公正証書で作った遺言なのに問題あり⁉【公正証書遺言に従って相続手続きを行うケース】

生前妻は「すべて夫に」という公正証書遺言を遺してくれたが、遺言書のとおり進めていいのか不安がある…

ご相談前の状況

奥様を亡くされた方からのご相談。

相続人はご主人様とご両親の3名。

生前、財産はすべて夫に、という内容の公正証書遺言を遺されていましたが、手続きになかなか手が付けられない、また、本当に遺言のとおりに進めていいのか不安があるという事でご相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 配偶者が亡くなり、気分が落ち込んでいるため自分ではなかなか手続きに手が付けられない。
  • 遺言では全ての財産を夫に相続させる、となっているが、子供もいないので義両親に少しは相続して欲しい気持ちもある。
  • ただ、義両親は離れた地方に暮らしているので手続きに労力を割いてもらうのは最小限にしたい。

当事務所からのご提案

亡くなった方が遺言書を遺されていた場合、基本的には遺言に従って手続きを進めることになります。

特に公正証書遺言の場合、手続きに必要な戸籍が少なく済み、検認手続き等も不要なため、手続きにかかる手間は大きく減ります。

しかし、そうは言っても、この方のように大切な家族を失ったばかりで気分が落ち込んでいる時に、慣れない手続きに煩わされたくない、という方は多くいらっしゃいます。

そこで、当事務所で戸籍収集、義両親への連絡、生命保険金の請求、預貯金の解約手続きなどすべての必要な手続きを代行させていただくことを提案しました。

また、すべての財産を夫に相続させる内容の遺言はあるものの、ご相談者様は、自分たちには子供がおらず、若くして亡くなってしまったので、田舎の義両親にも財産を少しはもらってほしいというご意向をお持ちでした。

そこで、遺言と異なる遺産分割が可能かについてもアドバイスさせていただきました。

遺言書で手続きができない!?新たに発覚した問題点

このケースでは、財産を相続するご主人様が遺言執行者に指定されていたため、当事務所は遺言執行者の代理人(履行補助者)として手続きを進めることになりました。

ご依頼をいただいてからは特に滞りなく手続きが進んでいたのですが、ある金融機関での手続きの際に問題が生じました。

実は遺言執行者の権限として、第三者への任務を行わせることができる旨の文言が遺言書に記載されていなかったため、代理人としては手続きできないと言われてしまったのです。

当時の法律では遺言に特段の記載がない場合、やむを得ない事由が無ければ第三者に任務を行わせることができないことになっており、その金融機関の判断では、気分が落ち込んで手続きが手につかないことや、仕事で忙しく自分で手続するのが難しいことは、「やむを得ない事由」にあたらないとのことでした。

※法律の改正によって現在では、“遺言執行者は自己の責任で第三者に任務を行わせることができる”と変更になっています。

事情を知っている身からすると、あまりにも融通が利かない対応に閉口したのですが、そうは言っても、徹底的にこちらの正当性を主張して、いたずらに手続きを長引かせることはお客様のためにもならないという事で、他の手続き方法を検討することになりました。

このように解決しました

  • 義両親のご意向を伺ったところ、申出はありがたいが辞退したいとのご意向だったので、遺言の内容通り手続きを進めることになりました。
  • 義両親が受取人となっている生命保険契約があったため、負担をおかけしないよう、当事務所で請求手続きを代行いたしました。
  • 遺言執行者の第三者への委任の件については、銀行と折衝の上、相続人様から必要書類に直接押印いただくことで、当事務所を通じて手続きを行うことができました。
  • 相続人様の手を煩わせることなく、当事務所で戸籍収集、義両親への連絡、生命保険金の請求、預貯金の解約手続きなどすべての必要な手続きを完了させることができました。

担当者からのコメント

公正証書で作成された遺言がある場合、手続きに必要な戸籍が通常より少なく済むため、相続人の方の負担は軽くなります。

また、遺言書で遺言執行者が指定されていれば、他の相続人の関与なく手続きを進めることができるので、手続きが滞る可能性をかなり減らすことができます。

しかし、このケースのように法律上必須ではないが、手続きを行う(遺言を執行する)際に重要な文言が抜けていたため、結局残された方が大変な思いをするというケースは、残念ながら珍しくありません。

また、遺言執行者は基本的に誰でもなることができるので、財産を受け取る方が指定されていることも多いのですが、昨今の民法改正によって遺言執行者の義務がより具体的に明文化されたため、ご家族を指定したことによって、意図せず過大な負担を負わせることになるケースもあります。

今回のようなケースを防ぐためには、遺言の作成段階で、相続開始後の手続きにまで精通した専門家に相談の上、抜け漏れのない遺言を作ることが大切です。

また、遺されたご家族が手続きの事で悩まされることの無いよう、司法書士などの専門家を遺言執行者に指定しておくことが望ましいでしょう。

当事務所では、相続発生後の手続き面にまで配慮した遺言作成や、残されたご家族に負担をかけない遺言執行について、数多くのご相談・サポートの実績があります。

ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

遺言書作成・遺言執行サポートについてくわしくはこちら

遺言執行・遺言執行者についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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