相続人の同意が揃わない場合に貸金庫を開ける方法・事実実験公正証書とは?
故人の貸金庫を開けるには?
亡くなった方が金融機関に貸金庫契約をお持ちの場合、遺言書などの重要な書類が入っているかもしれないので、急いで中身を確認する必要があります。」です。
しかし、貸金庫の中身を確認するには原則として相続人全員の同意・立ち会いが必要なため、連絡が取れない相続人がいると手続きが進みません。
貸金庫を開けるには全員揃わないとダメ?
ここでは、相続人の同意が揃わない場合に貸金庫を開ける方法、「事実実験公正証書」についてくわしく解説します。
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契約者死亡後に貸金庫の中身を確認する方法
貸金庫の中には預金通帳や保険証、遺言書など、財産に関する重要な書類が入っている可能性があります。
特に遺言書がある場合は、その内容によって手続きに大きな影響があるので、相続手続きを行うにあたっては、まずその貸金庫の中身を確認することが優先となります。
契約者の死亡後に貸金庫を開けて中身を確認するには、原則として相続人全員の同意が必要になります。
具体的には遺産分割協議書又は金融機関所定の同意を証する書面に、相続人全員が実印を押印し、印鑑証明書と一緒に提出することになります。
なお、金融機関によっては同意だけではなく、相続人全員の立ち会いを求めてくる場合もあります。
相続人全員の同意が揃わない場合に貸金庫の中身を確認する方法
相続人同士の関係性が良く、すぐに連絡を取れるのであれば問題ないでしょうが、相続人同士の仲が悪かったり、疎遠だったりして同意を得るのが難しいというケースもあるでしょう。
相続人全員の同意がなくても、貸金庫の中身を確認できる方法としては以下の2つの方法があります。
1.遺言書執行者が遺言執行の一部として行う。
2.公証人立会いのもと「事実実験公正証書」を作成する。
上記のうち1の方法は、すでに法的に有効な遺言が見つかっていて、遺言執行者が指定されている(又は家庭裁判所で選任されている)場合しか使えません。
本記事をお読みの方の多くはこちらのケースには該当しないものと思います。
そこで遺言書が見つかっていない場合は、2の「事実実験公正証書」を作成する方法によることになります。
以下、この方法について詳しく解説します。
事実実験公正証書の作成により貸金庫の中身を確認する方法
「事実実験公正証書」とは、公証人が自ら見聞きし、直接体験(事実実験)した事実に基づいて作成した書面の事です。
貸金庫開扉の手続きにおいては、貸金庫の中身を確認した公証人が、いつどのようにして開けられ、中には何がどのような状態で入っていたのかを記録し、それを公正証書にします。
事実実験公正証書の見本 1ページ目
事実実験公正証書の見本 2ページ目
公正証書は、その原本が公証役場に保存される上、公務員である公証人によって作成された公文書として、裁判上真正に作成された文書と推定され、高度の証明力を有します。
事実実験公正証書によって貸金庫を開けた時の状況が証拠として保全されることで、後々内容物の持ち去り等で紛争が生じても、金融機関が責任を追及されることは無いため、相続人全員の同意が揃わなくても開扉に応じてくれます。
事実実験公正証書の作成による貸金庫の開扉手続きの流れ・注意点等について
事実実験公正証書の作成により貸金庫を開ける手続きは、同意を得られない事情や金融機関によって流れが異なりますが、ここでは実際に当事務所がサポートした際の流れに基づいて解説します。
なお、本事例は「相続人の中の一人が行方不明であり、それ以外の相続人からの同意は得ている」というケースです。
※クリックすると各手順についてのくわしい解説に移動します。
1.貸金庫のある店舗に連絡して、事情を説明し、公証人立会いのもと貸金庫の開扉をしたいことを伝える
3.公証役場及び相続人に連絡を取り、貸金庫を開ける日を決め、予約をする
4.開扉当日までに公証人と打ち合わせを行い、公正証書の内容について確認する
5.開扉当日になったら店舗に直接出向き、貸金庫を開け、公証人と共に内容物を確認する
6.公証人に手数料を支払い、公正証書が作成されたら、正本を受け取って手続き完了
以下、それぞれの手順についてくわしく解説します。
貸金庫のある店舗に連絡して、事情を説明し、公証人立会いのもと貸金庫の開扉をしたいことを伝える
まずは、貸金庫のある支店に連絡をして、貸金庫の中身を確認したいが、事情があって相続人全員の同意が揃わないため、公証人立会いのもと回避したいという事を伝えましょう。
同意が得られない事情にもよりますが、中身を確認するだけであれば基本的には応じてくれるでしょう。
金融機関によっては、本部との協議が必要なため、回答までに時間がかかることがあります。
金融機関の了承を得られたら、開扉手続きの際に必要な書類について確認し、必要に応じて事前に書類を提出し、確認してもらいましょう。
戸籍等の必要書類を準備する
貸金庫の開扉に必要な書類は、相続をめぐる事情や金融機関によって多少異なりますが、おおむね以下の書類等が必要になるでしょう。
