も当然想定しているため、申立ての段階ではわかる範囲で財産目録を作成すればいいという事になっています。

正式に後見人に選任されれば、金融機関等でも調査に応じてくれるため、そこで正確な財産目録を作成すればいいのです。

ただし後見人選任後の財産目録の提出期限は、実際に後見人として活動できるようになってから約1か月と短いです。

後の負担を減らすためにも、本人宛ての郵便物をチェックするなどして、できる限り申立時に財産状況について把握しておくように努めましょう。

兄弟のうちの一人が認知症の父の財産を使い込んでいる疑いがあるため、申立てをしたいのですが、注意すべき点はありますか?

申立てに反対する親族の同意を得る必要はありませんが、専門職が後見人に選任される可能性が高いです。また、診断書の取得には注意を払う必要があります。

申立て時の提出書類の一つに親族の同意書がありますが、親族の一人が自分が本人の面倒を見ると言って他の家族を寄せ付けないケースでは、その方からの同意を得るのは難しいでしょう。

そのような場合にはその方の同意書は提出しなくても構いません。

同意書がないと親族に対しての照会が行われるため、その分審理に時間がかかりますが、申立ては問題なく受理されます。

成年後見制度は本人保護のための制度なので、たとえ反対する親族がいても本人のために必要であると家庭裁判所が判断すれば、最終的には後見開始の審判がされます。

ただし、親族間に意見の対立があるとみられる場合は、専門職を関与させるとの決定がなされる可能性が高いです。

もっとも、質問のようなケースでは申立人が後見人に選任されると対立する親族からあらぬ疑いをかけられ、余計に紛争化する恐れがあるため、中立な立場の専門職に後見人になってもらうべきでしょう。

注意したいのは申立てに必要な医師の診断書の取得です。

親族の一人が独占的に財産管理や身上監護を行っていて、他の家族を寄せ付けないケースでは、入所施設の主治医から診断書を作成してもらえなかったり*、外部の医師に書いて貰おうにも、本人を一時連れ出すことさえ困難なケースがあるためです。

 *施設入所等の手続きを行ってきた親族代表者の許可が必要だと言われる事が稀にあるようです。

そのような場合には事前に十分な根回しが必要になるでしょう。

申立て費用については本人の負担としてもらいたいのですが、どのような手続きが必要ですか?

裁判所によって運用が異なるので、事前に確認しておきましょう。

成年後見申立てにかかる費用については、原則として申立人の負担となります。

ただし、家庭裁判所に申立てることにより、費用を本人(被後見人)の負担とすることも可能です。

費用の本人負担については家庭裁判所によって運用が異なり、後見申立と同時に申立てをしなければならない所もあるので、必ず事前に確認しておきましょう。

ちなみに東京家庭裁判所では、特に申立書等に記載が無くても、基本的に費用は本人の負担とする運用がなされています。

なお、費用を本人負担とする審判がされても、申立てに関する費用のすべてが償還されるわけではありません。

本人負担とすることが可能なのは以下の4つのみです。

  1. 申立手数料(収入印紙)
  2. 後見登記手数料(収入印紙)
  3. 送付・送達費用(郵便切手)
  4. 鑑定手数料

​5~10万円かかる鑑定費用を本人負担とできるのはありがたいですが、戸籍謄本や登記されていないことの証明書などの取得費用、本人の精神状態についての医師の診断書作成料金、司法書士などの専門家へ申立ての代行を依頼した場合の報酬などは本人負担とすることはできないので注意しましょう。

申立て準備のための時間を取れないので、専門家に後見申立を依頼するつもりですが、専門家を選ぶ際のポイントはありますか?

