遺言執行者として自分が指定されている場合、相続登記はどうする?【遺言執行者に指定された相続人が自分で相続登記を行うケース】
信託銀行では相続登記はやってくれない…どうしたらいい?
ご相談前の状況
叔母様を亡くされた方からのご相談。
相続人は兄弟姉妹や甥姪4人だが、故人は遺言書を遺されており、ご相談者様が不動産の取得者兼遺言執行者として指定されているとのこと。
金融資産の遺言執行者である某信託銀行から連絡がきたが、不動産については自分で手続きするよう言われ、困惑して相談にいらっしゃいました。
問題点
- 遺言執行者への就任を承諾してしまうと、相続人への通知や財産目録の交付など、法定の義務を果たさなければならない。
- 遺言執行者としてではなく、不動産取得者である相続人の立場で相続登記する事が可能か検討する必要がある。
- 登録免許税の軽減を受けるために、遺言者との相続関係を証明する戸籍謄本等を集める必要がある。
当事務所からのご提案
遺言の中で遺言執行者が指定されている場合、遺言執行者が各種財産の名義変更や解約、相続人や受遺者への分配等を行う事になります。
今回、遺言書は信託銀行の遺言信託サービスを利用して作成されていたため、遺言執行者として信託銀行が指定されていました。
しかし、信託銀行が執行する財産は預貯金等の金融資産に限定されており、不動産については不動産を取得する相続人(受遺者)がそれぞれ遺言執行者として指定されているというあまり見かけないケースでした。
遺言執行者は、職務遂行のために、不動産を取得する相続人(受遺者)への相続登記(遺贈登記)を行う事が可能です。(民法1014条2項)
ただし、遺言執行者には法定の義務が課されており、相続人への通知(民法1007条)や相続財産目録の交付(民法1001条)を行わなくてはなりません。
今回のように財産の一部を取得するに過ぎない相続人の方にとって、これは過大な負担になり得ます。
他方、相続人への相続登記は単独申請であり、遺言書で不動産取得者に指定された相続人が自ら行う事ができます。
むしろ2019年の民法改正以前は、相続人への相続登記は不動産取得者が自ら申請すべきものとされており、遺言執行者の権限外とされていました。
法改正によって遺言執行者も申請できるようになりましたが、従来通り相続人による単独申請も可能です。
今回、遺言でご相談者様が取得者に指定されていたのは不動産のみであり、あえて遺言執行者に就任して登記手続きを行うメリットはありませんでした。
そこで、当事務所で相続登記に必要な戸籍謄本等を収集し、その他の必要書類と併せて法務局に提出し、遺言執行者に就任することなく相続登記を申請する事を提案しました。
このように解決しました
- 登録免許税の軽減を受けるために、遺言者との相続関係を証明するすべての戸籍謄本等を収集しました。
- 名寄帳を取得し、私道などの漏れがないか調査を行いました。
- 必要書類を法務局に提出し、相続人の代理人として相続登記を申請し、無事完了しました。
担当者からのコメント
今回のケースのように、不動産の相続登記のみであれば、遺言執行者が指定されていたとしても、相続人が単独で手続きを行う事ができます。
しかしそもそも今回のようなケースでは、不動産と金融資産で執行者を分けるべきではなく、すべての遺産について信託銀行が遺言執行者となり、財産目録作成等の義務を負うべきでした。
仮に作成当時は事情があってこのような内容になったのだとしても、少なくとも相続発生時に、“遺言執行者には法定の義務があること”、“執行者に就任しなくても相続登記は可能であること”をきちんと説明すべきでしょう。
自ら作成に関与した遺言について責任を持たないのであれば、わざわざ高い報酬を支払ってまで信託銀行に依頼するメリットは皆無です。
実際にこのケースでは対応に不満を抱かれた相続人の皆様が、信託銀行との契約をキャンセルされた上、後日当事務所に手続き全般のご依頼をいただくことになりました。
万全な遺言を作成したつもりが相続発生後に親族に余計な負担を負わせることになっては、遺言を遺した方も残念極まりないでしょう。
遺言で財産を残す方も残される方も安心できるように、遺言書作成の際は、遺言執行含めて相続に精通した専門家に相談の上、万全な遺言書を作成しましょう。
当事務所では、遺言執行者として、または遺言執行者の代理人としてこれまでに多数の遺言執行・執行サポートの実績があり、複雑な事情のある遺言執行手続きについても数多くのご相談・ご依頼をいただいております。
ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。
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