遺言執行者から通知が!全財産を他人に遺贈する場合でも相続放棄は必要?【全財産を他人に遺贈する遺言がある時に相続放棄するケース】

財産はいらないので一切関わりたくない!

ご相談前の状況

お父様が亡くなられた方からのご相談。

父とは生後間もなく離別して以来全く交流が無かったが、役所から健康保険料の納付書が届いたことではじめて死亡を知ったとのこと。

父方の親族とはまったく交流がなく、財産や債務の状況は全くわからないが、今後一切関わりたくないので相続放棄をしたいという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 父について名前以外の情報がまったくないため、相続放棄に必要な戸籍の集め方など、どうやって調べれば良いかわからない。
  • いったん相続放棄が受理されると、たとえ後から多額の財産が見つかっても放棄を撤回することはできない。
  • 相続放棄は、死亡の事実を知ってから3か月以内に裁判所に申し出る必要があるため、財産・債務の調査を行う時間が限られている。

当事務所からのご提案

亡くなった方の借金等の債務は、相続放棄を行うことによって引き継がずに済みます。

相続放棄はいつでもできるわけではなく、原則として相続発生日から(又は死亡の事実を知ってから)3か月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。

また、相続放棄をすると、借金等のマイナスの財産だけではなく、預貯金等のプラスの財産を含めた一切の権利義務を放棄することになります。

借金等があると思って相続放棄をした後で、実は債務を大きく上回るプラスの財産が見つかったとしても、一度放棄が受理された以上、原則として放棄を取り消すことはできません。

そのため、故人と疎遠で財産の詳細が全く分からないような場合は、財産・債務の調査を行い、慎重に判断することが求められます。

もっとも今回のケースでは、ご相談者様は父とは生後間もなく離別したため全く記憶がなく、父の親族含めて関りがなかったため、今後も一切関わりたくないというご意向でした。

また、一度放棄が認められると撤回や取り消しは原則としてできないとご説明したところ、たとえ後からプラスの財産が見つかったとしても相続するつもりは無いとのことでした。

そこで、当事務所で相続放棄の申立てに必要な住所情報や戸籍の調査を行い、必要書類を揃え、家庭裁判所での相続放棄の手続きをサポートさせていただくことを提案しました。

遺言執行者から通知が届いた!どう対応すればいい?

ご依頼をいただいてからしばらくしてから、ご相談者様のもとに意外な方から連絡が来ました。

実は故人は生前遺言書を作成し、遺言執行者として知人の方を指定しており、その執行者の方から通知が届いたのです。

通知には遺言書のコピーが添付されており、その内容は遺言執行者でもある知人の方に不動産を含む全財産を包括的に遺贈するというものでした。

全財産を他人に遺贈するという内容なので、遺言が正当なものであれば、相続人には何の権利も発生しないようにも思えますが、実は相続人には、遺留分という法律上最低限認められている権利があります。(今回のケースでは全財産の2分の1が遺留分。)

受遺者に対して請求をすれば遺留分侵害額相当の金銭をもらえることを説明しましたが、ご相談者様の方はそれでも関わりたくない気持ちが強いので財産はいらないとのことでした。

遺留分を請求する権利は、一定期間(相続発生を知ってから1年間)の経過により消滅するので、特に何もしなくても大丈夫です。

また、今回のような全財産を相続する受遺者(包括受遺者)は、財産を引き継ぐのと引き換えに故人の債務も負担することになるため、法律上は何もしなくてもリスクは無いという事にはなります。

ただ、相続人以外に包括受遺者がいるという事は、債権者からは通常は分からないので、相続人宛に債務の支払いを求める督促状などが届く可能性はあります。

現に今回も役所から健康保険料の納付書が届いており、今後受遺者の方できちんと対応してくれるとは限りません。

そこで今後の対応の手間等を考慮した結果、相続放棄をした上で役所に通知を行うとともに、遺言執行者(兼包括受遺者)に対して、債務の支払い等に対応してほしい旨の通知を行う事になりました。

このように解決しました

  • 当事務所で戸籍等の調査を行い、正確な死亡日や死亡時の住所等、相続放棄の申述に必要な情報を把握しました。
  • 戸籍謄本等の必要書類を揃え、相続放棄申述書と一緒に裁判所に提出しました。
  • 相続放棄申述書提出後に、裁判所から届く照会書(回答書)について回答をサポートしました。その結果、無事相続放棄は認められました。
  • 相続放棄が認められた後、役所に相続放棄をしたことと、債務については受遺者に請求して欲しい旨を通知しました。
  • 遺言執行者には、相続放棄をしたことと、役所に連絡して債務の支払いについて対応して欲しい旨を通知しました。

担当者からのコメント

このケースのように、債務を上回る財産があるにも関わらず、故人やその関係者と関わりたくないという事で相続放棄を希望される方は一定数いらっしゃいます。

今回のように故人との交流が全くなく、債権者などからの連絡により突然死亡を知った場合でも、相続開始を知った日から3か月以内に手続きをすれば大丈夫です。

子供の頃両親が離婚していて何一つ手がかりが無くても、戸籍等を調査して必要な情報や書類を入手すれば手続きは可能です。

ただ、不慣れな一般の方が短い期間内に戸籍等の調査を完了させ、無事手続きを終えることはかなり大変かもしれません。

仕事や家事育児などで忙しい場合はなおさらでしょう。

役所からの通知で疎遠な親族の死亡を知った場合は、まずは相続手続き全般に詳しい司法書士などの専門家にお早めに相談することをおすすめします。

当事務所ではこれまでに音信不通の親族の財産・債務調査や相続放棄について、数多くのご相談やサポートの実績があります。

ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

スピーディに相続放棄をお手伝い!くわしくはこちら

財産や債務の調査方法についてはこちらの記事もご参照ください。

相続放棄の基礎知識についてはこちら

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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