・被相続人の相続関係を証明する戸籍謄本等
・相続人全員の現在の戸籍謄本
・相続人のうち、同意を得ている方からの委任状・同意書等(実印押印のもの)
・相続人のうち、同意を得ている方の印鑑証明書(発行後6か月以内のもの)
・金融機関所定の手続書類(相続手続依頼書、念書等)
・貸金庫の鍵、カード等
※場合によってはこれ以外の書類が必要になることもあります。詳しくはお取引店にお問い合わせください。
上記のうち、「相続人のうち、同意を得ている方からの委任状・同意書等」については、貸金庫の開扉・内容物の確認について他の相続人から同意があった事を証明するものです。
金融機関指定の文言や書式があるかもしれないので、事前に相談して確認しておきましょう。
また、同意を得ている方全員が開扉に立ち会う場合は委任状等は不要かもしれませんが、万が一当日立ち会えなくなった場合に備えて、事前に代表者の方宛に送ってもらっておいた方が確実です。(特に遠方にお住まいの方)
公証役場及び相続人に連絡を取り、貸金庫を開ける日を決め、予約をする
事実実験公正証書の作成には、公証人に直接金融機関まで来てもらう必要があります。
公証人が訪問できるのは管轄地域内のみなので、金融機関の最寄りの公証役場に連絡して貸金庫開扉のために公正証書を作成して欲しい旨を伝え、訪問可能な日程を確認しましょう。
最寄りの公証役場はこちらで検索できます。
また、貸金庫を開ける際は、後で問題にならないように、連絡が取れる相続人にはできるだけ立ち会ってもらいましょう。
立ち会いを希望される方については、都合を聞き、日程を調整して、金融機関に訪問日程の予約をしておきましょう
金融機関によっては、予約が取れるのが数週間先ということもあるので、日程は余裕を持って、できれば複数の候補日を決めておきましょう。
また、当日立ち会えない場合でも手続きを行えるように、委任状や同意書、印鑑証明書等を事前に貰っておきましょう。
開扉当日までに公証人と打ち合わせを行い、公正証書の内容について確認する
事実実験公正証書には、以下のような事項が記載されます。
① 公証人立会いのもと、貸金庫を開け、内容物の確認を行ったという事実。
② 公証人立会いのもと、貸金庫を開けることになった経緯。
③ 貸金庫の内容物の詳細(蔵置品目録)
④ 嘱託人(依頼者)の情報(住所・氏名・生年月日・職業)
⑤ 公証人の情報(役場所在地・所属・氏名)
作成当日は印字した公正証書を公証人が持参するので、上記③以外の事項についてはあらかじめ公証人と打ち合わせをし、内容を決めておく必要があります。(③については、当日実際に現場で確認してから記録することになります。)
打ち合わせは、電話やFAX、メール等でやり取りをして行います。特に②の「貸金庫を開けることになった経緯」は重要なので、綿密な打ち合わせが必要です。
また、金融機関によっては指定の文言を記載して欲しい等の要望があるかもしれないので、金融機関に確認の上、要望があれば公証人に伝える必要があります。
また、公正証書には当事者や関係者の情報を正確に記載する必要があるので、それらの情報を裏付ける資料をあらかじめ提出する必要があります。
被相続人の貸金庫開扉のケースでは、おおむね以下のような資料が必要になるでしょう。
・被相続人の死亡の事実を証明する書類(戸籍謄本等)
・嘱託人(依頼者)と被相続人の関係を証明する書類(戸籍謄本等)
・被相続人が金融機関に貸金庫を有していることを証明する書類(相続手続依頼書等)
・貸金庫の鍵、カード(紛失している場合は不要)
・嘱託人の本人確認書類(運転免許証等)
資料の提出方法はあらかじめFAXやメール等でデータを送り、当日原本を持参するのが一般的ですが、公証人によってはあらかじめ原本を郵送して欲しいという事もあるかもしれません。
何度か公証人とやり取りをし、公正証書の案文を確認し、原案を完成させます。
案文の作成は公証人が行いますが、事実実験公正証書の作成は定型的な業務ではないため、内容については依頼者の方で責任をもって確認する必要があります。
公証人とのやり取りが面倒という方は、相続に精通した司法書士等の専門家に依頼した方がいいかも知れません。
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開扉当日になったら店舗に直接出向き、貸金庫を開け内容物を確認する
当日になったら、貸金庫のある店舗に直接出向きます。
公証人に来てもらうことになるので、遅刻しないよう早めの到着を目指しましょう。
関係者が揃ったら、窓口に必要書類を提出し、いよいよ貸金庫を開けます。
金庫を開けるまでは、職員が案内してくれるので、鍵やカードが無くても大丈夫です。
貸金庫を開けたら、中身を取り出し、別室で公証人と一緒に一つずつ確認します。
何が入っていたかは公証人が記録するのでメモは取らなくても大丈夫ですが、念のため写真を撮っておいたほうがいいかも知れません。
確認が終わったら、職員に声をかけ、書類等の記入が必要であれば記入します。