制度に精通した司法書士への依頼をおすすめします。

成年後見の申立て手続きをサポートできる専門家は、弁護士と司法書士のみであり、家庭裁判所が選任する専門職後見人もこの2士業が大半を占めます。

弁護士と司法書士の違いは、弁護士は申立書の作成及び提出だけではなく、申立て手続き自体の代行も可能という点です。

しかし正直な話、成年後見申立ての手続きは、紛争の解決・調整を目的とする通常の裁判手続きとは異なり、申立て後に何度も裁判所に足を運んだり、難しい法的主張などをする必要はありません。

むしろ申込書及び添付資料をしっかりと作成して提出すればすんなりと手続きが進むケースがほとんどのため、事前の準備の方が大事だと言えます。

また、申立て時に行われる受理面接については、基本的に申立書作成に関与した司法書士も同席することができます。(同席が可能かどうかは依頼時に個別にお尋ねください。)

司法書士は独自の支援団体『公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート』を立ち上げており、家庭裁判所から専門職後見人として選任される件数も最も多く(2番目は弁護士)、後見制度全般に最も積極的に取り組んでいる専門家であると言えます。

後見申立ての相談先・依頼先としては最も適任でしょう。

もちろん司法書士、弁護士どちらに依頼するにしても制度に精通していることが前提となります。

とは言えいくら有能でも多忙すぎて何か月も放置されてしまっては意味がありません。

当事務所のご相談者にも、当初弁護士に依頼したが何か月たっても申立てしてくれないため相談に来た、という方がたまにいらっしゃいます。

申立書の作成報酬は弁護士の報酬基準からすると高い部類ではないので、後回しにされるという事もあるのかもしれません。(もちろん着手後は真摯に取り組まれる方がほとんどだとは思いますが・・・)

依頼する際は、専門性に加えて、どれぐらいの期間で申立てが可能かについてもしっかりと答えてくれる、信頼できる専門家を選びましょう。

本人と申立人は離れて暮らしているのですが、申立てを依頼する場合、申立人の近くの専門家と本人の近くの専門家のどちらがいいですか?

打ち合わせしやすい申立人の近くの専門家への相談をおすすめします。

成年後申立ては、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てなくてはなりません。

そのため、申立てを予定している親族が本人と離れて暮らしているケースではご質問のような悩みも出てくるでしょう。

そのような場合、本人の近くの専門家に依頼してもいいですが、私は申立てする人の近くの専門家に相談することをおすすめします。

というのも専門家が申立書等の作成を代行する場合、スムーズに申立てを行うためには申立人からの事前聞き取りや打ち合わせがとても重要だからです。

遠くの専門家に依頼すると、時間や交通費の関係から、実際に会って相談する機会はどうしても限られるでしょう。

もちろん、電話やメール、郵便等でこれらのやり取りをすることも可能ですが、追加で聞き取り事項が発生した場合や、細かいニュアンスの確認やが必要な場合には少々煩雑かもしれません。

何より実際に会って話をして、信頼できる人物であることを確認してから依頼した方が安心できることは間違いありません。

申立人の近くの(本人の住所地からは遠い)専門家に依頼するデメリットとしては、申立時の受理面接に同行してもらうことが難しいことが挙げられます。

ただ、面接自体は特に難しいことを聞かれるわけではないので、一人で行く場合も過度に心配する必要はありません。

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成年後見制度に関するお悩み・ご相談は相続の専門家へ!

成年後見申立ては、当事者同士が互いの主張をぶつけ合う通常の裁判手続きとは異なり、難しい法律的主張を述べたりする必要はありません。

今回の記事を参考にすれば、裁判所での手続きが初めての方でも自分で申立てをすることができると思います。

ただし、そうは言ってもこうした手続きに不慣れな方にとっては、手続きに必要な書類を集めたり、財産状況や収支を把握して書類に落とし込むといった作業は大変な労力を伴うかもしれません。

一刻も早く後見人を選任してもらいたい事情がある方や、仕事等で申立準備のための時間をなかなか取れない方は、無理をせず、後見制度に精通した司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

成年後見申立に関するご相談は当事務所で承ります。ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。

記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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