同居の娘に全財産を相続させたいが遺留分も気になる【死後の遺留分請求のリスクを減らせるよう対策をしたいケース】

疎遠な息子よりも同居の娘に財産を多く残したい。トラブルなく実現するには?

ご相談前の状況

遺言書作成をはじめとする相続対策をご検討中の方からのご相談。

現時点での法定相続人はお子様2人。

現在同居している娘と成人してからはほとんど連絡のない息子がいて、色々と助けてくれる娘の方にできるだけ多くの財産を遺したいが、一方で遺産を巡るトラブルで娘にあまり負担をかけたくない気持ちもある、という事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 特定の方に多く財産を遺すのであれば、遺留分請求のリスクについても検討する必要がある。
  • 明らかに不公平な配分となっても、相続人から不満が出にくいように、遺言書を作成した理由や遺言者の想いなどを遺言書に明記する必要がある。
  • 意思能力の問題で後で揉め事にならないように、きちんとした形で作成する必要がある。
  • 万が一、亡くなる順番が逆になった場合に備えて、遺言の中で対策しておく必要がある。
  • 相続税の負担が過大にならないように、納税資金確保や節税についても対策の必要がある。
  • 財産を貰う方の負担にならないように、亡くなった後の手続きについても対策しておく必要がある。

当事務所からのご提案

亡くなった後の財産の分け方をめぐって、遺された子供達がトラブルになることは避けたいと考えるのは親として当然の気持ちでしょう。

一方で、相続人の中でも特にお世話になった方にできるだけ多くの財産を遺したいと考えるのも、ごく自然なことです。

遺産をめぐるトラブルを避けるために、公平に財産を相続させる旨の遺言を作成するというのも一つの方法です。

しかし近くにいて何かと助けてくれる子とほとんど連絡もよこさない子に、公平に相続させるのはどうも納得がいかないと考える方も多いかもしれません。

もちろん自分の財産をどのように遺すかは自由なので、遺言書で財産の分け方を指定すれば、基本的には自分の意思を実現できます。

ただし、法定相続人には法律上最低限保証されている取り分として「遺留分」が定められており、遺言でもらえる財産がこの遺留分を下回る場合は、不足分に相当する金銭の支払いを、他の相続人等に請求することができます。(遺留分侵害額請求といいます)

死後に遺留分の請求をされてしまうと相続人にとってかなり負担になるので、遺言書の作成や生前贈与等の相続対策を検討するにあたっては、遺留分については常に考慮しておく必要があります。

今回は同居している娘様にできるだけ多くの財産を遺したいとのことでしたので、まずは税理士の協力の元、現状の財産の評価を行い、遺留分の金額を算出することを提案しました。

さらにその上で、ご相談者様のお気持ちと、死後に遺留分請求等のトラブルになるリスク、その際に娘様にかかる負担などを考慮し、最もバランスの取れた内容で遺言を作成することを提案しました。

さらに、このまま相続が発生した場合、相続税の納税や、相続手続きの負担がかなり大きくなると思われたので、そちらについても税理士とも協力の上、対策をご提案させていただくことになりました。

このように解決しました

  • 税理士の協力の元、現状の財産評価を行い、遺留分の金額を算出しました。
  • 遺留分請求のリスクとお気持ちのバランスを考慮し、遺留分には足りないものの、一定の財産を息子様に相続させる遺言とすることになりました。
  • また、遺留分侵害額請求のリスクを少しでも減らすために、遺言書を遺した理由や遺言者様の心情等を付言事項に盛り込みました。
  • 万が一亡くなる順番が逆になったときの対策のため、遺言書案は予備的遺言も盛り込んだ内容になりました。
  • 作成した原案をもとに、司法書士が証人として立ち会いのもと、意思能力についても証拠が残る形で公正証書遺言を作成しました。
  • 相続税の納税資金や、遺留分請求された場合の資金確保のために、娘様が受取人となる生命保険への加入をご提案し、加入していただきました。
  • 相続税の節税対策として、自宅の住み替えをご提案し、信頼できる不動産会社をご紹介させていただきました。
  • 遺言で当事務所を遺言執行者に指定していただくとともに、遺言執行引受予諾契約を締結し、遺言書正本をお預かりさせていただきました。
  • 相続発生後の様々な手続きや、相続人間でのやり取りについての負担が無くなり、遺言者様亡き後についても安心していただくことができました。

担当者からのコメント

このケースのように、特定のお子様に多くの財産を遺す内容の遺言を作成する場合は、遺留分や相続人間の関係性等を慎重に検討した上で、様々な対策を行っておく必要があります。

家事や介護で貢献してくれたお子様に多くの財産を遺してあげたいと思うのは自然な感情です。

しかしせっかく多くの財産を遺してあげても、そのせいでトラブルに巻き込まれ、疲弊してしまっては、お子様もあまり喜ばれないのではないでしょうか。

正式に遺留分放棄の手続きを行わない限り、遺留分請求のリスクをゼロにすることはできませんが、生前にできるだけの対策をしておくことでトラブルのリスクを最小限にとどめることはできます。

大切なお子様が、自分が亡くなった後も困らないように遺言を作成したいとお考えであれば、死後のトラブル予防にも詳しい専門家に相談した上で対策しておくことをおすすめします。

当事務所では、遺留分請求の生前対策をはじめとした相続・生前対策について、数多くのご相談・サポートの実績があります。

ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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