疎遠な父が死亡、借金の有無はどうやって調べる?【亡くなった方の債務について調査が必要なケース】

疎遠だった父に多額の借金がないか不安…

ご相談前の状況

お父様が亡くなられた方からのご相談。

相続人はご相談者様と弟の子供二人。

遺産としてローン返済中の自宅マンションと自動車があるほか、死亡保険金や死亡退職金を受け取る予定だが、預貯金はほぼ無く、結構な額の借金がありそうとのこと。

判明している借金は保険金で支払えそうなので相続するつもりだが、故人とは疎遠だったため、把握している以外にも多額の債務が無いか心配という事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 故人にはカーローン等の借金の他、マンション管理費や税金の滞納もあるため、他の債権者からの借入れを含め債務の全容を調査する必要がある。
  • 住宅ローンについては団信加入の有無に加え、保険料の未払いにより契約が失効していないかを確認する必要がある。
  • 万が一、返済できないほど債務の額が大きい場合は、相続放棄も視野に入れる必要がある。
  • 生命保険金や死亡退職金は原則として相続財産にならないため受け取っても問題ないが、その他の財産の処分は慎重に対応する必要がある。

当事務所からのご提案

亡くなった方に借金等の債務がある場合、相続手続きや遺産分割の前に、まずは債務の全容についてしっかりと把握すべきです。

プラスの財産をマイナスの財産が上回る場合は相続放棄を検討すべきですが、すでに預貯金の引き出し等の処分行為を行っていた場合、その後に多額の借金があることが判明しても、原則として相続放棄はできません。

取り返しのつかない事態を防ぐためには慎重な対応が必要ですが、財産や債務の詳細が不明なままでは判断に迷うことでしょう。

このケースでは全く交流が無かったわけではなかったものの、故人の生前の生活状況についてはほとんど知らないという状況でした。

そして相続発生後に自宅を調べたところ、住宅ローンの他、カードローンやカーローンに関する書類、未納税金やマンション管理費の督促状、さらには完済済みの消費者金融からの借り入れについての書類等が見つかったとの事でした。

幸い、住宅ローンについては団信(団体信用生命保険)に加入している様で、その他の債務についても死亡保険金や死亡退職金で支払えそうな金額ではありました。

しかし、この他にさらに高額な債務があるようであれば相続放棄も検討する必要があります。

また、税金等の滞納状況から、団信についても保険料未払いにより契約が失効している可能性も否定できません。

そこで、まずは債務の調査を行いその全容を把握するとともに、団信の契約が失効しておらず、間違いなく保険金で住宅ローンを完済できる事を確認してから相続手続きを進めることを提案しました。

亡くなった人の借金を調べる方法・信用情報の調査とは?

亡くなった方に借金等の債務があるか調べる方法としては、自宅を調べて契約書や督促状などの資料を探すほか、「信用情報機関へ情報開示請求を行う」という方法があります。

信用情報機関とは、加盟業者からの情報をもとに、個人ごとの借入・返済の状況、クレジットカードの利用や割賦購入の履歴などを登録し、新規契約や融資の際に情報提供を行う指定機関です。

現在、各消費者金融や信販会社、銀行等はそのほとんどが以下の3つの信用情報機関の少なくとも一つに加盟しています。

  • CIC(株式会社シー・アイ・シー)
  • JICC(株式会社日本信用情報機構)
  • 全銀協(一般社団法人全国銀行協会、全国銀行個人信用情報センター)

加盟業者以外からの借り入れや、個人間の貸し借りなどは登録されていないため、信用情報調査ですべての債務が判明するとは言い切れませんが、少なくともまともな金融業者からの借入等はほぼ把握できます。

信用情報は重要な個人情報なので原則として本人及び加盟業者には開示されませんが、本人の死亡後は相続人からの開示請求が可能です。

そこで、当事務所で戸籍謄本等の必要書類を収集し、信用情報機関3社に対して情報開示請求を行う事になりました。

このように解決しました

  • 戸籍等の必要書類を収集の上、信用情報機関3社に被相続人の個人情報の開示請求を行いました。
  • 信用情報調査の結果、把握している債権者以外に大きな借り入れはありませんでした。
  • 団信の加入状況について確認したところ、契約は失効していない事が確認できたため、死亡保険金の請求及び住宅ローンの完済手続を行いました。
  • 住宅ローンの完済後に、抵当権抹消登記に必要な書類を発行してもらいました。
  • 債務の返済や遺産分割についての話し合いがまとまった後、遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名捺印をいただきました。
  • 遺産分割協議の成立後すみやかに相続登記及び抵当権抹消登記を申請し、無事完了しました。

担当者からのコメント

今回のように亡くなった方と疎遠な場合は、信用情報調査が債務の有無や金額を把握するための有効な手段となります。

また、昔は違法な利息で貸している業者が多かったので、借り入れしたのがかなり前である場合など、借り入れの状況によっては債務が帳消しになったり、逆に過払い金として取り戻せるケースもあります。

ただ、信用情報は一般の方には馴染みのないもので、開示結果を見てもよくわからないという声をよく聞きます。

また、調査に時間がかかると、相続放棄の期限(相続開始を知った日から3か月)や過払い金の請求時効(最後の取引から10年)を過ぎてしまう可能性があります。

きちんと調査をしなかった結果、多額の借金を抱えることになるというのは最悪の事態ですが、逆に相続できる財産を放棄してしまう事もあり得ます。

疎遠な相続人が無くなり、財産もあるが債務もあるという方は、相続の専門家に相談の上、しっかりと調査を行ったうえで、相続するかどうかを慎重に判断することをおすすめします。

当事務所では、亡くなった方の債務の調査を含めて、面倒な相続手続きをすべておまかせいただける「相続まるごとおまかせプラン」等、様々な相続サポートをご提供しております。

ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。

相続まるごとおまかせプランについてくわしくはこちら

信用情報の調査方法についてくわしくはこちら。

死亡後の住宅ローンや団信に関する手続きについてくわしくはこちら

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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