生活保護受給中でも遺産相続はできる?【生活保護受給中の方が唯一の相続人になるケース】

遺産を相続したら、生活保護は打ち切り?

ご相談前の状況

叔父様が亡くなられた方からのご相談。

故人には配偶者、子供はなく、すでに父母も兄弟姉妹も亡くなっているため、姪であるご相談者様が唯一の相続人。

故人の遺産としては自宅不動産や預貯金などがあり、それなりの金額になると思われるが、ご相談者様及び配偶者様は現在生活保護受給中とのこと。

生活保護受給中に遺産を相続することはできるのか、保護が打ち切りになることも心配で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 生活保護受給中に遺産を相続する場合、事前にケースワーカー等に相談しておく必要がある。
  • 受け取った遺産の額について福祉事務所等に報告しなければならない。
  • 受け取った遺産の額によっては生活保護が停止または廃止になる可能性がある。

当事務所からのご提案

遺産相続の権利は誰でも等しく享受できるものであり、相続廃除や欠格事由等の事情がない限りは、生活保護受給中の方であっても問題なく相続することができます。

ただし、遺産を相続した結果、生活保護の受給要件を満たさなくなった場合、生活保護が一時的に受給停止になったり、廃止になったりする可能性はあります。(必ず停止・廃止されるわけではありません。)

停止や廃止を避けるために、遺産を相続したことを知らせずに受給を続けてしまうと不正受給になり得ます。

不正受給になると、保護費の返還に加えて、最大40%もの加算金が徴収されてしまいます。

また、停止や廃止が困るからと言って勝手に相続放棄してしまうと、受給要件を満たさなくなり、やはり停止や廃止になる可能性があります。

いずれにしても、生活保護受給者が収入を得た場合は福祉事務所等にその旨を届けなければならないとされているので、まずはケースワーカー等に相談する必要があります。

今回は遺産や死亡保険金等の額が大きく、少なくとも停止になることは間違いないと思われました。

その上でご相談者様家族は、叔父がせっかく残してくれた財産なので保護が打ち切られるとしてもきちんと相続して大切に使いたいというご意向でした。

そこで、まずはケースワーカーに相談していただき、その後の流れについては当事務所とケースワーカーで連携を取りながら進めていくことになりました。

また、相続手続きについては自分たちで進めていくだけの知識も無く、体調面でも厳しいとのことでしたので、当事務所に全面的にお任せいただくことになりました。

遺産を相続しても直ちに生活保護が打ち切られるわけではない

ご依頼後、当事務所とケースワーカーとの間で、打ち合わせを行い、下記の内容を確認しました。

  • 遺産を相続してもいきなり生活保護が打ち切り(停止・廃止)になることはない。
  • 生活保護が打ち切りになるかどうかは、取得した財産の額や種類に加え、世帯の員数、健康状態、生活状況等を考慮して総合的に判断される。
  • 上記の判断のために、相続手続きが完了し、遺産の額が確定したら、遺産の内訳がわかる資料を提出してほしい。
  • 保護打ち切りになった場合、相続発生後に受給した保護費については後日返還して貰う可能性がある。(加算金は原則無し)

当初ご相談者様は、相続が発生したことを伝えた途端に保護打ち切りになることを懸念されていました。

相続手続きに着手してから、実際に遺産が手元に入るまでは数週間~数か月のタイムラグがあるため、いきなり打ち切りになってしまうと蓄えもないため生活できなくなってしまうからです。

しかし、担当のケースワーカーによると、福祉事務所としてもそのような事情は当然把握しているため、上記のような対応がされるとのことでした。

そこで、当事務所で相続手続きを一括してサポート・代行させていただき、完了後に、取得した遺産についての財産目録や振込明細等の資料を福祉事務所に提供することになりました。

このように解決しました

  • 担当のケースワーカーに相談の上、遺産相続に伴う報告事項についての確認を行いました。
  • 戸籍等の必要書類を整え、不動産の名義変更や預貯金の解約、死亡保険金の請求など、相続手続き・死後手続きの全てを代行・サポートしました。
  • 手続き完了後に債務や経費を含む相続財産目録を作成し、振込明細等の資料とともに福祉事務所に提出しました。

担当者からのコメント

生活保護受給中の方が相続人になる場合、相続するにせよ放棄するにせよ注意が必要です。

当面生活するのに十分な遺産を相続したにもかかわらず、報告をしないと、保護打ち切りの上、受給済みの保護費に上乗せした金額を徴収される可能性があります。

逆に、打ち切りになるのは困るという事で相続放棄したり、一切財産をもらわないとする遺産分割協議をしてしまうと、やはり保護打ち切りになる可能性があります。

生活保護の支給は生活状況等を考慮して総合的に判断されるので、遺産を相続したから、あるいは相続放棄したからと言って一律に打ち切りになるわけではありません。

また、いったん打ち切りになっても、遺産を使い切って再び生活に困窮する事態になれば、再度生活保護を受給することは可能です。

いずれにしても報告を怠った場合のデメリットは大きいので、まずはケースワーカー等に相談しましょう。

また、相続手続きに不慣れな方は司法書士などの専門家に手続きのすべてを依頼することもできます。

費用についてはすべて遺産からの差し引き・手元からの持ち出し無しで対応してくれる事務所もあるので、一度相談してみましょう。

当事務所では相続手続きだけではなく、亡くなった後に必要なあらゆる手続きをまるごとおまかせできる「相続まるごとおまかせプラン」を提供しています。

生活保護受給中の方で依頼したいが手元に現金がない方でも、費用は遺産からの差し引きで対応可能です。

ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。

相続まるごとおまかせプランについてくわしくはこちら

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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