今後のことを考えて、相続を機に母の共有持分を移したい。【不動産の共有持分をコストをかけずに移転したいケース】

将来のことを考え、この機会に母の持分を移転しておきたい…

ご相談前の状況

お父様が亡くなられた方からのご相談。

相続人はお母様とお子様二人。

財産の分け方については法定相続分ベースで考えており特に問題はないものの、相続財産である不動産にお母様の持分が一部入っていることが気になっているとのこと。

今後、高齢の母の介護費用等で不動産の売却が必要になった際に、認知症等の理由ですぐに売却ができないという事態にならないように、相続を機に母名義の持分を子供に移す方法はないかという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 将来の売却に備えて、相続を機に母名義の不動産持分を子供に移しておきたいが、移転のコストや税務上のリスクを踏まえて慎重に方法を検討する必要がある。
  • 場合によっては遺産分割内容に共有持分移転について盛り込む必要がある。
  • 相続税申告が必要なため、税理士と連携して速やかに遺産分割協議をまとめる必要がある。

当事務所からのご提案

共有名義になっている不動産を売却をする場合、共有者全員が当事者となって売却を行います。

この時、共有者の一人でも売却についての判断能力(意思能力)が無い方がいれば、そのままでは売却をすることはできません。

売却するためには、成年後見人等を付ければいのですが、主にコストや手間の面でできるだけ後見人等は付けたくないという方も多いです。

このような事態を防ぐためには、認知症等で意思能力が無くなる前に、事前に共有者の持分を他の方に移転しておくという方法があります。

具体的には贈与や家族信託等で持分を移転するという方法がありますが、贈与の場合は高額の贈与税がかかってしまい、現実的でないことも多いです。また、家族信託は認知症対策として高い効果が見込めますが、まだ世間的な認知度がそれほ高くなく、ご家族の理解が得られにくいこともあります。

今回も、母はあまり難しい話は分からないので、コストがそれほどかからずに済む別の方法があればそれでお願いしたいのとのご要望をお持ちでした。

そこで、遺産分割の際の代償金がわりに、お母様の共有持分を他の相続人の方へ贈与するという方法を提案しました。

このように解決しました

  • 税理士による税務チェックを受けた上で、「お母様が相続財産を受け取る代償として、自分の不動産持分を他の相続人へ贈与する」という内容の遺産分割協議書を作成しました。
  • 作成した遺産分割協議書を添付書面として、お父様についての相続登記と、お母様についての「遺産分割による贈与」を原因とする所有権移転登記を申請しました。
  • 無事登記が完了し、コストを最小限に抑えつつ、簡易な手続きで共有持分を移転することができました。
  • 作成した遺産分割協議書を添付書面として、期限内に相続税申告を完了させることができました。
  • その他、当事務所で、戸籍の収集、相続預金の解約および分配、証券の移管手続き等の手続きを代行させていただき、ご相続人様の負担なく完了することができました。

担当者からのコメント

遺産分割の際に、特定の相続人が相続財産を受け取る代わりに自分の不動産(持分)を他の相続人に譲渡(贈与)することを、「遺産分割による贈与(代償譲渡)」と言います。

いわゆる代償分割の形式で、代償金(お金)の代わりに不動産で支払うというイメージです。

ただこの方法を用いる場合、譲渡所得税、不動産取得税等の課税には気を付ける必要があります。

特に譲渡所得税については、思いがけず高額になってしまう可能性がある事を十分に理解しておかなければなりません。

事前に税理士と相談して、相続する財産の評価額、譲渡する持分の評価額、不動産の市場価格(時価)等を精査し、十分に検討した上で判断しなければ後で大変なことになってしまうかもしれないので、この方法を検討されている方は、絶対に自己判断をせずに専門家に依頼してください。

また、今回のようなケースでも、必ずしも「遺産分割による贈与(代償譲渡)」が最適解であるとは限りません。(むしろ、他の方法をおすすめする方が多いと思います。)

将来的な売却を検討している不動産について、どのような対策が必要かについては、相続や後見だけでなく、不動産売却にまで精通した専門家でなければ正しい提案はできません。

相談をする際は相続や不動産売却サポートの経験豊富な専門家を選んで相談しましょう。

当事務所では、相続手続きから不動産の売却までを一括しておまかせできる「相続まるごとおまかせプラン」をはじめとしたさまざまなサービスをご提供しておりこれまでに相続や不動産売却について数多くのサポート実績があります。

ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

「遺産分割による贈与(代償譲渡)についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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