相続人は外国籍!戸籍謄本はどうする?【相続人の中に外国籍の方がいるケース】

外国籍の相続人、戸籍の代わりになるものは?

ご相談前の状況

伯母様が亡くなられた方からのご相談。

相続人は兄弟姉妹や甥姪など全部で6人。

亡くなった方は東京にお住まいでしたが、相続人の方はほとんどが地方在住で、高齢のため自分たちで動くのは難しく、手続きすべてをおまかせしたいという事で相談にいらっしゃいました。

お話を伺う中で、相続人の中に日本在住だが外国籍(アメリカ合衆国)の方がいるという事が判明しました。

問題点

  • 相続手続きの際には相続人全員の戸籍が必要になるが、外国籍の方は基本的に戸籍が無い。
  • 戸籍が無い場合、在日アメリカ大使館等で宣誓供述書を取得する必要があるが、遠方にあるため高齢の相続人が自ら出向くことは難しい。
  • 相続人のほとんどが地方在住で離れて暮らしているため、遺産分割協議の取りまとめや、遺産分割協議書等の必要書類の手配が難しい。
  • 相続人に高齢の方が多く、自分たちで書類を集めたり、金融機関に出向いて手続きを行うことが難しい。

当事務所からのご提案

相続手続きの際には、原則として相続人全員の現在の戸籍(謄本、抄本)を、金融機関や法務局などの各手続き先に提出する必要があります。

遺産分割協議や相続手続きは、基本的に相続人全員の同意の元行う事になります。

手続きの際、相続する権利を持つ方が誰なのかは金融機関等にはわからないため、公的書類である戸籍謄本等を提出して、客観的に相続関係を証明することになります。

ただし、戸籍制度は日本独自のもので、外国には基本的に戸籍はありません。

※台湾、韓国には日本のような戸籍制度があります。ただし韓国では2007年限りで廃止されました。

戸籍が無いからと言って、金融機関等は「では仕方ないですね、その方の分は証明無しでいいです。」とはなりません。

相続人であることを証明するために代わりの書面の提出を求められることが通常です。

今回は、もともと日本国籍の方がアメリカに帰化され、米国籍ではあるものの、今は日本に住んでいるという状況でした。

このような場合、日本国籍離脱前の戸籍謄本に加え、日本にある駐日外国公館(米国籍であればアメリカ大使館や領事館など)に行って、宣誓供述書を取得して提出するのが最も一般的な方法です。

※宣誓供述書・・・自分が間違いなく相続人であるという宣誓をしたという事実を、本国大使等が認証したもの。

ただ、今回は当該相続人の方は高齢で体調も思わしくなく入院されていたため、大使館等に出向くのは難しいとのことでした。

そこで、当事務所で大使館等に連絡を取り、宣誓供述書やそれに代わる書類の取得方法について確認の上、取得のための手続きをサポートさせていただくことを提案しました。

また、自分たちで動くことが難しい相続人の皆様に代わって、戸籍収集、財産調査及び目録の作成、遺産分割協議の取りまとめ、不動産・金融資産の名義変更・解約、相続税申告まで、相続に必要な一切の手続きをサポートさせていただくことを提案しました。

アメリカ領事は出張NG!代わりの方法はある?

ご依頼をいただいてから早速、当該相続人の居住地の最寄りのアメリカ領事館に連絡を取り、宣誓供述書が必要な事情を説明の上、そちらに伺うのが難しいので出張をお願いできないか問い合わせました。

しかし領事館の回答は「(絶対に対応できないとは言えないが)原則対応できない」というものでした。

領事館と居住地が遠方であり、対応のために半日以上かかるのでスケジュール調整が困難なこと、車椅子利用者の方などのかなり身体が不自由な方でも来所していただいていること、等が主な理由でした。

登記申請のために必要という事も伝えたのですが、「今までにそのような前例がないので、法務局の方と調整して欲しい」と言われてしまいました。

この時点でアメリカ領事館とのこれ以上の交渉は難しいと思われたため、いったん要望に従って法務局と相談することにしました。

登記の際には決められた書類の提出が必要ですが、今回のような特殊なケースでは、登記官の判断で、代替書類の提出等により登記が認められることがあります。

そこで法務局に今回の事情を説明した上で、宣誓供述書なしでの手続きを認めてもらえないか打診しました。

その結果、いくつかの条件付ですが(外国人登録原票を取得して提出する、相続人全員の実印付きの保証書(上申書)を提出する、など)、何とか登記を認めてもらえることになりました。

また、念のため金融機関にも確認したところ、法務局に提出したものと同内容の書類等の提出があれば、手続きできるという回答を得られました。

なんとか解決の道筋が見えたので、当事務所で、外国人登録原票や相続人全員の保証書等の書類の手配もサポートさせていただき、手続きを進めることになりました。

このように解決しました

  • 法務局に事情を説明し、書面で照会を行った結果、外国籍の方については現在戸籍に代わる書面の提出で登記を認めてもらえることになりました。
  • 金融機関にも、現在戸籍に代わる書面の提出で手続きを進めることが可能か確認を行いました。
  • 現在戸籍に代わる書面(外国人登録原票や相続人全員の保証書)の取得についてもサポートさせていただき、無事手配することができました。
  • 離れて暮らしている相続人に一人ずつ連絡を取り、遺産分割協議の取りまとめを行い、遺産分割協議書へ署名捺印をいただくことができました。
  • 遺産分割協議書や現在戸籍に代わる書面を揃え、法務局や金融機関に提出しました。
  • その結果、無事、相続登記や金融資産の相続手続きを完了させることができました。
  • 相続税の申告についても税理士をご案内して、期限内に納税まで終えることができました。
  • その他戸籍収集、財産調査、財産目録の作成などの相続に必要な一切の手続きをサポートし、ご相続人様の負担なく終えることができました。

担当者からのコメント

相続人の中に外国籍の方や海外在住者がいる場合、通常の手続きで必要になる戸籍や住民票、印鑑証明書等が取得できないため、代わりの書面を取得するなどして手続きを行う必要があります。

ただ、今回のケースのように、宣誓供述書などの代わりの書面を取得することが困難な場合もあります。

そのような場合は、関係各所と調整の上、手続きを進めていくことになります。

しかし、様々な手続き先に一つ一つ事情を説明したり、どのような手続きが必要かを正確に把握したりといった作業が必要なため、一般の方には大変な負担になります。

無理に自分たちだけで進めようとしても、慣れない作業で疲弊してしまう上、かかった時間のわりにはまったく手続きが進んでいない、という状態になりかねません。

そのような状態になる前に、外国籍の方や海外在住の方がいる場合は、相続発生後、すみやかに相続手続きに精通した専門家に相談することを強くお勧めします。

当事務所では、外国籍の方や海外在住者がいる場合の相続手続きについて、数多くのご相談・サポートの実績がございます。

ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。

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※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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