なお、当事務所がサポートした事例では、貸金庫の開扉・内容物の確認と共に、内容物の引き上げと貸金庫の解約も行うことができました。
この辺りの取り扱いは、金融機関によって、また相続をめぐる事情によって異なる可能性があるので、事前に金融機関に確認の上、引き上げが可能な場合は誰が保管するか等について決めておきましょう。
当事務所がサポートした事実実験公正証書の作成による貸金庫開扉の事例はこちら
公正証書が作成されたら、公証人に手数料を支払い、正本を受け取って手続き完了
内容物の確認が終わったら、公証人が蔵置品目録に記載を行い、署名押印等をして、公正証書を完成させます。
公正証書は原本と正本が作成され、依頼者には正本がその場で渡されます。
原本は公証役場で保管され、必要であれば依頼者からいつでも謄本(写し)の請求をすることができます。
公正証書が完成したら、公証人手数料を支払い、正本を受取って手続き完了となります。(場合によっては後日の受け渡しとなる可能性もあります。)
公証人手数料は、手続きにかかった時間や公正証書のページ数にもよりますが、おおむね1.5万円~3万円程度になるでしょう。
参考
事実に関する証書作成の手数料
公証人は、自分で直接に見たり聞いたりした内容を公正証書にする事実実験公正証書の作成することができます。
手数料は、事実実験に要した時間と証書作成に要した時間の合計時間1時間までごとに1万1000円です(手数料令26条)。
事実実験が休日や午後7時以降に行われたときは、手数料の10分の5が加算されます。
格納されていた物品の持ち帰りや、貸金庫の解約が可能な場合は、そのまま必要な手続きを行います。使用料等の清算が必要な場合もあるので、あらかじめ確認しておいた方がいいでしょう。
一般的な貸金庫の相続手続きの流れについてはこちらの記事をご参照下さい。
死後手続き・相続手続き代行についてくわしくはこちら
自分で手続きを行うのが難しい場合、代行してもらう事はできる?
ここまで解説したとおり、相続人全員の同意が揃わない場合に、故人の貸金庫を開け、中身を確認するにはそれなりの手間と時間がかかります。
亡くなった方の貸金庫の開扉・内容物の確認や、事実実験公正証書の作成については、司法書士等の専門家に依頼すればサポート・代行してもらうことが可能です。
金融機関・公証人・関係者との調整に自信がない、手続きのための時間を取れない、遠方のため現地まで行くことが難しいという方は、相続実務に精通した専門家への依頼を検討してみてください。
当事務所がサポートした代理人による貸金庫開扉・解約の事例はこちら
専門家による死後手続き・相続手続き代行についてくわしくはこちら
残される方のために遺言書を作成しておきましょう
亡くなった方の貸金庫を開けるためには、相続人全員の同意が必要なため、相続人同士の関係性によっては大変な負担になることがあります。
しかし、遺言を作成し、遺言執行者を指定しておけば、遺言執行者が単独で貸金庫の開扉・内容物の確認・解約まで単独で行うことができるので、相続人の負担は大幅に軽減されます。
ただ、遺言書の記載に不備があるとトラブルを招き、かえって負担をかけてしまうことになるので、作成の際は相続の専門家に相談の上、公正証書で作成することをおすすめします。
自分で作成する場合は、遺言執行者の権限として「貸金庫の開扉・解約に関する権限」を忘れずに記載しておきましょう。作成した遺言書は貸金庫に入れず、自宅等で保管しておきましょう。
遺言書の作成についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。
円満相続を実現するための生前対策のご相談はこちら
まとめ
今回は相続人全員の同意が揃わない場合に貸金庫を開ける方法についてくわしく解説しました。
貸金庫がある場合、その中身によっては相続手続き全体に重大な影響を及ぼすことがあるので、本記事を参考になるべく早く中身を確認しましょう。
また、相続人全員の同意が揃わないという事は、その後の手続きも難航することが予想されるので、自分たちで手続きを行うのが難しい、と感じている方はお早めに相続の専門家へ相談することをおすすめします。
事実実験公正証書の作成による貸金庫の開扉は、相続の専門家を自称する方の中でも実際に経験がある方はごく僅かなので、相談の際は本当に相続実務に精通した専門家を選びましょう。
複雑な事情のある相続手続きでお困りの方は相続の専門家に相談しましょう!
当事務所では、これまでに数多くの方から相続についてのご相談・ご依頼をいただいており、疎遠な相続人や連絡先不明の相続人がいるときの相続手続きについても、多数のサポート実績があります。
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疎遠な相続人や連絡先不明の相続人がいる場合、自分たちで進めようとしたが、つまずいたので結局専門家に任せることにしたという方も少なくないので、一度相談してみることをおすすめします。
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